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学園時代、私には、将来を誓い合った相手がいたのですが……。~良き理解者に巡り会えて良かったです~
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学園時代、私には、将来を誓い合った相手がいた。
彼の名はオッツフィーダー。
多くの生徒の憧れの人であり、そして、彼こそが私の婚約者であった。
「見て! オッツフィーダー様よ!」
「ああ、今日も煌めいていらっしゃるわ~」
「素晴らしい殿方ね」
「んもぉ、よだれが出ちゃぁ~う」
オッツフィーダーは廊下を歩いているだけでも女子生徒らの目と心を奪ってしまうほどの人気者であった。
家柄も良い、勉学も優秀、運動もそこそこできる――それらに加えて、凛々しい顔立ちがその魅力をより一層高めていたのだろう。
そんな彼と結婚する予定の私は時に悪口を言われることもあった。ひそひそ話を敢えて目の前でされたり。しかしそれでも彼が寄り添ってくれていたから耐えられた。彼という味方がいるから大丈夫、私は悪意に晒されたとしてもそう思えていたのだ。
だが、ある時、学園に転校生がやって来て。
「貴女がオッツフィーダー様の婚約者さんですかぁ? うわぁ~、だっさぁ~い、意外ですぅ。つり合ってませんねぇ」
リリーサと名乗る彼女は最初からオッツフィーダーの隣を狙っているようだった。
それで、私に対して露骨に敵意を向けてきていた。
でも最初は平気だった。
嫌がらせをされることには慣れているから。
そういう人がまた一人増えただけ、そう思っていた。
しかしある時。
「悪いが、君との婚約は破棄とする!」
リリーサを連れたオッツフィーダーからそんなことを宣言されて。
「え……」
「俺は君を選ばない。君ではなく彼女を、リリーサを、生涯の伴侶とすることに決めた」
私は絶望に突き落とされてしまった。
それから私は体調不良に見舞われるようになり、学園へ通うことさえままならない状態になってしまったのであった。
◆
オッツフィーダーとリリーサはあの後正式に婚約したそうだが、卒業旅行にて乗り物の事故に巻き込まれて死亡した。
綺麗な亡骸すら遺らない、残酷な最期だったそうだ。
私はその日も体調不良だった。それで旅行は休んで、家にいた。だがそれがある意味幸運だったのかもしれない。おかげで私は死なずに済んだし、彼らが死ぬところを見てしまうことにもならずに済んだ。
その後何とか卒業できた私は、家で療養しつつ、花をいけたりお茶を飲んだりとのんびり生活するようになり――やがて、父親の紹介で出会った青年と愛し合い結婚した。
彼は私の体調のことに関しても理解を示してくれている人だ。そのため無理をする必要はなかった、否、今もない。できる範囲のことをしていればいい、彼はいつもそう言って気遣ってくれる。その思いやりに触れているからこそ、今も強く彼のことを想い続けることができている。
オッツフィーダーのことはもういい。
だって過去のことだから。
それに、彼はもう生きていないのだ。今さら生きていない人に関してあれこれ考えたところで無駄な時間を消費することになるだけ。
だから私は今目の前にいる人のために、夫のために、生きてゆく。
◆終わり◆
彼の名はオッツフィーダー。
多くの生徒の憧れの人であり、そして、彼こそが私の婚約者であった。
「見て! オッツフィーダー様よ!」
「ああ、今日も煌めいていらっしゃるわ~」
「素晴らしい殿方ね」
「んもぉ、よだれが出ちゃぁ~う」
オッツフィーダーは廊下を歩いているだけでも女子生徒らの目と心を奪ってしまうほどの人気者であった。
家柄も良い、勉学も優秀、運動もそこそこできる――それらに加えて、凛々しい顔立ちがその魅力をより一層高めていたのだろう。
そんな彼と結婚する予定の私は時に悪口を言われることもあった。ひそひそ話を敢えて目の前でされたり。しかしそれでも彼が寄り添ってくれていたから耐えられた。彼という味方がいるから大丈夫、私は悪意に晒されたとしてもそう思えていたのだ。
だが、ある時、学園に転校生がやって来て。
「貴女がオッツフィーダー様の婚約者さんですかぁ? うわぁ~、だっさぁ~い、意外ですぅ。つり合ってませんねぇ」
リリーサと名乗る彼女は最初からオッツフィーダーの隣を狙っているようだった。
それで、私に対して露骨に敵意を向けてきていた。
でも最初は平気だった。
嫌がらせをされることには慣れているから。
そういう人がまた一人増えただけ、そう思っていた。
しかしある時。
「悪いが、君との婚約は破棄とする!」
リリーサを連れたオッツフィーダーからそんなことを宣言されて。
「え……」
「俺は君を選ばない。君ではなく彼女を、リリーサを、生涯の伴侶とすることに決めた」
私は絶望に突き落とされてしまった。
それから私は体調不良に見舞われるようになり、学園へ通うことさえままならない状態になってしまったのであった。
◆
オッツフィーダーとリリーサはあの後正式に婚約したそうだが、卒業旅行にて乗り物の事故に巻き込まれて死亡した。
綺麗な亡骸すら遺らない、残酷な最期だったそうだ。
私はその日も体調不良だった。それで旅行は休んで、家にいた。だがそれがある意味幸運だったのかもしれない。おかげで私は死なずに済んだし、彼らが死ぬところを見てしまうことにもならずに済んだ。
その後何とか卒業できた私は、家で療養しつつ、花をいけたりお茶を飲んだりとのんびり生活するようになり――やがて、父親の紹介で出会った青年と愛し合い結婚した。
彼は私の体調のことに関しても理解を示してくれている人だ。そのため無理をする必要はなかった、否、今もない。できる範囲のことをしていればいい、彼はいつもそう言って気遣ってくれる。その思いやりに触れているからこそ、今も強く彼のことを想い続けることができている。
オッツフィーダーのことはもういい。
だって過去のことだから。
それに、彼はもう生きていないのだ。今さら生きていない人に関してあれこれ考えたところで無駄な時間を消費することになるだけ。
だから私は今目の前にいる人のために、夫のために、生きてゆく。
◆終わり◆
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