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後編

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 ◆


 あれから六年、私は今、素晴らしい人と巡り会えたため素晴らしい人と家庭を築くことができている。

 彼との出会いは家を出てすぐ。
 職場の近くの店で知り合って。
 私たちはあっという間に親しくなった。

「もう六年、か」
「そうね」
「長いような短いような……不思議な感じだな」
「ええ」

 私も今や二児の母。
 毎日賑やかさの中で生きている。

 当然大変なこともある。
 でも良いこともある。
 子どもの成長を見守れる、それは特に良いことだ。

 少なくとも――あのまま家にいて母親からあれこれ言われ虐められ続けているよりかは良かっただろうな、とは、迷いなく思えている。

 私は自由だ。
 苦労はあっても不幸ではない。

「いつもさ、子どもの世話とかしてくれて、ありがとな」
「そんなの……あなたが稼いでくれるからこその今よ」
「照れるわそんなこと言われたら……でも、さ、はは、嬉しいよ」

 そういえば。

 母親はあの後当たり散らせる人がいなくなったために夫に当たり散らすようになったそうだ。

 で、夫から見放され、離婚となって。

 年を重ねてから離婚となり一人になってしまった母親は周囲の人たちからくすくす笑われたり色々言われたりしたことでさらに怒りっぽくなってしまい、ある時近所の人に感情的になって襲いかかったことで治安維持組織に捕まったそう。

 そして今は牢屋に入れられているらしい。

 そこでもよく問題を起こしているようだが……自分勝手なことを言って周りに攻撃した罰として鞭打ち百五回の刑に処されてからは少しは大人しくなったようだ。

 なんて憐れな人生の後半だろうか。

 ま、自業自得なのだけれど。


◆終わり◆
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