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40~46
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40.
「君は本当に無能だね」
婚約者ロードの口癖はそれだった。
彼はいつも私のことを馬鹿にしていた。
「君ってさ、名前からして愚かそうだよね」
ある時はそんなことを言われたうえくすくすと笑われてしまい。
「どうして君は愚かなのだろうね? ま、生まれかな。そう生まれついて、また、それな親のもとで育ったのだろうね」
ある時は無関係な親のことまで貶められ。
「ああ、君と婚約したことを後悔しているよ」
また別のある時にはそんな基礎から叩き壊すような発言をされてしまった。
だが、そんな感じの悪い彼は、ある日突然私の前から消えることとなった。
仕事中に働いていた建物の謎の崩壊が発生。
逃げ遅れた彼はそのままあの世逝きとなってしまった。
そして婚約は破棄となる。
建物の倒壊に巻き込まれる、というのは本来悲劇である。
大きな建造物が崩壊なんてした日には人は無力。
どう足掻こうともそれに抵抗するのはかなり難しい。
だから悲劇なのだ。
ただ、ロードはこれまで見ていて行いが行いだったので、理不尽な死を遂げてもなお悲劇だとも可哀想だとも思えなかった。
41.
一年ほど前、リーベリオという青年と婚約したのだが、私は彼のことが苦手だった。
なぜって、臭いから。
特に口腔が。
でも理由を知れば納得、彼は歯磨きを極端に嫌がる性質なのだそうだ。
「リタ、今日は買い物誘ってくれてありがとー!」
「会えて嬉しいわ」
「あたしも! めちゃ嬉しー! で、どこから見に行く?」
「そうね、ええと……」
リーベリオの歯磨きは年に一度するかどうかくらいの頻度らしい。
それは口が臭いはずだ……。
しかも明らかに不衛生……。
「この服可愛い! リタ似合いそう!」
「ええっ、キュート過ぎるって」
「そ? 似合うと思うけどなー。あ、じゃあ、一回着てみてよ! 試着試着っ」
「ちょ、待っ……!!」
しかも、会うとなぜか毎回敢えて口を近づけてきて、匂いを嗅ぐように言われる。それごもう不快で不快で。だからなるべく会わないで済むよう努力した。
明らかに不衛生的な口から放たれる息を嗅がされる時の惨めさといったら、もう……。
「ふー! いい買い物できたねー!」
「買っちゃった……」
「リタ、それ、絶対いいよ!」
「……そう、かな」
「うん! めちゃ似合う! かーわーいーいー。明るい色似合うよねっ」
で、無視を続けていた結果、リーベリオはやがて婚約破棄を告げてきた。
そうして私は何とか彼から逃れたのだった。
「次あそこ行かない?」
「雑貨?」
「うん! リタにプレゼント買うー」
「ええっ、いいよそんなの」
「さっき買わせちゃったし。あたしの好みなのに。反省してるんだ、一応。だから、今度はあたしが買ってリタにあげるねっ」
もうあの匂いを嗅がなくていいと思うとそれだけで心が躍る。
「ほら! 行こーよ! ね?」
「あ、うん」
「……だいじょぶ? お腹空いた?」
「大丈夫」
「ほんと?」
「もちろん」
「オッケー! じゃ、行っこーう!」
ちなみにリーベリオはというと、あの後好きになった女性から口臭を厳しく指摘され、絶望してこの世を去ったようだ。
42.
婚約者ローレンズはいろんな意味で癖が強い。
「リタ、君との婚約だが本日をもって破棄とすることにした」
彼はやたらとたくさんルールを作ってくるのだ。しかもその内容が、一日に六十回キスをすることとか背中を舐めることとかいった意味不明なものばかりなのである。そしてそのルールを守らないと凄まじい形相で睨んでくる。なぜか無言で。
「君は僕に毎日キスしてくれないだろう?」
「え」
「ルールを守れない女は嫌いなんだ」
「えええー……」
どうしてそんな意味不明なルールをたくさん作れるのだろう?
しかもそれを真剣に考えていられるのだろう?
