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叶わなかった願い ~婚約破棄ですべてが終わる春~
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私には願いがあったの。
それはね。
あなたと一緒に生きていくこと。
まだ十歳の時、初めてあなたと顔を合わせて、運命を感じたわ。
その時の私たちはどこまでも子どもだったからお互い気遣いなんてできなくて、何度もすれ違い、喧嘩になってしまったことだってあったけれど。でも、どんなに仲が悪くなってしまった時でも、それは一時的なものだった。数時間、数日、それだけの時間で謝り合って。より一層親しくなれたような気がした。
でも昨年末から、彼は、私以外の女性を大事にするようになって。
そして今日ついに。
「君との婚約だけど、やめることにしたよ」
そう告げられてしまった。
時が止まった気がしたわ。
何が何だか分からず。
即座には言葉を返すことはできなかった。
帰り道、私は、泣ける限り泣いて――。
春に咲く花の匂いが漂う。
それがまた切なくて。
「あ……あ……ああ……」
この春、すべてが終わる。
◆終わり◆
それはね。
あなたと一緒に生きていくこと。
まだ十歳の時、初めてあなたと顔を合わせて、運命を感じたわ。
その時の私たちはどこまでも子どもだったからお互い気遣いなんてできなくて、何度もすれ違い、喧嘩になってしまったことだってあったけれど。でも、どんなに仲が悪くなってしまった時でも、それは一時的なものだった。数時間、数日、それだけの時間で謝り合って。より一層親しくなれたような気がした。
でも昨年末から、彼は、私以外の女性を大事にするようになって。
そして今日ついに。
「君との婚約だけど、やめることにしたよ」
そう告げられてしまった。
時が止まった気がしたわ。
何が何だか分からず。
即座には言葉を返すことはできなかった。
帰り道、私は、泣ける限り泣いて――。
春に咲く花の匂いが漂う。
それがまた切なくて。
「あ……あ……ああ……」
この春、すべてが終わる。
◆終わり◆
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