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前編
しおりを挟む「俺さ、君の妹さんに惚れちまったんだ」
婚約者エデルベルトからそんなことを告白されたのは、平凡を絵に描いたような晴れの冬の日のことだった。
「え……」
「実は前々から相談されてて。いつも妹さんと婚約者の話を聞いていたんだ。そのうちに彼女のことを好きになってしまって。それで、もうその感情を抑えられなくなってしまってさ」
私はこれまで何度もいろんなものを妹に奪われてきた。
でもさすがに婚約者までは奪わないだろうと思っていた――妹にも婚約者がいるからなおさら油断していた。
しかしそれは間違いだったようだ。
妹が私のものを奪わないはずがなかったのだ、私の考えは甘かった。
「だから君との婚約は破棄とするよ」
「待って、本気なのですか? 婚約破棄して、もしかして妹と?」
「ああそうなんだ、そうするつもりでいる」
そんなの気まず過ぎるではないか、元婚約者が妹の結婚相手なるなんて。
しかし私に考えを主張する権利なんてなかった。
「すまないな、君とはここまでだ」
そう言われて、エデルベルトとの関係は終わってしまった。
◆
あの後エデルベルトは本当に妹と婚約した。
だが私にも良いことはあった。
妹の婚約者で彼女から一方的に婚約破棄された彼と私に縁ができたのだ。
「よければこれから……少し、将来を考えてみませんか?」
ある時彼からそんな風に提案を受けて。
それで私たちの関係は始まっていった。
我が婚約者は奪われたのだ、妹が捨てた彼を私が手に取ったって罪ではないだろう。
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