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『ある朝、頭痛で目を覚ますと、ベッドの脇に……? ~残念ですが貴方に幸せな未来はありません~』

 頭が痛いなぁ、なんて思いながら、瞼を開く――するとベッドの脇に婚約者である彼ローマンが立っていた。

「ええっ!?」

 思わず叫んでしまうが。

「今日は大切なことを告げに来た」

 彼は動じない。

「た、大切な、こと……?」
「ああそうだ」
「そう、ですか……けれど、ええと、その……」

 こちらはすぐには対応しきれない。
 だが向こうはそんなことはどうでもいいとでも言いたげな顔をしていて。

「お前との婚約だが、破棄とする」

 さらりとそんなことを告げてきた。

 それにはさすがに愕然としてしまう。

「お前との日々にはもう飽きたんだ」
「え……」
「なので関係は終わりとする」

 ローマンは淡々とそんなことを言って、私との関係性を自らの手で終わりへと導く。

「さよなら」

 ――こうして私たちの関係は終わった。

 なんて理不尽なのだろう。
 なんて身勝手なのだろう。

 ……でも、きっと、そんな彼には何を言っても無駄なのだろうな。


 ◆


 あの後少ししてローマンは落命した。
 雨の日に山道を散歩していたところ斜面から岩が落ちてきたそうで、それに激突され、一瞬にしてこの世を去ったらしい。

 ローマンには明るい未来はなかったようだ。

 彼の最期は突然かつ呆気ないものだった。


 ◆


 あれから数年、私は、良き夫を得ることができ大変幸せに暮らせている。

 毎日とても楽しくて幸せだ。

 だからこそこれからも。
 彼との日々を護るために努力するつもりでいる。

 手に入れた幸せは決して手放さない。


◆終わり◆


『雨上がり、婚約者がいきなり私の家にやって来まして……?』

 その日、婚約者ルルドルットが私の家に突然やって来た。

「いきなり悪いな」
「いえ……」
「お前との婚約だが、破棄とすることにしたんだ」

 雨上がりの玄関先。
 空は青く澄んでいる。

「婚約破棄、ですか?」
「そうなんだ」
「……なぜです?」

 問えば、彼は。

「お前より条件の良い女性を見つけ、その人と結婚できそうな感じだからだ」

 何の躊躇いもなく真っ直ぐに本当のことを答えた。

 なんて素直な人だろう……。
 でもそれは良いところではない……。

「ではな、さよなら」

 こうして私は一方的に捨てられたのだった。


 ◆


 あれから五年ほどが経った。
 時の経過というのは本当に早いものだ。

 私はルルドルットとは離れることとなってしまったが不幸にはならなかった――あの後とある良家の子息に惚れられ追い掛け回されたがそのうちに段々こちらも彼のことが好きになっていって、そうして私たちは結婚するに至った。

 おかげで今は幸せだ。

 ちなみにルルドルットはというと。
 ある雨の日に階段で足を滑らせてかなりの高さから転落し死亡したそうだ。


◆終わり◆
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