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8~11
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8.
婚約が破棄になったという情報が流れた途端、複数人から婚約希望が入ってきた。
そしてその中から親によって選ばれたのが実家は大金持ちで自身も実業家である青年であった。
最初、彼は、私をやたらとちやほやしてくれた。
しかし婚約してから少しすると急激に接し方が冷ややかなものになって。
「あんた、おもんないわ。婚約、破棄するわ」
やがてそんなことを告げられてしまった。
前回より可愛らしい容姿で生まれた気もするのだが……それでもやはり私には幸せな結婚はやって来ない。
「じゃねー。ばいばーい」
彼はあっさりと私を捨てたのだった。
だがその話を聞いて怒った父が「あいつの事業を駄目にしてやる!」と言ってそれを行動に移し、その結果、彼の事業は驚くほどの勢いで失速してゆくこととなった。
で、やがて彼は一文無しに。
今や彼の手もとにあるのは借金と絶望のみだ。
彼はこれからどうやって生きてゆくつもりだろう? ……いや、べつにそんなことはどうでもいい。彼のこれからなんて、私には何の関係もない。ただ少し、ふと、気になっただけである。
9.
実業家の彼との婚約が破棄になったので、前に婚約希望を出してくれていた中の他の人と顔を合わせることになった。
一度会った際には話が弾んだ。
なので婚約することとなった。
「フォリアナさん、すごく可愛いね!」
彼は会うたびそんなことを言ってくれていたのだけれど……実は彼はそういうことを複数の女性に対して同時に行っていた。
「騙したのですね」
「え? 騙す? いやいや違うよ! 俺はほんとのこと言ってるだけ!」
「でも同時に複数の女性にそういうことを仰っていたのですよね?」
「そうだよ? けどそれはそう思ったから言ってるだけ。若い娘さんには分からないかな? 俺はただ自分の心に素直なだけ!」
二人の主張が交わることはなく。
「ま、もういいや。そんなこと言われたら面倒臭いよ。……婚約、破棄するね」
その後彼は手を出していた女性たちのうちの一人と揉め、ある時夜道でその女性が雇った男に刃物で刺されて亡くなった。
殺されたこと、それ自体は気の毒ではあるが。
ただ、彼が人の心を弄んできていたことは事実であり、ある意味天罰が下ったとも言えるのかもしれない。
10.
町内会で知り合った二つ年上の青年と婚約したのだが……。
「愛してるよ」
「うっそぉ~ん! うふふぅ、いやぁ~ん! ありがとぉ~ん!」
ある夜、彼の家へちょっとした用事で行ったところ、まさかの浮気が発覚してしまった。
彼は比較的硬派な印象の人物だった。だから浮気なんていうことは想定していなくて。だからこそかなり驚いた。まさか彼が、と。一瞬脳が完全に停止してしまったほどであった。
気の利いたことを言えずにいると。
「貴女が婚約者さんですかぁ~?」
浮気相手の女が話しかけてくる。
「彼、本当に愛しているの、貴女じゃないんですよぉ~? あたしなんです。彼ったら、あたしのこと大好きでぇ~。うふふぅ、こっちが困ってるくらいなんです。彼ってぇ、情熱的な男性ですよねぇ~」
甘ったるい話し方が不快感を掻き立てる。
「ま、そういうことなのでぇ、貴女は消えてくださぁ~い」
「消えて? どういうことですか」
「まだ分からないの? 馬鹿ね。……さっさと婚約者の座から降りろってことだよ」
「え」
「彼にはあんたみたいなのは相応しくねーってことだよ」
こうして私はほぼ強制的に婚約破棄させられてしまったのだった。
だがその日から数日が経って、あの女は死亡した。
何でも王都の一番太い道路のところで事故に遭ってこの世を去ることとなってしまったのだそうだ。
また、婚約者であった彼はというと、自身の行動が親にばれてしまったことで大変なことになったらしい。
彼の親は厳しい人たちなのだそうで。
婚約者がいるのに浮気なんかして、と激怒され、その日から毎日一日百回尻を棒で叩かれることとなってしまったそうだ。
11.
思わぬ形で知り合った猫目族の子孫である青年ネコメネートルと婚約者したのだが、一緒に暮らすようになると毎日ごみを贈られるようになって辛い。
そんなある日、彼は、急に引っ掻こうとしてきて。
何事かと焦ったのだが……話を聞いてみたところ、贈り物を喜んでくれないから嫌いになってきた、とのことであった。
「ダカラ婚約破棄シタイ、モウ一緒ニイタクナイ、傷ツクカラ」
彼はそんなことをはっきりと述べた。
「そう……分かったわ。引っ掻こうとするほどだものね、よほど私のことが嫌いになったのでしょう。伝わるわ」
「アンタ最低ナ女ダッタ、ダッテ、オイラカラノ贈リ物ヲ無視シタリ雑ナ受ケ取リ方シタリデリスペクトガ皆無」
「ごめんなさいね」
「イヤデモモウイイ。ダッテオイラタチコレデモウ他人。他人ナラバアレコレ言ウツモリハナイ、ダッテ無関係ダカラ」
こうして婚約はまたしても破棄となってしまったのだが、その数日後にネコメネートルは猫目族の毛皮を狙う狩人に狩られこの世を去ることとなった。
生まれ変わってもなおこの婚約破棄とざまぁのループからは逃れられない。
……いつの日か終わりが来るのだろうか?
もしこのフォリアナの人生が終わっても、きっとまた、次の人生で同じようなことを繰り返すことになるのだろう。
でも、そうなったなら、もしかして永久にループする?
