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前編

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「お前、ほんと馬鹿だな。明るすぎてキモイしよ。ってことで、お前との婚約はなかったことにするから。……ま、そういうことなんで、とっとと俺の視界に入らないとこに行ってくれよな」

 それは何ということのない平凡な晴れの日。
 ベージュのショートヘアが少年のような婚約者ウラルにそんなことを言われてしまった。

 馬鹿、そう言われるのには慣れている。

 だってこれまでもそうだった。
 彼はいつも私のことを馬鹿と言っていたからそこまで驚きはしない。

 もう少し言い方を考えてほしいなぁ、とは思うけれど。

 でも、彼にそんなことを言っても、喧嘩になるだけ。

「分かった、じゃあ私は消えるね」

 ウラルが私を良く思っていないことは知っていた。でもこれまではきっかけがなかった。だから離れられずにここまで来たけれど、彼が婚約破棄を告げてくるならちょうどいい機会。

「さよなら、ウラル」

 これをきっかけとして、私たちは終わりを迎える。

 それがお互いのため。


 ◆


 婚約破棄された直後、私は、周囲からちまちまと嫌みや悪口を言われることもあった。道を歩けば憐れみと見下す心理が交じったような視線を向けられ、くすくす笑われたり、時にはありもしないことを事実のように話されたりもした。

 でも挫けない!

 前を向いていれば、進むことをやめなければ、きっと希望はある。

 そう信じて、ただただ、懸命に生きた。
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