……謎でしかない、理解不能だ。
ローレンズのことはよく分からない。でもきっとこれは永遠にであろう。彼を理解できる日は来ない、そんな気がする。話し合えば分かり合える、なんて甘いものではない。
そんな彼は、私との婚約を破棄した日の夜、自宅の廊下を全力疾走していて転び舌を酷く噛んで落命した。
ローレンズは私を捨てたが、ローレンズは神に見捨てられた。
明るい未来を手に入れられなかったのは私ではなく彼のほうだったのだ。
43.
「リーターちゃんっ、お出掛けしない?」
最近知り合った親友ルルはたびたびお出掛けのお誘いにやって来てくれる。
栗色の髪が可愛らしい娘だ。
「お誘いありがとう」
「やた! じゃ、行こ~う。んん~、どこ行こっか? あはは、楽しみだねっ」
彼女のことは好きなのだが……、先日できた婚約者ロペースに関しては心が重いことばかりだ。
ロペースは高圧的な人。そして私を見るとやたらと無礼な言葉を並べてくる。彼の発言や身振りにはいつも私を貶める意思が含まれているのだ。
愛してくれなんて言わない。
ただ普通に関わってくれればそれでいいのだというのに。
それなのに彼は、私に酷いことばかりする。
「アイス食べよ!」
「あ、ええ」
「リタちゃんアイス嫌い?」
「いいえ。好きよ。大好き」
「そ! なら良かった! じゃ、行こ~う」
◆
あれから半年、ロペースとの関係は終わった。
おかげで今は悩みが一つもない。
生きていて、暮らしていて、楽しいことばかりだ。
ロペースは放置していたら勝手に婚約破棄通知を送ってきた。
そして私はそれを受け入れる。
それにより私たちの関係はあっさりと終わりを迎えることとなった。
ちなみにロペースはというと、婚約破棄後間もなく、山登り中に遭難し一人寂しく凍死してしまったそうだ。
「リタちゃん! クッキー持ってきた! 食~べよっ」
「えっ、いいの!? ありがとう!」
「やった~、喜んでもらえたら嬉しい~」
「手作りだよっ」
「え、うそ、ほんとに!? ルルが作ったの!?」
「うん! そうそう! 作ったんだ~、自信作だよっ」
44.
「ん」
それはある昼下がり。
「え……って、ひいいいいっ!!」
婚約者ロデールに肩を触られたと思ったら、まさかの。
「は、は、鼻くそおおおぉぉぉぉぉぉッ!?」
暗い緑色の鼻くそを擦り付けられていた。
即座には理解できなかった。
何が起こったのか、脳が真実へはたどり着けない。
「ぎゃああああああああ!!」
突然のまさかの行動。
思わず叫んでしまって。
それによって、ロデールの母親から叱られてしまった。
「貴女ねぇ! うちの息子の行動にいちゃもんつけるんじゃないわよ!」
ロデールの母親は怒りに燃えていた。
「で、で、でも……、いきなり……鼻、くそ……」
「可愛いロデールの鼻くそだからましでしょ!!」
「え、ええ、え……ええー……」
「貴女はロデールの婚約者なのよ? 分かっているの? 婚約者なんだから、婚約してあげているのだから、そのくらい我慢しなさいよ! 些細なことじゃないの!」
めちゃくちゃな理論過ぎる……。
鼻くそをつけられるなんて誰だって嫌だろう……。
だがその翌日、ロデールと両親は馬車の事故に遭いこの世を去った。
そして婚約は自動的に破棄となったのだった。
だが今も思う。
あの行動は何だったのか?
そして母はなぜ怒ったのか?
……そんな風に。
だって、いくらなんでもおかしいだろう、他者に鼻くそを擦り付けるなんて。
普通はそんなことはしない。
子どもならまだしも。
なのに、それを嫌がっただけでこちらがあそこまで怒られるだなんて、もう到底理解できる範囲の話ではない。
45.
