上 下
2 / 3

2話

しおりを挟む

 ただ、婚約破棄というのは私としても都合の良いことかもしれない。
 ここまでどうかしている彼とこの先ずっと一緒に生きていくというのはかなり難しいことだろう。

「分かりました。婚約破棄、受け入れます。ではさようなら」

 私は彼の意思を受け入れることにした。

 なぜって、その方が私のためになると判断したからだ。


 ◆


「リーフィーナさんは本当に可愛らしいですね」
「ええっ……て、照れてしまいます……」
「ふふ、そういうところも含めてですよ。お美しいだけでない人間らしさと可愛らしさ、そういうところにとても惹かれています」

 アッデーラと別れた直後、良き縁が我が人生に飛び込んできた。

 私に近づいてきてくれた彼の名はエデルバード。

 彼は領地を多く所有する資産家の家の子息である。
 でもかっこつけているところや威張っているところは一切ない。

 彼は真っ直ぐで清らかな心の持ち主だ。

「……口説いてます?」

 ただ、時に真っ直ぐ過ぎる時もあって、彼から囁かれる愛の言葉や褒め言葉には時々動揺させられる。

「ええ」

 ただ、どんな時も自信を持っていて堂々としている彼を見てほっとしている、そんな私もいる。

「それ言います!? す、凄いですね……」
「ですが本気ですよ。嘘はついていません。発した言葉はすべて本当に思っていることですから」
「そういうもの……でしょうか。お世辞ではない、ということですね……?」
「そうですよ」
「では……ありがとうございます、そう言わせてください」

 どうやらエデルバードは私を愛してくれているようだ。

 彼と一緒にいる時は心地よい。

 だって大事にしてもらえるから。
 優しさで包み込んでくれるから。

 私は今、彼との将来を徐々に考え始めている。

 エデルバードとなら幸せになれるのではないか? ――そんな風に思って。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔法を使える私はかつて婚約者に嫌われ婚約破棄されてしまいましたが、このたびめでたく国を護る聖女に認定されました。

四季
恋愛
「穢れた魔女を妻とする気はない! 婚約は破棄だ!!」 今日、私は、婚約者ケインから大きな声でそう宣言されてしまった。

ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?

望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。 ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。 転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを―― そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。 その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。 ――そして、セイフィーラは見てしまった。 目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を―― ※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。 ※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)

執着はありません。婚約者の座、譲りますよ

四季
恋愛
ニーナには婚約者がいる。 カインという青年である。 彼は周囲の人たちにはとても親切だが、実は裏の顔があって……。

真実の愛だけに生きると宣言した彼は……

四季
恋愛
「国護りの王女だろうが何だろうが関係ない! 婚約は破棄する! 俺は真実の愛だけに生きる!」  私の婚約者であり隣国の第一王子でもある彼は、国のためにと嫁ごうとした私を拒み、国民の目の前で婚約破棄を告げた。

遊び人の婚約者に愛想が尽きたので別れ話を切り出したら焦り始めました。

水垣するめ
恋愛
男爵令嬢のリーン・マルグルは男爵家の息子のクリス・シムズと婚約していた。 一年遅れて学園に入学すると、クリスは何人もの恋人を作って浮気していた。 すぐさまクリスの実家へ抗議の手紙を送ったが、全く相手にされなかった。 これに怒ったリーンは、婚約破棄をクリスへと切り出す。 最初は余裕だったクリスは、出した条件を聞くと突然慌てて始める……。

精霊の聖女を王太子が口汚く侮辱し、婚約破棄を宣言してしまいました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 オレゴン公爵家は精霊に愛されていた。オレゴン公爵家のあるカリフロ王国は、オレゴン公爵家にる精霊の聖女のお陰で、ギリギリ砂漠化を免れて存続していた。だが愚かなカリフロ王国の王太子は、精霊を蔑み忌み嫌っていた。精霊の聖女と結婚させられる事も恥辱だと考えていた。オレゴン公爵家など王国軍で攻め滅ぼし、精霊は捕獲して使役させればいいと考えていた。だから、婚約披露パーティーで精霊の聖女を罵り、婚約破棄を宣下してしまった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈 
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...