婚約が破棄になったという情報が流れた途端、複数人から婚約希望が入ってきた。
そしてその中から親によって選ばれたのが実家は大金持ちで自身も実業家である青年であった。
最初、彼は、私をやたらとちやほやしてくれた。
しかし婚約してから少しすると急激に接し方が冷ややかなものになって。
「あんた、おもんないわ。婚約、破棄するわ」
やがてそんなことを告げられてしまった。
前回より可愛らしい容姿で生まれた気もするのだが……それでもやはり私には幸せな結婚はやって来ない。
「じゃねー。ばいばーい」
彼はあっさりと私を捨てたのだった。
だがその話を聞いて怒った父が「あいつの事業を駄目にしてやる!」と言ってそれを行動に移し、その結果、彼の事業は驚くほどの勢いで失速してゆくこととなった。
で、やがて彼は一文無しに。
今や彼の手もとにあるのは借金と絶望のみだ。
彼はこれからどうやって生きてゆくつもりだろう? ……いや、べつにそんなことはどうでもいい。彼のこれからなんて、私には何の関係もない。ただ少し、ふと、気になっただけである。
9.
実業家の彼との婚約が破棄になったので、前に婚約希望を出してくれていた中の他の人と顔を合わせることになった。
一度会った際には話が弾んだ。
なので婚約することとなった。
「フォリアナさん、すごく可愛いね!」
彼は会うたびそんなことを言ってくれていたのだけれど……実は彼はそういうことを複数の女性に対して同時に行っていた。
「騙したのですね」
「え? 騙す? いやいや違うよ! 俺はほんとのこと言ってるだけ!」
「でも同時に複数の女性にそういうことを仰っていたのですよね?」
「そうだよ? けどそれはそう思ったから言ってるだけ。若い娘さんには分からないかな? 俺はただ自分の心に素直なだけ!」
二人の主張が交わることはなく。
「ま、もういいや。そんなこと言われたら面倒臭いよ。……婚約、破棄するね」
その後彼は手を出していた女性たちのうちの一人と揉め、ある時夜道でその女性が雇った男に刃物で刺されて亡くなった。
殺されたこと、それ自体は気の毒ではあるが。
ただ、彼が人の心を弄んできていたことは事実であり、ある意味天罰が下ったとも言えるのかもしれない。
10.
町内会で知り合った二つ年上の青年と婚約したのだが……。
「愛してるよ」
「うっそぉ~ん! うふふぅ、いやぁ~ん! ありがとぉ~ん!」
ある夜、彼の家へちょっとした用事で行ったところ、まさかの浮気が発覚してしまった。
彼は比較的硬派な印象の人物だった。だから浮気なんていうことは想定していなくて。だからこそかなり驚いた。まさか彼が、と。一瞬脳が完全に停止してしまったほどであった。
気の利いたことを言えずにいると。
「貴女が婚約者さんですかぁ~?」
浮気相手の女が話しかけてくる。
「彼、本当に愛しているの、貴女じゃないんですよぉ~? あたしなんです。彼ったら、あたしのこと大好きでぇ~。うふふぅ、こっちが困ってるくらいなんです。彼ってぇ、情熱的な男性ですよねぇ~」
甘ったるい話し方が不快感を掻き立てる。
「ま、そういうことなのでぇ、貴女は消えてくださぁ~い」
「消えて? どういうことですか」
「まだ分からないの? 馬鹿ね。……さっさと婚約者の座から降りろってことだよ」
「え」
「彼にはあんたみたいなのは相応しくねーってことだよ」
こうして私はほぼ強制的に婚約破棄させられてしまったのだった。
だがその日から数日が経って、あの女は死亡した。
何でも王都の一番太い道路のところで事故に遭ってこの世を去ることとなってしまったのだそうだ。
また、婚約者であった彼はというと、自身の行動が親にばれてしまったことで大変なことになったらしい。
彼の親は厳しい人たちなのだそうで。
婚約者がいるのに浮気なんかして、と激怒され、その日から毎日一日百回尻を棒で叩かれることとなってしまったそうだ。
11.
思わぬ形で知り合った猫目族の子孫である青年ネコメネートルと婚約者したのだが、一緒に暮らすようになると毎日ごみを贈られるようになって辛い。
そんなある日、彼は、急に引っ掻こうとしてきて。
何事かと焦ったのだが……話を聞いてみたところ、贈り物を喜んでくれないから嫌いになってきた、とのことであった。
「ダカラ婚約破棄シタイ、モウ一緒ニイタクナイ、傷ツクカラ」
彼はそんなことをはっきりと述べた。
「そう……分かったわ。引っ掻こうとするほどだものね、よほど私のことが嫌いになったのでしょう。伝わるわ」
「アンタ最低ナ女ダッタ、ダッテ、オイラカラノ贈リ物ヲ無視シタリ雑ナ受ケ取リ方シタリデリスペクトガ皆無」
「ごめんなさいね」
「イヤデモモウイイ。ダッテオイラタチコレデモウ他人。他人ナラバアレコレ言ウツモリハナイ、ダッテ無関係ダカラ」
こうして婚約はまたしても破棄となってしまったのだが、その数日後にネコメネートルは猫目族の毛皮を狙う狩人に狩られこの世を去ることとなった。
生まれ変わってもなおこの婚約破棄とざまぁのループからは逃れられない。
……いつの日か終わりが来るのだろうか?
もしこのフォリアナの人生が終わっても、きっとまた、次の人生で同じようなことを繰り返すことになるのだろう。
でも、そうなったなら、もしかして永久にループする?
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