私はまた生まれ変わった。
今度は資産も歴史もある良き家の長女であった。
名は、フローリニアという。
両親や親戚には大層可愛がられていた。
だがその先に幸せな未来が待っているわけではなかった。
……やはり私はまた婚約破棄とざまぁのループへと巻き込まれてゆくのだ。
◆
フローリニアの一人目の婚約者である彼はルーベズルトンという五つ年上の男性であった。
彼はお金持ちだ。
経済的な意味では彼との縁はそれなりに良い縁だった。
だが彼は非常に女好き。ことあるごとに自室に女を連れ込むような人であり、また、そのことを悪いこととはまったくもって思っていないような人。しかもかなり深い関係にまで発展している関係も多いからさらにどうしようもない。
そんな彼の悪行には一応まだ黙っておいていたのだが。
「フローリニア、君との婚約は破棄だ」
ある日ついにそう言われてしまうことに。
「君なんかよりずっと条件の良い女性が見つかった、だから、関係はここまでとしようじゃないか。……さよなら」
こうして私は捨てられたのだった。
だが、その時言っていた女性と結婚した彼は、ある日突然行方不明に。
そして後に彼の家の近くに位置する山の奥にて内臓を抜かれた状態で発見されたそうだ。
もちろん彼は発見時既に亡き人となっていたらしい。
46.
ルーベズルトンとの婚約が破棄となって間もなく、私は母親の姉の紹介で一人の男性と顔合わせをすることとなった。
正直、あまり乗り気ではなかった。
しかし、私が話を聞いた時には既に決められてしまっていたため抵抗することなどできはしなかったしそんなことをする気力もなかったので、一応そのまま参加しておくことにした。
そんな形で出会った男性ロクノエスは私のことを気に入ってくれ、婚約を希望してくれた。
そうして私は彼と婚約することとなる。
婚約破棄経験があると知りながらも彼は私を選んでくれたのだった。
……しかしその関係さえも順調には進まず。
「ごめん、婚約破棄する」
「え……」
「やっぱり嫌になったんだ。気が変わった。だから……ごめん、さようなら」
彼はそれらしい理由を言うこともしないまま別れを告げてきたのだった。
そんなロクノエスだが、婚約破棄後間もなく落命した。
というのも、友人がふざけて贈ってくれたキノコを食べられるものと思い込んで食べたために体調を崩しそのまま帰らぬ人となってしまったそうなのだ。
キノコを食べて死亡、とは……なかなかパンチのある、恐ろしい最期である。
「君は本当に無能だね」
婚約者ロードの口癖はそれだった。
彼はいつも私のことを馬鹿にしていた。
「君ってさ、名前からして愚かそうだよね」
ある時はそんなことを言われたうえくすくすと笑われてしまい。
「どうして君は愚かなのだろうね? ま、生まれかな。そう生まれついて、また、それな親のもとで育ったのだろうね」
ある時は無関係な親のことまで貶められ。
「ああ、君と婚約したことを後悔しているよ」
また別のある時にはそんな基礎から叩き壊すような発言をされてしまった。
だが、そんな感じの悪い彼は、ある日突然私の前から消えることとなった。
仕事中に働いていた建物の謎の崩壊が発生。
逃げ遅れた彼はそのままあの世逝きとなってしまった。
そして婚約は破棄となる。
建物の倒壊に巻き込まれる、というのは本来悲劇である。
大きな建造物が崩壊なんてした日には人は無力。
どう足掻こうともそれに抵抗するのはかなり難しい。
だから悲劇なのだ。
ただ、ロードはこれまで見ていて行いが行いだったので、理不尽な死を遂げてもなお悲劇だとも可哀想だとも思えなかった。
41.
