19 / 71
2作品
しおりを挟む
『あれは三年前の出来事、婚約者がある日突然婚約の破棄を告げてきたのです。』
あれは三年前の出来事だ。
当時婚約していた二つ年上の青年リフォードがある日突然告げてきたのだ――婚約破棄を。
だがそれを告げられた翌日に彼は亡くなった。
我が家の守護神とされている神に天罰を下されたのだ。
その日の朝、いつも通り散歩に出掛けたリフォードは、ヤマに近い道で急に体調を崩し倒れ込んだ。意識は辛うじてあったようだが。歩くことはできず、声が出ないので助けを求めることもできず、そのうちに魔獣に襲われて。結果、魔獣の餌となってしまった。
そうしてリフォードはこの世を去ったのだった。
その話を聞いた時には。
ざまぁ、と言う前に、天罰怖い、という言葉が脳内に湧いてきたほどであった。
それほどに呆気ない最期だったのだ。
彼には幸せな未来はなかった。
――その後私は近隣の国の王子に見初められて結婚した。
で、今は、王子の妻で未来の王妃。
人生とは分からないものだと思う。
何が起こるかなんてその時その瞬間まで目にすることはできないものだ。
でもこの道を歩む今を後悔はしていない。
責任は重大で。
時に押し潰されそうに感じることもあるけれど。
だが、愛してくれる人と共に在れることはとても嬉しいことなので、この席に座ることへの不満はない。
私はこれからも永く愛する人と共に生きてゆく。
◆終わり◆
『 「お前さぁ、ホント可愛くねぇからさぁ、婚約破棄するわ」いきなりそんなことを言い出すなんて、どうかしていると思います。 』
「お前さぁ、ホント可愛くねぇからさぁ、婚約破棄するわ」
婚約者ロガートは金髪に包まれた頭を掻きながらそんなことを言ってくる。
「え……」
「はぁ? 何びっくりしてんの? あっほぉ! お前、自分が可愛くないことにさえ気づいてねぇのかぁ?」
「そういう問題ではありません。婚約を一方的に破棄するなんて、あまりにも身勝手です。問題だと思います」
しかも、意見を述べると、頬を張られた。
「ッ……」
ロガートは私が思っているより暴力的な男だった。
「お前なんてなぁ! 要らねぇんだよ! 価値ねぇんだアホ女!」
怒鳴られて、それで、関係は終わりを迎えた。
◆
あれから三ヶ月。
ロガートはこの世を去った。
彼には好きな女性がいたそうなのだが、その女性にやたらと接近し距離を縮めようとしていたところ女性のガラの悪い父親に目をつけられてしまったらしく、ある晩女性を追って歩いていたところいきなり襲いかかられたそうなのだ。
そうして二十発以上殴られた彼は、気を失って倒れ込み、そのまま落命したそうだ。
あまりにも呆気ない最期。
ある意味可哀想にも思えてくるほど。
けれども私からすれば可哀想だとは感じない。
なんせ彼は私の頬を張った男だ。
そんな彼に対して可哀想などという感情を抱くことはないし、もしもそんな感情を抱くとしたらそのこと自体が間違っている。
彼のような優しさの欠片もない人に思いやりを向ける必要などない。
◆終わり◆
あれは三年前の出来事だ。
当時婚約していた二つ年上の青年リフォードがある日突然告げてきたのだ――婚約破棄を。
だがそれを告げられた翌日に彼は亡くなった。
我が家の守護神とされている神に天罰を下されたのだ。
その日の朝、いつも通り散歩に出掛けたリフォードは、ヤマに近い道で急に体調を崩し倒れ込んだ。意識は辛うじてあったようだが。歩くことはできず、声が出ないので助けを求めることもできず、そのうちに魔獣に襲われて。結果、魔獣の餌となってしまった。
そうしてリフォードはこの世を去ったのだった。
その話を聞いた時には。
ざまぁ、と言う前に、天罰怖い、という言葉が脳内に湧いてきたほどであった。
それほどに呆気ない最期だったのだ。
彼には幸せな未来はなかった。
――その後私は近隣の国の王子に見初められて結婚した。
で、今は、王子の妻で未来の王妃。
人生とは分からないものだと思う。
何が起こるかなんてその時その瞬間まで目にすることはできないものだ。
でもこの道を歩む今を後悔はしていない。
責任は重大で。
時に押し潰されそうに感じることもあるけれど。
だが、愛してくれる人と共に在れることはとても嬉しいことなので、この席に座ることへの不満はない。
私はこれからも永く愛する人と共に生きてゆく。
◆終わり◆
『 「お前さぁ、ホント可愛くねぇからさぁ、婚約破棄するわ」いきなりそんなことを言い出すなんて、どうかしていると思います。 』
「お前さぁ、ホント可愛くねぇからさぁ、婚約破棄するわ」
婚約者ロガートは金髪に包まれた頭を掻きながらそんなことを言ってくる。
「え……」
「はぁ? 何びっくりしてんの? あっほぉ! お前、自分が可愛くないことにさえ気づいてねぇのかぁ?」
「そういう問題ではありません。婚約を一方的に破棄するなんて、あまりにも身勝手です。問題だと思います」
しかも、意見を述べると、頬を張られた。
「ッ……」
ロガートは私が思っているより暴力的な男だった。
「お前なんてなぁ! 要らねぇんだよ! 価値ねぇんだアホ女!」
怒鳴られて、それで、関係は終わりを迎えた。
◆
あれから三ヶ月。
ロガートはこの世を去った。
彼には好きな女性がいたそうなのだが、その女性にやたらと接近し距離を縮めようとしていたところ女性のガラの悪い父親に目をつけられてしまったらしく、ある晩女性を追って歩いていたところいきなり襲いかかられたそうなのだ。
そうして二十発以上殴られた彼は、気を失って倒れ込み、そのまま落命したそうだ。
あまりにも呆気ない最期。
ある意味可哀想にも思えてくるほど。
けれども私からすれば可哀想だとは感じない。
なんせ彼は私の頬を張った男だ。
そんな彼に対して可哀想などという感情を抱くことはないし、もしもそんな感情を抱くとしたらそのこと自体が間違っている。
彼のような優しさの欠片もない人に思いやりを向ける必要などない。
◆終わり◆
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
想い合っている? そうですか、ではお幸せに
四季
恋愛
コルネリア・フレンツェはある日突然訪問者の女性から告げられた。
「実は、私のお腹には彼との子がいるんです」
婚約者の相応しくない振る舞いが判明し、嵐が訪れる。
くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。
音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。>
婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。
冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。
「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる