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心ない元婚約者に天罰が下ったようですが完全に自業自得なので可哀想とは思いません。
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婚約者テーゲから婚約破棄を告げられた帰り道、一人とぼとぼと道を歩いていると目の前に女神と名乗る謎の女性が現れて「安心なさい、彼には天罰が下ります」とだけ述べて消え去った。
その時は何が何だかよく分からなくて。
おかしなものを見てしまったなぁ、くらいにしか思わなかった。
テーゲは確かに酷かった。婚約破棄を告げるのみならず、私の木に食わないところをやたらと並べてきたから。しかも悪意に満ちた言葉選びで。彼が発する言葉は鋭い刃のようで、酷く傷つけられた。
とはいえ、女神が現れるなんて思わなかったし、そんな非現実的なことが起こったたただ戸惑うことしかできなかった。
――しかし、女神と名乗るその女性が言ったことは現実となった。
婚約破棄の翌日、テーゲが飼っていてずっと可愛がっていた犬二頭が謎の死を遂げる。
寿命などではなかった。
前日まで元気だったのに朝急死していたそうだ。
それによって酷く落ち込んだテーゲは、励ますからと言ってくれた友人に会いに行こうと街へ出掛けている道中で賊に襲われ、金目の物をしっかり奪われたうえ全治二週間の怪我を負わされた。
結局その日の友人との予定はキャンセルすることとなってしまったそう。
それから一週間ほどが経ったある日。
同じ家で暮らしていた父親が食事中に急に意識を失い倒れ込み、そのまま帰らぬ人となってしまう。
また、その様子を目にしてしまった母親はショックで寝込むようになり三日に一回くらいしか目覚めない状態となってしまい、妹は正気を失い幼児退行してしまったそうだ。
愛犬も、両親も、妹も――テーゲは傍にあったものすべてを失うこととなってしまった。
また、テーゲ自身も悪夢にうなされるようになり、寝不足で体調を崩す。
睡眠をとれず弱っているところに流行り病にかかってしまった彼は、風邪をこじらせることとなってしまい、神経に異常が出るようになってしまって――自立した生活をすることがかなり困難な状態となり、しかし周囲には面倒をみてくれる人がいなかったため、冷たい目を向けられながら孤独に生きてゆくこととなってしまったそうだ。
テーゲは永遠に独り。
誰からも愛されず。
誰からも優しくされず。
孤独の海で生きてゆくしかないのである。
だが、もしそれが天罰なのなら、彼はそれを受け入れるしかないだろう。
◆終わり◆
その時は何が何だかよく分からなくて。
おかしなものを見てしまったなぁ、くらいにしか思わなかった。
テーゲは確かに酷かった。婚約破棄を告げるのみならず、私の木に食わないところをやたらと並べてきたから。しかも悪意に満ちた言葉選びで。彼が発する言葉は鋭い刃のようで、酷く傷つけられた。
とはいえ、女神が現れるなんて思わなかったし、そんな非現実的なことが起こったたただ戸惑うことしかできなかった。
――しかし、女神と名乗るその女性が言ったことは現実となった。
婚約破棄の翌日、テーゲが飼っていてずっと可愛がっていた犬二頭が謎の死を遂げる。
寿命などではなかった。
前日まで元気だったのに朝急死していたそうだ。
それによって酷く落ち込んだテーゲは、励ますからと言ってくれた友人に会いに行こうと街へ出掛けている道中で賊に襲われ、金目の物をしっかり奪われたうえ全治二週間の怪我を負わされた。
結局その日の友人との予定はキャンセルすることとなってしまったそう。
それから一週間ほどが経ったある日。
同じ家で暮らしていた父親が食事中に急に意識を失い倒れ込み、そのまま帰らぬ人となってしまう。
また、その様子を目にしてしまった母親はショックで寝込むようになり三日に一回くらいしか目覚めない状態となってしまい、妹は正気を失い幼児退行してしまったそうだ。
愛犬も、両親も、妹も――テーゲは傍にあったものすべてを失うこととなってしまった。
また、テーゲ自身も悪夢にうなされるようになり、寝不足で体調を崩す。
睡眠をとれず弱っているところに流行り病にかかってしまった彼は、風邪をこじらせることとなってしまい、神経に異常が出るようになってしまって――自立した生活をすることがかなり困難な状態となり、しかし周囲には面倒をみてくれる人がいなかったため、冷たい目を向けられながら孤独に生きてゆくこととなってしまったそうだ。
テーゲは永遠に独り。
誰からも愛されず。
誰からも優しくされず。
孤独の海で生きてゆくしかないのである。
だが、もしそれが天罰なのなら、彼はそれを受け入れるしかないだろう。
◆終わり◆
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