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リベルテがそこまで言ったちょうどそのタイミングで、カーテンの一部分が僅かに開いた。隙間からはウタの顔が少しばかり覗く。
「リベルテ、大丈夫? 今、入っていい?」
訪問者がウタであると知ったウィクトルは表情を固くして静かに焦る。今はさすがに会いたくない、とでも言っているかのような、気まずさの極みみたいな顔をしていた。
だがリベルテは「どうぞ」とすんなりウタを入れてしまう。
「ようこそ! ……と言いましても、お出しする茶もありませんが」
「いいの。それより貴方の怪我が気になるの」
「たいしたことではございません。それより、主の方が大変です」
リベルテはさりげなく話題をウィクトルへ移す。
「ウィクトル? ……って、あ。ウィクトル、ここにいたのね」
「あ、あぁ」
その時になってウタはウィクトルの存在に気づいたようだった。
「ちょうど良かった。言いたいことがあったの」
「何だろうか」
ウィクトルは怒られると思っているようで、身構えずにはいられない。
「その……さっきはごめんなさい。つい強く言ってしまって。助けてもらったのに……」
「気にしていない」
ウィクトルの表情が明るくなるのを見ながら、リベルテは「いやいや、さっきまで全力で気にしてたでしょ」とでも言いたげな笑みを顔面に滲ませる。
「何度でも助ける。南国でも雪国でも、海底でも、空の彼方でも」
「そんなあちこちで危険な目に遭いたくはないわね……」
◆終わり◆
「リベルテ、大丈夫? 今、入っていい?」
訪問者がウタであると知ったウィクトルは表情を固くして静かに焦る。今はさすがに会いたくない、とでも言っているかのような、気まずさの極みみたいな顔をしていた。
だがリベルテは「どうぞ」とすんなりウタを入れてしまう。
「ようこそ! ……と言いましても、お出しする茶もありませんが」
「いいの。それより貴方の怪我が気になるの」
「たいしたことではございません。それより、主の方が大変です」
リベルテはさりげなく話題をウィクトルへ移す。
「ウィクトル? ……って、あ。ウィクトル、ここにいたのね」
「あ、あぁ」
その時になってウタはウィクトルの存在に気づいたようだった。
「ちょうど良かった。言いたいことがあったの」
「何だろうか」
ウィクトルは怒られると思っているようで、身構えずにはいられない。
「その……さっきはごめんなさい。つい強く言ってしまって。助けてもらったのに……」
「気にしていない」
ウィクトルの表情が明るくなるのを見ながら、リベルテは「いやいや、さっきまで全力で気にしてたでしょ」とでも言いたげな笑みを顔面に滲ませる。
「何度でも助ける。南国でも雪国でも、海底でも、空の彼方でも」
「そんなあちこちで危険な目に遭いたくはないわね……」
◆終わり◆
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