一年ほど前、リーベリオという青年と婚約したのだが、私は彼のことが苦手だった。
なぜって、臭いから。
特に口腔が。
でも理由を知れば納得、彼は歯磨きを極端に嫌がる性質なのだそうだ。
「リタ、今日は買い物誘ってくれてありがとー!」
「会えて嬉しいわ」
「あたしも! めちゃ嬉しー! で、どこから見に行く?」
「そうね、ええと……」
リーベリオの歯磨きは年に一度するかどうかくらいの頻度らしい。
それは口が臭いはずだ……。
しかも明らかに不衛生……。
「この服可愛い! リタ似合いそう!」
「ええっ、キュート過ぎるって」
「そ? 似合うと思うけどなー。あ、じゃあ、一回着てみてよ! 試着試着っ」
「ちょ、待っ……!!」
しかも、会うとなぜか毎回敢えて口を近づけてきて、匂いを嗅ぐように言われる。それごもう不快で不快で。だからなるべく会わないで済むよう努力した。
明らかに不衛生的な口から放たれる息を嗅がされる時の惨めさといったら、もう……。
「ふー! いい買い物できたねー!」
「買っちゃった……」
「リタ、それ、絶対いいよ!」
「……そう、かな」
「うん! めちゃ似合う! かーわーいーいー。明るい色似合うよねっ」
で、無視を続けていた結果、リーベリオはやがて婚約破棄を告げてきた。
そうして私は何とか彼から逃れたのだった。
「次あそこ行かない?」
「雑貨?」
「うん! リタにプレゼント買うー」
「ええっ、いいよそんなの」
「さっき買わせちゃったし。あたしの好みなのに。反省してるんだ、一応。だから、今度はあたしが買ってリタにあげるねっ」
もうあの匂いを嗅がなくていいと思うとそれだけで心が躍る。
「ほら! 行こーよ! ね?」
「あ、うん」
「……だいじょぶ? お腹空いた?」
「大丈夫」
「ほんと?」
「もちろん」
「オッケー! じゃ、行っこーう!」
ちなみにリーベリオはというと、あの後好きになった女性から口臭を厳しく指摘され、絶望してこの世を去ったようだ。
42.
婚約者ローレンズはいろんな意味で癖が強い。
「リタ、君との婚約だが本日をもって破棄とすることにした」
彼はやたらとたくさんルールを作ってくるのだ。しかもその内容が、一日に六十回キスをすることとか背中を舐めることとかいった意味不明なものばかりなのである。そしてそのルールを守らないと凄まじい形相で睨んでくる。なぜか無言で。
「君は僕に毎日キスしてくれないだろう?」
「え」
「ルールを守れない女は嫌いなんだ」
「えええー……」
どうしてそんな意味不明なルールをたくさん作れるのだろう?
しかもそれを真剣に考えていられるのだろう?
……謎でしかない、理解不能だ。
ローレンズのことはよく分からない。でもきっとこれは永遠にであろう。彼を理解できる日は来ない、そんな気がする。話し合えば分かり合える、なんて甘いものではない。
そんな彼は、私との婚約を破棄した日の夜、自宅の廊下を全力疾走していて転び舌を酷く噛んで落命した。
ローレンズは私を捨てたが、ローレンズは神に見捨てられた。
明るい未来を手に入れられなかったのは私ではなく彼のほうだったのだ。
43.
「リーターちゃんっ、お出掛けしない?」
最近知り合った親友ルルはたびたびお出掛けのお誘いにやって来てくれる。
栗色の髪が可愛らしい娘だ。
「お誘いありがとう」
「やた! じゃ、行こ~う。んん~、どこ行こっか? あはは、楽しみだねっ」
彼女のことは好きなのだが……、先日できた婚約者ロペースに関しては心が重いことばかりだ。
ロペースは高圧的な人。そして私を見るとやたらと無礼な言葉を並べてくる。彼の発言や身振りにはいつも私を貶める意思が含まれているのだ。
愛してくれなんて言わない。
ただ普通に関わってくれればそれでいいのだというのに。
それなのに彼は、私に酷いことばかりする。
「アイス食べよ!」
「あ、ええ」
「リタちゃんアイス嫌い?」
「いいえ。好きよ。大好き」
「そ! なら良かった! じゃ、行こ~う」
◆
あれから半年、ロペースとの関係は終わった。
おかげで今は悩みが一つもない。
生きていて、暮らしていて、楽しいことばかりだ。
ロペースは放置していたら勝手に婚約破棄通知を送ってきた。
そして私はそれを受け入れる。
それにより私たちの関係はあっさりと終わりを迎えることとなった。
ちなみにロペースはというと、婚約破棄後間もなく、山登り中に遭難し一人寂しく凍死してしまったそうだ。
「リタちゃん! クッキー持ってきた! 食~べよっ」
「えっ、いいの!? ありがとう!」
「やった~、喜んでもらえたら嬉しい~」
「手作りだよっ」
「え、うそ、ほんとに!? ルルが作ったの!?」
「うん! そうそう! 作ったんだ~、自信作だよっ」
44.
