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愛しているといつも言ってくれていた婚約者はいつの間にか私の妹に手を出していました。
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愛しているといつも言ってくれていた婚約者オーデットは私の妹に手を出した。
そして私との婚約を一方的に破棄するべく動き出す。
ある日の午後、オーデットは私の妹と腕を組んでいちゃつきながら私の前に姿を現し、そしてゴミでも見るかのような目でこちらを見ながら「君との関係はおしまいにする、婚約は破棄だ」と宣言してきた。
戸惑う私を見て二人は馬鹿にしたようにくすくすと笑う。
それだけでも十分不愉快だ。
いきなり驚くようなことを告げ、それに戸惑って言葉を失ってしまった者を馬鹿にして笑うなど、善良な人間とは思えない。
だが二人の悪行はまだ終わらなかった。
妹は「お姉さま、怨まないでね? オーデットさまがわたくしを選んだのはわたくしが女として貴女より勝っていたから、ただそれだけなのだから」などと偉そうなことを言ってきた。
オーデットは「負け犬が喚かないでくれよ」と失礼な言葉を発してから、少し間を空けて「君は家柄だけの並女だが妹さんは違う。妹さんはとても美人で優しく人気も高い、とても素晴らしい女性だ。だから妹さんを選ぶことにしたんだ。それがすべてだ」などと長文を投げてきた。
私は何も言えないまま立ち尽くしていた。
そんな私を無視して、二人は歩き出す。
「これで婚約できますわね!」
「ああそうだな」
「鬱陶しい邪魔者がいなくなってすっきりしましたわね」
「確かに。早く君と婚約したかった。あんな女、どこかへやって。ずっとずっと、この時を心待ちにしていたんだ」
だが、次の瞬間、二人の頭上にどこかから飛んできた風に割られた大量のガラスが降り注ぐ。
「ぇ……ぃ、いやあああああああ!!」
先に気づいたのは妹。
「きゃあああああああっ!!」
「ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
追ってオーデットも気づくが、その時には既に逃げられない状態となっていて。
――そうしてオーデットと妹はその場で死に至ったのだった。
私を傷つけて、幸せへ行こうとした二人。
けれどもその道に幸福な未来はなかった。
彼らを待っていたのは、あの世へ逝くという残酷な運命だけだったのだ。
◆
「ちょっと、これ運んでもらっていいかしら」
「あ、うん! 終わったらすぐそっち行くよ! ちょっとだけ待ってて!」
「ありがとう。助かる。じゃあこのまま待っておくわね」
あれから何年経っただろう。
でもそんなことはどうでもいい。
それよりも重要なことは今がとても楽しいということ。
オーデットとの婚約が破棄となった後、私は、友人の紹介で知り合った人と親しくなった――そしてやがて結ばれ夫婦となったのだ。
「お待たせ!」
「ごめんなさいね」
オーデットとの関係に必死にならなくて良かった。
今なら迷いなくそう言える気がする。
だってオーデットと結婚して生きたとしてもきっとこんなに幸せではなかっただろうと思うから。
「えーと、これ?」
「ええそうなの。重すぎてちょっと運べそうになくて……」
「任せてよ! 運ぶよ」
「いつも本当にごめんなさいね」
「まさか! 気にしてないよ。むしろ頼ってもらえて嬉しいくらい。じゃ、運ぶからね。庭でいい?」
運命に感謝しよう。
「ええ、庭へ」
そしてこれからもずっとこの幸せを抱き締めて生きてゆく。
◆終わり◆
そして私との婚約を一方的に破棄するべく動き出す。
ある日の午後、オーデットは私の妹と腕を組んでいちゃつきながら私の前に姿を現し、そしてゴミでも見るかのような目でこちらを見ながら「君との関係はおしまいにする、婚約は破棄だ」と宣言してきた。
戸惑う私を見て二人は馬鹿にしたようにくすくすと笑う。
それだけでも十分不愉快だ。
いきなり驚くようなことを告げ、それに戸惑って言葉を失ってしまった者を馬鹿にして笑うなど、善良な人間とは思えない。
だが二人の悪行はまだ終わらなかった。
妹は「お姉さま、怨まないでね? オーデットさまがわたくしを選んだのはわたくしが女として貴女より勝っていたから、ただそれだけなのだから」などと偉そうなことを言ってきた。
オーデットは「負け犬が喚かないでくれよ」と失礼な言葉を発してから、少し間を空けて「君は家柄だけの並女だが妹さんは違う。妹さんはとても美人で優しく人気も高い、とても素晴らしい女性だ。だから妹さんを選ぶことにしたんだ。それがすべてだ」などと長文を投げてきた。
私は何も言えないまま立ち尽くしていた。
そんな私を無視して、二人は歩き出す。
「これで婚約できますわね!」
「ああそうだな」
「鬱陶しい邪魔者がいなくなってすっきりしましたわね」
「確かに。早く君と婚約したかった。あんな女、どこかへやって。ずっとずっと、この時を心待ちにしていたんだ」
だが、次の瞬間、二人の頭上にどこかから飛んできた風に割られた大量のガラスが降り注ぐ。
「ぇ……ぃ、いやあああああああ!!」
先に気づいたのは妹。
「きゃあああああああっ!!」
「ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
追ってオーデットも気づくが、その時には既に逃げられない状態となっていて。
――そうしてオーデットと妹はその場で死に至ったのだった。
私を傷つけて、幸せへ行こうとした二人。
けれどもその道に幸福な未来はなかった。
彼らを待っていたのは、あの世へ逝くという残酷な運命だけだったのだ。
◆
「ちょっと、これ運んでもらっていいかしら」
「あ、うん! 終わったらすぐそっち行くよ! ちょっとだけ待ってて!」
「ありがとう。助かる。じゃあこのまま待っておくわね」
あれから何年経っただろう。
でもそんなことはどうでもいい。
それよりも重要なことは今がとても楽しいということ。
オーデットとの婚約が破棄となった後、私は、友人の紹介で知り合った人と親しくなった――そしてやがて結ばれ夫婦となったのだ。
「お待たせ!」
「ごめんなさいね」
オーデットとの関係に必死にならなくて良かった。
今なら迷いなくそう言える気がする。
だってオーデットと結婚して生きたとしてもきっとこんなに幸せではなかっただろうと思うから。
「えーと、これ?」
「ええそうなの。重すぎてちょっと運べそうになくて……」
「任せてよ! 運ぶよ」
「いつも本当にごめんなさいね」
「まさか! 気にしてないよ。むしろ頼ってもらえて嬉しいくらい。じゃ、運ぶからね。庭でいい?」
運命に感謝しよう。
「ええ、庭へ」
そしてこれからもずっとこの幸せを抱き締めて生きてゆく。
◆終わり◆
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