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2話「小さな願いさえ叶わない」

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 彼の隣で生きていたかった。

 多くは望まない。
 ただ、彼と二人隣り合っていたかった。

 でも無理そうだ。

 彼の心はガーベラただ一人だけに向いている。私のことなど、今の彼には一切見えていない。いや、見えていないどころか、私という存在を鬱陶しく思っているのだろう。

 最初は仲良くなれそうな雰囲気だっただけに悲しい。

「そういうことなのでな! さらば!」
「はい、さようなら」

 細やかな望みさえ叶わず。

 私は城から去ることになった。


 ◆


 城を出たその日、私は、道端で倒れている一人の男性を見かける。

 彼は家のない人にしては良い服を着ていた。
 いつも外にいる類の者とは思えない。
 宿がとれなかった旅人か何かだろうか。

 私は彼を近くの治安維持組織の基地にまで連れていった。

「倒れていた方です」
「あぁはい。おっけー。じゃ、預かりますー」

 小規模な基地の受付にて倒れていた男性を渡し、その日は付近の宿に宿泊した。


 ――翌日。

「昨日はありがとうございました!」

 あの基地の受付をしていた男性が宿にやって来た。

 わざわざ来るなんて何事かと思ったのだが。

「あの方、隣国の王子だったそうでー、届けていただけて助かりました! 今日はそのお礼をと思ってー」

 倒れていたあの男性は偉い人だったようだ。
 放置しなくて良かった、今さらながら強くそう思った。

「あ、そうだ、今日の晩ちょっといいですか?」
「なぜですか」
「実はですねー、ちょっと、話したいことがありましてー」

 急にこんなことを言い出すなんて怪しい。
 治安維持組織の人間なら不審者ではないだろうとは思うのだが。

「……分かりました」
「じゃ、夜にまた、ここに来まっす!」
「ありがとうございます」

 彼は別れしなにオッズと名乗った。


 ◆


 オッズは私がルイカスに捨てられたことを知っていた。
 で、それを踏まえて、『その力を国を変えるために使わせてほしい』という話を振ってきた。

「あの……急過ぎて意味が分からないのですが……」
「王家には闇が多過ぎます。特に金に関しては酷い。ということで、我々は、あの王家を倒して国を良くしたいと考えています」

 日頃ならそんな怪しげな話には乗らなかっただろう。
 だがその時の私はルイカスに対して複雑な感情を抱いていて。

「分かりました。では、協力します」

 だからだろうか、そんな風に答えてしまった。

 そしてそこから私の第二の人生が始まる。

 根っこからひっくり返す。
 王族の時代は終わり。

 国を変える。
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