婚約破棄とざまぁを繰り返すことに意味なんてあるのでしょうか? そうすることで幸せを掴める、と、神は言っていましたが……。

四季

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47~49

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47.

「な! フローリニア! 俺たち、仲良しだよなっ!」

 今回の婚約者ルッツはやたらと距離感の近い人物だ。

 さほど親しくないのに不自然なほど近づいてくる。
 さすがに気味が悪いと思ってしまうほど。

 でも、それだけなのなら、まだいいのだが……。

「な? 仲良しだよな?」
「……え、ゃ、えっと」
「おいいいい!! 何だその態度ぉぉぉぉ!! ふっざけんなああああ!!」

 少しでも反対の意思が垣間見えると急に怒り出すのだ。

「え、え……え……?」
「おいごらあああぁぁぁぁぁ!! 仲良しだろぉがぁぁぁぁ!! 違うって言ってんのか? 言ってんのか? おいごらあああぁぁぁぁぁ!!」

 そういうところが特に厄介だ。
 もう鬱陶しすぎる。
 いちいち絡んでくるのが非常に面倒臭い。


 ◆


 婚約から三ヶ月、ルッツは亡くなった。

 惚れた女性に拒否されて怒りが爆発した際、その女性を亡き者にしようと崖の方へと追い込んだようなのだが、うっかり足を滑らせて彼が崖から落ちてしまったのである。

 彼はこの世界から完全に消滅した。
 そしてもちろん、婚約は自動的に破棄となったのだった。

 私は厄介な男から解放された!

 それはとても嬉しいこと。
 涙が出そうなほどに。
 踊りたくなる、歌いたくなる、それほどに。



48.

「フローリニア、お前、いーとこねーよな」

 婚約者ロメックスは感じの悪い男性だ。
 会うたびに嫌みというか悪口というかそういったことを言ってくる。

 どうしてそんな心ないことができるのだろう、と、いつも密かに思っている。

 だってそうだろう? 一応婚約者なのに。彼から見れば私は婚約している相手なのに。それなのにどうしてそこまで傷つけるような発言をできるのだろう? どうしてそんな心ないことができるのだろう? ……私には理解できない。傷つけるようなことばかり言っては可哀想だな、とは思わないのだろうか。

 彼は何度も私を傷つける。

 繰り返すのは「お前がもーっと魅力的だったらな、毎日楽しかっただろーになー」とか「俺不運だよなー、お前みたいなやつが婚約者で。気の毒男子だよなー」とかそんな言葉ばかり。

 彼は私を傷つけることしかしない。

 朝も、昼も、晩も、どんな日も、私を見かければ彼は平気で傷つけようとしてくるのだから……酷すぎる。

 そんなある日。

「お前との婚約、破棄するわ」

 ロメックスはついにそんなことを言ってきた。

 でも悲しくはない。
 むしろ嬉しいくらいだ。

「婚約破棄、ですか……」
「ああそうだ」
「分かりました!」

 ここは笑ってやろう。

 こういう時にこそ嫌みを。
 敢えてひたすら明るく。

「では、さようなら!」

 こうして私たちの関係は終わった。

 これでもうややこしいことを言われなくて済む、そう思うだけで気が楽になる。

 少なくとももう傷つかなくていい。
 それはとてもありがたいこと。

 爽やかな気持ちだし、解放感が凄いし、鼻歌が出てしまいそうなほどだ。

 その後ロメックスがどうなったかというと。
 雨の日に山道を歩いていたところ足を滑らせて谷へ落ちてしまい、その際に強く打った部位が悪かったために亡くなったそうだ。

 彼はもう、この世界で生きることはできない。



49.

 やがてフローリニアも死んだ。
 不幸な死ではなかったからまだ幸運な方だったけれど。

 そしてまた、新たな生を得ることとなる。

 ある王国の聖なる乙女アイニーティアとして。


 ◆


 アイニーティアは幼い頃にその才能を見出され聖なる乙女となった。

 聖なる乙女というのは、この国においてはかなり地位の高い女性である。
 それゆえ、それになった者は、女性でありながら大変丁寧に扱われる。

 私、アイニーティアも、そうだった。

 そんなアイニーティアは十八の春に王子ラルフローレンと婚約。

 ……だが幸せにはなれなかった。

 遊び人で毎晩異なる女性を自室へ連れ込むラルフローレンがアイニーティアを純粋に愛するはずもなく。彼は婚約後もずっと複数の女性を愛していて。しかもアイニーティアのことはほぼほぼ無視であった。

 そんなある日、ラルフローレンに天罰が下る。

 女性二人とお楽しみ中だったラルフローレンの頭に棚の上の花瓶が落ちたのだ。

 なぜそんなことになったのかは不明。

 ただ、ラルフローレンはそれによって頭がかち割れることとなってしまい、一週間も経たないうちに死亡した。

「ラルフローレン様、亡くなられるなんてねぇ」
「嘘みたいな話だわ」
「アイニーティア様を放置していたみたいだから……それで、天罰が下ったのね」

 城内はその話で持ち切り。

「ま、あいつクズ男だったしね~」
「ほーんとそれよね」
「ないわー。いくら王子でも呆れる。サイテーすぎる」
「酷いわよねぇ」
「心ない男すぎるでしょ、さすがに」
「あり得ないわ」
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