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前編

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「お前みたいなうるせぇ女とは付き合っていけねぇ! 婚約破棄だ!」

 婚約者パバロフが激昂して叫ぶ。

 私は一枚の紙を取り出す。

「ではこちらの紙にサインをお願いします」
「なっ……」
「婚約破棄のための書類です」

 パバロフが婚約破棄だと喚き出すのは珍しいことではない。
 私が少しでも意見を述べれば大抵彼はこんな風になる。

 だからその時を待っていた。

「サインをどうぞ」
「ぐ……」
「サインはなさらないのですか? 婚約破棄なのですよね。……まさか、そこまでの覚悟はありませんでしたか?」
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