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以前の彼は細やかな気遣いのできる人だったのですが……最近様子がおかしくて!?
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婚約者メルヘッツの様子が最近おかしい。
以前の彼は細やかな気遣いのできる人だった。
そしてこちらからお出掛けなどのお誘いをすればとても喜んでくれていた。
だがここのところ鬱陶しそうな顔をするようになった。
何があったの? もしかして……。
怪しく思った私は調査を開始する――そう、浮気調査。
できるならこんなことはしたくなかった。善良な人だった彼を疑いたくなんてない。が、不審なところがやたらと目につくと、そのまま放置しておくわけにもいかなくて。何もなかったならそれでいいのだから、と、自分で自分に言い聞かせて、調査を開始した。
――結果、やはり彼は浮気していた。
彼は最近定期的に特定の人と会っている。
長い金髪の女性だ。
ボリューミーな体型でセクシーな女性。
もしかして肉づきの良い体型に魅了されたのか……?
だとしたらメルヘッツもただの雄だ。
呆れてしまう。
だが仕方のないことでもある。
人といっても動物であることに変わりはないのだから。
理性があるはずなのい我慢できないというのは、悲しいことではあるが……。
私はすぐには彼にそのことを話さなかった。証拠が不十分な段階であれこれ言っても逃げられてしまうだけだと思ったからだ。しばらくはこれまで通り振る舞っておいて、裏で着々と証拠集めに励む。
――そして証拠が集まってから。
「メルヘッツ、浮気してるわよね」
ついに攻撃を開始する。
「え……」
「私以外にも女いるんでしょ」
「な、何を?」
「とぼけないで!」
証拠は多数持っている。
彼に逃げ場はない。
「と、とぼけてなんて……どうしてそんなこと言うんだい?」
何も知らないふりをしても無駄だ。
その程度では逃れられない。
「自分から謝れないのかしら」
「だ、だから! 浮気? そんなことしてないって! 勘違いだよ!」
「じゃあ証拠を見せてあげるしかないわね」
「へ?」
「証拠はたくさん持っているのよ、私」
「な、なんかおかしいよ! 今日の君はどうかしてる! 悪魔にでも憑かれているんじゃない!? 明らかに変だよ!」
その後私は集めた証拠の中のいくつかを提示してメルヘッツを追い詰めていった。
そして告げる。
「婚約、破棄するわ」
メルヘッツは何も言えなくなっている。
なぜならすべてを暴かれたから。
「さようなら、メルヘッツ」
彼とはもうおしまい。
だってそういうものでしょう?
裏切り者と生きてゆくなんて……不可能よ。
◆
あれから二年。
私は大富豪と結婚し、今は、とても大きな屋敷に住んで毎日を穏やかに過ごしている。
夫は私を愛してくれている。
とてもとても大きな愛でこの身を包み込んでくれる彼が大好きだ。
一方メルヘッツはというと、あの後も何人もの女性と婚約しては婚約破棄になりといったことを繰り返したらしく――今ではまともな女性からは一切相手にされないようになってしまっているらしい。
◆終わり◆
以前の彼は細やかな気遣いのできる人だった。
そしてこちらからお出掛けなどのお誘いをすればとても喜んでくれていた。
だがここのところ鬱陶しそうな顔をするようになった。
何があったの? もしかして……。
怪しく思った私は調査を開始する――そう、浮気調査。
できるならこんなことはしたくなかった。善良な人だった彼を疑いたくなんてない。が、不審なところがやたらと目につくと、そのまま放置しておくわけにもいかなくて。何もなかったならそれでいいのだから、と、自分で自分に言い聞かせて、調査を開始した。
――結果、やはり彼は浮気していた。
彼は最近定期的に特定の人と会っている。
長い金髪の女性だ。
ボリューミーな体型でセクシーな女性。
もしかして肉づきの良い体型に魅了されたのか……?
だとしたらメルヘッツもただの雄だ。
呆れてしまう。
だが仕方のないことでもある。
人といっても動物であることに変わりはないのだから。
理性があるはずなのい我慢できないというのは、悲しいことではあるが……。
私はすぐには彼にそのことを話さなかった。証拠が不十分な段階であれこれ言っても逃げられてしまうだけだと思ったからだ。しばらくはこれまで通り振る舞っておいて、裏で着々と証拠集めに励む。
――そして証拠が集まってから。
「メルヘッツ、浮気してるわよね」
ついに攻撃を開始する。
「え……」
「私以外にも女いるんでしょ」
「な、何を?」
「とぼけないで!」
証拠は多数持っている。
彼に逃げ場はない。
「と、とぼけてなんて……どうしてそんなこと言うんだい?」
何も知らないふりをしても無駄だ。
その程度では逃れられない。
「自分から謝れないのかしら」
「だ、だから! 浮気? そんなことしてないって! 勘違いだよ!」
「じゃあ証拠を見せてあげるしかないわね」
「へ?」
「証拠はたくさん持っているのよ、私」
「な、なんかおかしいよ! 今日の君はどうかしてる! 悪魔にでも憑かれているんじゃない!? 明らかに変だよ!」
その後私は集めた証拠の中のいくつかを提示してメルヘッツを追い詰めていった。
そして告げる。
「婚約、破棄するわ」
メルヘッツは何も言えなくなっている。
なぜならすべてを暴かれたから。
「さようなら、メルヘッツ」
彼とはもうおしまい。
だってそういうものでしょう?
裏切り者と生きてゆくなんて……不可能よ。
◆
あれから二年。
私は大富豪と結婚し、今は、とても大きな屋敷に住んで毎日を穏やかに過ごしている。
夫は私を愛してくれている。
とてもとても大きな愛でこの身を包み込んでくれる彼が大好きだ。
一方メルヘッツはというと、あの後も何人もの女性と婚約しては婚約破棄になりといったことを繰り返したらしく――今ではまともな女性からは一切相手にされないようになってしまっているらしい。
◆終わり◆
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