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『婚約破棄後は親の薬屋で働いていますが幸せです!』
私には婚約者がいた。
しかし彼は私を愛さず、幼馴染みだという女性のことばかり大切にしていて。
何とも言えない関係性、空気、そんなままで私たちの関係は時を刻んでいた。
だがそれにもやがて終わりが来る。
婚約者の彼はある日突然私を彼の自宅へ呼び出して、そして告げたのだ――関係の終焉、婚約破棄を。
しかもその際彼は私の悪いところを大量に言葉にして並べてきた。
それはとても長くて。
あまりにも理不尽な時間であった。
次々に心ない言葉を告げられれば誰だって心を傷めてしまうものだ。それも、内容が雑なものならなおさら。事実ですらない言葉で人格否定されるというのは傷つく。
だが、それによって、彼と別れる覚悟はできた。
だってそうだろう?
人を平気で傷つけるような人と生涯を共にするなど不可能だしあり得ないこと。
彼の本質に結婚前に気づけて良かったのかもしれない。
◆
「いらっしゃいませ!」
「こんにちはぁ」
「いつものお薬ですね?」
「そうですぅ」
婚約破棄後、私は、親が営む薬屋で仕事を始めた。
「お待たせしました、こちらご確認ください」
「はい、はい、合ってますよぉ」
「良かった! ではこちらで。お渡ししますね!」
「ありがとうねぇ」
元々来てくれていたお客さんとも段々親しくなって、今は仕事にやりがいを見出すことができ始めている。
「いつもお疲れ様」
「あ、こんにちは!」
「いつもの、で」
「承知いたしました! あ、喉薬ですが、味はどちらになさいますか?」
いつも温かく接してくれる人たちには感謝しかない。
「アーモンドで」
「承知しました!」
ちなみに元婚約者の彼はもうこの世にはいない。
風邪をこじらせて亡くなったそうなのだ。
また、彼が落命したのは、結婚式のちょうど一週間前だったとか――幸せの絶頂で、とは、切ないものだ。
だが彼は可哀想ではない。
なぜなら彼は他者を平気で傷つける人間だったからである。
◆終わり◆
『婚約しているのに浮気していたような貴方が不幸になっても正直何とも思いません。~思うことがあるとしたら、ざまぁ、だけですね~』
婚約者アドレスは裏でこそこそと浮気していた。
相手の女性は職場の人らしい。
何でもその女性は巨乳なことで評判らしく、アドレスもそこに惚れているのだとか。
いや、まぁ……べつにそれはいいのだが……。
とはいえ結婚前から浮気というのは放ってはおけない。
そんなことがまかり通ると思われるのは尺だ。
婚約したならそれなりの振る舞いをするべきだろう。婚約者を傷つけるようなことをすべきではない。本来そうであるべきなのに、彼はその道から外れた行動をしている。それはつまり悪である。
ということで、取り敢えず証拠を集め始めた。
そして証拠が複数溜まってから突きつける――婚約の破棄を。
彼は大慌てで「そんなつもりじゃなかった」とか「ちょっとした出来心で」とか「君と離れたくてしたわけじゃないんだ」とか言っていたけれど、そんなことはどうでもいい。
だから私は彼に別れを告げた。
さようなら、と。
もはやアドレスの気持ちなどどうでもいい。
そんなものはくだらないことだし考慮すべきことではない。
◆
あの日から何年が経っただろう。
私はもうアドレスとのことは振り返ってはいない。
そして自分の幸福のための未来へと歩んでいる。
あの後高貴な家柄の青年と結婚した私は幸せになれたのだが、それとは対照的にアドレスは詐欺師の女性に引っかかってしまい結婚詐欺に遭い一文無しとなってしまったそうだ。
だがそれすらも私からすればどうでもいいことである。
ざまぁ、としか思わない。
◆終わり◆
私には婚約者がいた。
しかし彼は私を愛さず、幼馴染みだという女性のことばかり大切にしていて。
何とも言えない関係性、空気、そんなままで私たちの関係は時を刻んでいた。
だがそれにもやがて終わりが来る。
婚約者の彼はある日突然私を彼の自宅へ呼び出して、そして告げたのだ――関係の終焉、婚約破棄を。
しかもその際彼は私の悪いところを大量に言葉にして並べてきた。
それはとても長くて。
あまりにも理不尽な時間であった。
次々に心ない言葉を告げられれば誰だって心を傷めてしまうものだ。それも、内容が雑なものならなおさら。事実ですらない言葉で人格否定されるというのは傷つく。
だが、それによって、彼と別れる覚悟はできた。
だってそうだろう?
人を平気で傷つけるような人と生涯を共にするなど不可能だしあり得ないこと。
彼の本質に結婚前に気づけて良かったのかもしれない。
◆
「いらっしゃいませ!」
「こんにちはぁ」
「いつものお薬ですね?」
「そうですぅ」
婚約破棄後、私は、親が営む薬屋で仕事を始めた。
「お待たせしました、こちらご確認ください」
「はい、はい、合ってますよぉ」
「良かった! ではこちらで。お渡ししますね!」
「ありがとうねぇ」
元々来てくれていたお客さんとも段々親しくなって、今は仕事にやりがいを見出すことができ始めている。
「いつもお疲れ様」
「あ、こんにちは!」
「いつもの、で」
「承知いたしました! あ、喉薬ですが、味はどちらになさいますか?」
いつも温かく接してくれる人たちには感謝しかない。
「アーモンドで」
「承知しました!」
ちなみに元婚約者の彼はもうこの世にはいない。
風邪をこじらせて亡くなったそうなのだ。
また、彼が落命したのは、結婚式のちょうど一週間前だったとか――幸せの絶頂で、とは、切ないものだ。
だが彼は可哀想ではない。
なぜなら彼は他者を平気で傷つける人間だったからである。
◆終わり◆
『婚約しているのに浮気していたような貴方が不幸になっても正直何とも思いません。~思うことがあるとしたら、ざまぁ、だけですね~』
婚約者アドレスは裏でこそこそと浮気していた。
相手の女性は職場の人らしい。
何でもその女性は巨乳なことで評判らしく、アドレスもそこに惚れているのだとか。
いや、まぁ……べつにそれはいいのだが……。
とはいえ結婚前から浮気というのは放ってはおけない。
そんなことがまかり通ると思われるのは尺だ。
婚約したならそれなりの振る舞いをするべきだろう。婚約者を傷つけるようなことをすべきではない。本来そうであるべきなのに、彼はその道から外れた行動をしている。それはつまり悪である。
ということで、取り敢えず証拠を集め始めた。
そして証拠が複数溜まってから突きつける――婚約の破棄を。
彼は大慌てで「そんなつもりじゃなかった」とか「ちょっとした出来心で」とか「君と離れたくてしたわけじゃないんだ」とか言っていたけれど、そんなことはどうでもいい。
だから私は彼に別れを告げた。
さようなら、と。
もはやアドレスの気持ちなどどうでもいい。
そんなものはくだらないことだし考慮すべきことではない。
◆
あの日から何年が経っただろう。
私はもうアドレスとのことは振り返ってはいない。
そして自分の幸福のための未来へと歩んでいる。
あの後高貴な家柄の青年と結婚した私は幸せになれたのだが、それとは対照的にアドレスは詐欺師の女性に引っかかってしまい結婚詐欺に遭い一文無しとなってしまったそうだ。
だがそれすらも私からすればどうでもいいことである。
ざまぁ、としか思わない。
◆終わり◆
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