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前編

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 その日、私は、一人で茶会に参加していた。
 いつもは双子で参加しているのだが、今日は彼女が用事があったので、私一人での参加となった。

 一人でこういうところに出るというのは少々慣れないが、そうなったものは仕方ないので頑張ろうと思っていたところ。

「お前! 今日は用がある!」

 双子の姉であるリリカの婚約者であるオープルがやって来た。

 なぜ私に用が?
 リリカへの用事ではないのか?

「お前との婚約、破棄することにした!!」

 腕組みをし胸を張り、威張っているような格好をして、鼻息を荒くしながら述べるオープル。

「あの……私、貴方と婚約なんてしていませんけど」
「は? 何を言うか! あぁ分かった、さては、恥ずかしすぎてごまかそうとしているんだな?」

 勝ち誇ったような顔をするオープル。

「オープルさん、もしかして、リリカと間違えていません?」
「ハッ! 苦しいごまかしだな!」
「いえ、事実ですよ。私はリリカではありません、リリカの双子の妹です」

 私とリリカは容姿が似ている。
 これまで生きてくる中でも間違われることはあった。

「なっ……」

 急に表情を固くするオープル。

 それを見て、周囲の婦人たちはくすくす笑っていた。

「かっこよく婚約破棄を告げようとして逆に恥かかされてるわね……」
「だっさーい」
「あれはやばいわよねぇ」

 婦人たちに笑われたオープルは顔を真っ赤にする。
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