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前編

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 流れ星は願いを叶えてくれる。

 幼い頃に聞いた言い伝え。
 それは人生に射し込む一筋の希望の光だった。

「貴様との婚約、本日をもって破棄とさせてもらう」

 婚約者オードローズにそう告げられた日の夜、私は自宅近くの丘の上へ行った。

 そして星煌めく暗い空を見上げる。

 オードローズとの関係は終わってしまった。
 それは残念だし悲しいことだ。
 でも希望がなくなったわけではない。人生が終わったわけではないのだ、まだまだ。

 だからやりようはある。

 ――刹那、星が流れてきて。

(幸せが訪れますように)

 私は咄嗟にそう願った。

 流れ星は願いを叶えてくれる、そんなのは嘘かもしれない。でも、それでも、今はただ縋りたかった。微かな光に。あの闇を駆け抜けてゆく一筋の希望に。

「なーんて、叶うはずないか」

 呟いて、帰ろうと立ち上がった――その時。

「うわ! 懐かし!」

 いつか聞いたような声。
 振り返ればそこには一人の男性が立っていた。

「え――」
「俺だよ俺! 覚えてないか? ああ、まぁそうか。ごめん。俺、昔仲良くしてたボルクってやつ! 近所に住んでただろ?」

 ボルク、その名を忘れてはいない。

「覚えてる、覚えているわ……」
「本当に!?」
「ええ! 昔よく遊んでいたボルクよね!? 幼馴染み的な」
「ああそうだ!」

 こうして私は幼馴染みボルクと再会したのだった。
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