「ん」
それはある昼下がり。
「え……って、ひいいいいっ!!」
婚約者ロデールに肩を触られたと思ったら、まさかの。
「は、は、鼻くそおおおぉぉぉぉぉぉッ!?」
暗い緑色の鼻くそを擦り付けられていた。
即座には理解できなかった。
何が起こったのか、脳が真実へはたどり着けない。
「ぎゃああああああああ!!」
突然のまさかの行動。
思わず叫んでしまって。
それによって、ロデールの母親から叱られてしまった。
「貴女ねぇ! うちの息子の行動にいちゃもんつけるんじゃないわよ!」
ロデールの母親は怒りに燃えていた。
「で、で、でも……、いきなり……鼻、くそ……」
「可愛いロデールの鼻くそだからましでしょ!!」
「え、ええ、え……ええー……」
「貴女はロデールの婚約者なのよ? 分かっているの? 婚約者なんだから、婚約してあげているのだから、そのくらい我慢しなさいよ! 些細なことじゃないの!」
めちゃくちゃな理論過ぎる……。
鼻くそをつけられるなんて誰だって嫌だろう……。
だがその翌日、ロデールと両親は馬車の事故に遭いこの世を去った。
そして婚約は自動的に破棄となったのだった。
だが今も思う。
あの行動は何だったのか?
そして母はなぜ怒ったのか?
……そんな風に。
だって、いくらなんでもおかしいだろう、他者に鼻くそを擦り付けるなんて。
普通はそんなことはしない。
子どもならまだしも。
なのに、それを嫌がっただけでこちらがあそこまで怒られるだなんて、もう到底理解できる範囲の話ではない。
45.
私はまた生まれ変わった。
今度は資産も歴史もある良き家の長女であった。
名は、フローリニアという。
両親や親戚には大層可愛がられていた。
だがその先に幸せな未来が待っているわけではなかった。
……やはり私はまた婚約破棄とざまぁのループへと巻き込まれてゆくのだ。
◆
フローリニアの一人目の婚約者である彼はルーベズルトンという五つ年上の男性であった。
彼はお金持ちだ。
経済的な意味では彼との縁はそれなりに良い縁だった。
だが彼は非常に女好き。ことあるごとに自室に女を連れ込むような人であり、また、そのことを悪いこととはまったくもって思っていないような人。しかもかなり深い関係にまで発展している関係も多いからさらにどうしようもない。
そんな彼の悪行には一応まだ黙っておいていたのだが。
「フローリニア、君との婚約は破棄だ」
ある日ついにそう言われてしまうことに。
「君なんかよりずっと条件の良い女性が見つかった、だから、関係はここまでとしようじゃないか。……さよなら」
こうして私は捨てられたのだった。
だが、その時言っていた女性と結婚した彼は、ある日突然行方不明に。
そして後に彼の家の近くに位置する山の奥にて内臓を抜かれた状態で発見されたそうだ。
もちろん彼は発見時既に亡き人となっていたらしい。
46.
ルーベズルトンとの婚約が破棄となって間もなく、私は母親の姉の紹介で一人の男性と顔合わせをすることとなった。
正直、あまり乗り気ではなかった。
しかし、私が話を聞いた時には既に決められてしまっていたため抵抗することなどできはしなかったしそんなことをする気力もなかったので、一応そのまま参加しておくことにした。
そんな形で出会った男性ロクノエスは私のことを気に入ってくれ、婚約を希望してくれた。
そうして私は彼と婚約することとなる。
婚約破棄経験があると知りながらも彼は私を選んでくれたのだった。
……しかしその関係さえも順調には進まず。
「ごめん、婚約破棄する」
「え……」
「やっぱり嫌になったんだ。気が変わった。だから……ごめん、さようなら」
彼はそれらしい理由を言うこともしないまま別れを告げてきたのだった。
そんなロクノエスだが、婚約破棄後間もなく落命した。
というのも、友人がふざけて贈ってくれたキノコを食べられるものと思い込んで食べたために体調を崩しそのまま帰らぬ人となってしまったそうなのだ。
キノコを食べて死亡、とは……なかなかパンチのある、恐ろしい最期である。
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