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前編

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 思えば私は何かと損な役回りだった。

 姉は美しい人で性格も良く笑顔も華やか、ということもあって、私は親からも親戚からもあまり大事にされてこなかったのだ。

 皆、姉ばかりを気にかけて可愛がり、妹である私のことはほぼ放置。

 そして、年頃になった頃に私にあてがわれた婚約者ヘブンズヘートも、姉が「その人はちょっと……」と断った人だった。

「あっははは! はじめまして!」
「こちらこそ」

 でも最初はそれでもいいと思った。
 悪くばかり考えるのではなく、彼に愛してもらえるよう頑張ろう、と思っていた。

 けれど――。

「やっぱり妹さんとは無理だわ」
「え」
「婚約、破棄するっす!」
「え……」

 ヘブンズヘートは私を受け入れなかった。

「俺が好きなのはお姉さんだしさぁ、やっぱ、好きでもない人と生きるとか嫌だし? てことで! ばいばーい、でっす!」

 彼は正直者だ。
 本当のことをはっきりと言ってくれる。

 そこは嫌いじゃない。

 でも私が嫌いでなくても彼は私を良くは思えないようで。
 そんな状態で上手くいくはずもなく。

「……いつまでそこにいんの? 早く出ていってくれよな」

 姉しか見ていないヘブンズヘートは私を切り捨てた。
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