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ある夏の日、謎現象によって私は猫になってしまいました。~それでも幸せにはなれるのです~
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ある夏の日、謎現象によって私は猫になってしまった。
なんてことのない普通の女だったのに。あっという間に人であるという事実を失い。意識はあるまま、しかし姿は変わり、人でない存在となってしまったのだった。
そしてそれによって。
「お前! 猫になるとはどういうことだ!」
婚約者ロザーンーヌに怒られてしまい。
「日頃の行いが悪いからだろう! そして日頃の生活態度がだらしないからだろうが! だからばちが当たったんだ! 分かるか? ま、お前みたいなだらしなくてダサい女は猫になっても自業自得だがな! はははっ」
失礼なことを色々言われた、その果てに。
「まぁいい。お前にはもう価値がない。よって! 婚約は破棄とする!」
関係を終わらせるといった言葉を告げられてしまう。
私は何も悪いことはしていない。ただ謎の現象によって猫になってしまっただけ。なのにまるで救いようのない女だったかのように言われるなんて、あまりにも理不尽だ。
……だが、受け入れる以外の選択肢はなかった。
それにロザーンーヌが良い人でないことも分かってしまった。
彼は心ない人だ。
傷つけるようなことを平気でする。
……そんな人と生涯を共にする?
無理だろう。
そんなことは不可能。
なので私は婚約破棄を受け入れることにした。
ロザーンーヌなどもうどうでもいい。今や彼に愛されたいなんていう想いは少しもなくなった。彼への想いは完全に消え去った。もう彼をそういう対象とは見られない。
◆
あの後、ロザーンーヌは、自宅にいたところを山賊に襲われて亡くなった。
その日彼は自宅の自室で女性といちゃついていたそうなのだが、突然やって来た山賊に刃物で切り刻まれて、その場でこの世を去ったそうだ。
物騒なこともあるものだなぁ、なんて思いながらも、可哀想だとは思わなかった。
◆
婚約破棄された後、両親に支えてもらいながら、私は猫として暮らしていた。
だがある時家の裏を散歩していたところを一人の青年に発見される。
そして惚れられてしまった。
というのもその青年は無類の猫好きだったのである。
彼は資産家の息子であった。
その人に思わぬ形で見初められた私は、事情を説明し、彼の妻となることになった――猫の姿でありながら人と結婚することに成功したのである。
以来、溺愛されている。
彼に巡り会えたのは奇跡だと思う。
この運命をくれた神様に、そしてすべてを受け入れてくれた彼に、ただ感謝して生きてゆきたい。
◆終わり◆
なんてことのない普通の女だったのに。あっという間に人であるという事実を失い。意識はあるまま、しかし姿は変わり、人でない存在となってしまったのだった。
そしてそれによって。
「お前! 猫になるとはどういうことだ!」
婚約者ロザーンーヌに怒られてしまい。
「日頃の行いが悪いからだろう! そして日頃の生活態度がだらしないからだろうが! だからばちが当たったんだ! 分かるか? ま、お前みたいなだらしなくてダサい女は猫になっても自業自得だがな! はははっ」
失礼なことを色々言われた、その果てに。
「まぁいい。お前にはもう価値がない。よって! 婚約は破棄とする!」
関係を終わらせるといった言葉を告げられてしまう。
私は何も悪いことはしていない。ただ謎の現象によって猫になってしまっただけ。なのにまるで救いようのない女だったかのように言われるなんて、あまりにも理不尽だ。
……だが、受け入れる以外の選択肢はなかった。
それにロザーンーヌが良い人でないことも分かってしまった。
彼は心ない人だ。
傷つけるようなことを平気でする。
……そんな人と生涯を共にする?
無理だろう。
そんなことは不可能。
なので私は婚約破棄を受け入れることにした。
ロザーンーヌなどもうどうでもいい。今や彼に愛されたいなんていう想いは少しもなくなった。彼への想いは完全に消え去った。もう彼をそういう対象とは見られない。
◆
あの後、ロザーンーヌは、自宅にいたところを山賊に襲われて亡くなった。
その日彼は自宅の自室で女性といちゃついていたそうなのだが、突然やって来た山賊に刃物で切り刻まれて、その場でこの世を去ったそうだ。
物騒なこともあるものだなぁ、なんて思いながらも、可哀想だとは思わなかった。
◆
婚約破棄された後、両親に支えてもらいながら、私は猫として暮らしていた。
だがある時家の裏を散歩していたところを一人の青年に発見される。
そして惚れられてしまった。
というのもその青年は無類の猫好きだったのである。
彼は資産家の息子であった。
その人に思わぬ形で見初められた私は、事情を説明し、彼の妻となることになった――猫の姿でありながら人と結婚することに成功したのである。
以来、溺愛されている。
彼に巡り会えたのは奇跡だと思う。
この運命をくれた神様に、そしてすべてを受け入れてくれた彼に、ただ感謝して生きてゆきたい。
◆終わり◆
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