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3話「生きたくはなかったのに」
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◆
目覚めると、あらゆるものが光輝く知らない世界にいた。
「やあ! お目覚めかい?」
声をかけてくるのは不思議な生き物。
言語は私たちが使っていたものと同じのようだが、外見は明らかに別物だ。
「あ……あの、ここは一体……?」
「ここは精霊の国! ぼくたち精霊がのんびり暮らす世界だよ!」
すぐには状況が飲み込めなかった。
何がどうなったのか?
私は死んだのか?
「私は……」
「きみは崖から飛び降りただろう? 通りかかった精霊に救助されたんだ!」
「それは……そう、ですか」
「どうして嫌そうな顔をするんだい? 助かったんだよ? 喜ぶところじゃないのかい?」
ぎりと歯を食いしばる。
「私はもう……生きたくはなかった、のに……!」
死にたかった。
早く母のところへ生きたかった。
希望も何もない世界とは別れる、その決意で飛び降りたのだ。
なのに、喜ぶところ、だと?
どうしてそんなことを言えるのか。
事情も知らないで知ったような口の利き方をしないでほしい。
「駄目だよ、そんなこと言っちゃ」
「私はもう生きたくはなかった! なのに! こんな……生き延びてしまうなんて……」
すると目の前の不思議な生き物は頭から生えた触覚一本を私の頬に当ててくる。
「辛かったんだね、でも大丈夫。ここには、希望、あるよ」
「え……」
「取り敢えず精霊王のところへ行こうよ。きっときみの望みは叶うはず」
私の望みは、この世と別れること。
きっと望みは叶わない。
そう思う。
とはいえ、このまま寝ていてもどうしようもないというのも事実。
動くしかない、か。
「ね? 行こうよ! 精霊王のところまで、案内するよ!」
目覚めると、あらゆるものが光輝く知らない世界にいた。
「やあ! お目覚めかい?」
声をかけてくるのは不思議な生き物。
言語は私たちが使っていたものと同じのようだが、外見は明らかに別物だ。
「あ……あの、ここは一体……?」
「ここは精霊の国! ぼくたち精霊がのんびり暮らす世界だよ!」
すぐには状況が飲み込めなかった。
何がどうなったのか?
私は死んだのか?
「私は……」
「きみは崖から飛び降りただろう? 通りかかった精霊に救助されたんだ!」
「それは……そう、ですか」
「どうして嫌そうな顔をするんだい? 助かったんだよ? 喜ぶところじゃないのかい?」
ぎりと歯を食いしばる。
「私はもう……生きたくはなかった、のに……!」
死にたかった。
早く母のところへ生きたかった。
希望も何もない世界とは別れる、その決意で飛び降りたのだ。
なのに、喜ぶところ、だと?
どうしてそんなことを言えるのか。
事情も知らないで知ったような口の利き方をしないでほしい。
「駄目だよ、そんなこと言っちゃ」
「私はもう生きたくはなかった! なのに! こんな……生き延びてしまうなんて……」
すると目の前の不思議な生き物は頭から生えた触覚一本を私の頬に当ててくる。
「辛かったんだね、でも大丈夫。ここには、希望、あるよ」
「え……」
「取り敢えず精霊王のところへ行こうよ。きっときみの望みは叶うはず」
私の望みは、この世と別れること。
きっと望みは叶わない。
そう思う。
とはいえ、このまま寝ていてもどうしようもないというのも事実。
動くしかない、か。
「ね? 行こうよ! 精霊王のところまで、案内するよ!」
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