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王子なのにそんな勝手な婚約破棄なんてして大丈夫なのですか? 後でややこしいことになっても知りませんよ?
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「お前のようなクズ女と生きていく気はない! よって、ローザリア……貴様との婚約、本日をもって破棄とする!!」
婚約者で王子でもある彼ルックオースは城内の広間にて高らかに宣言する。
「婚約、破棄……?」
突然のことに声が震えてしまう。
情けないな、なんて思って自分を嫌いになりそうになったけれど、こんな急なんだもの仕方ないわ、と自分に言い聞かせて心を支える。
「ああそうだ。お前とはもうやっていけん。ローザリア、お前は、とことんつまらん女だからな。俺はもっと俺に相応しい女性を妻として生きてゆきたいのだ。そもそも俺たちつり合っていないだろう? 俺は素晴らしい王子、お前はただの貴族令嬢」
ルックオースは容赦なく言葉を並べた。
「陛下には相談なさったのですか?」
「知るか! あんなおっさんどうでもいい!」
「えええ……」
「俺の人生は俺が決めるんだ!」
一般人であればそれで問題ないかもしれないが、王子という特別な位にある人がそんな感じで良いものなのだろうか。
「それに、もう次の相手も決めてるんだよ」
「そうなのですか?」
「ああ! この際紹介しようじゃないか。――ほらネーナ! おいで!」
すると扉が開いて一人のこじんまりとした女性が入ってくる。
「見たか、ローザリア。とっても可愛らしい子だろう? 彼女はネーナといって、侍女だったのだが、俺は彼女に惚れてしまったのだ」
「侍女……?」
「おいこら見下しただろ今!!」
「いえ、少し、驚いてしまっただけです」
「こら! 可愛いネーナを見下すな! どうしてどいつもこいつもそんななんだ! ネーナはなぁ! 侍女だけどなぁ! お前なんかよりずーっと可愛くて、謙虚で奉仕の心を持ってて、魅力的なんだよ!」
いやいやそういう話ではない。
何も見下しているのではないのだ。
ただ、侍女と王子の結婚というのはあまり聞かない話。
だから驚いた。
ただそれだけのことである。
「ローザリア、見たか! 俺はモテモテなんだよ! お前とは違う――こんな可愛い子からでも愛されるんだ!」
こうして私は切り捨てられたのであった。
◆
あの後ルックオースはネーナと勝手に婚約しそれを発表。しかしその件が父親の耳に入ったことで父親を激怒させてしまい、一時的に地下牢送りにされたそうだ。ただそれでもルックオースは反省の色を見せなかったそうで。その後彼は王子という位をはく奪され、城からも追い出されることとなったらしい。
それでも、と、ルックオースは考えていたようだが。
ネーナは王子でなくなったルックオースに興味などなくて。ふらりとどこかへ行って、彼の前から消えてしまったそうだ。そう、つまり、ルックオースが彼女に愛されていたのは王子だったからだったのである。
その現実に気づいたルックオースは絶望し、自らこの世を去った。
◆
「おはよう、良い朝だね」
「ええ。とっても素敵な朝。……貴方がいるからかしら」
あれから早いもので数年が経った。
私には夫がいる。
誰よりも愛している人、パートナーが。
「ローザリアってちょっと、たまに、口説くようなこと言い出すよね」
「変かしら? 本心なのだけれど」
「じゃあそういう人なんだね、きっと」
「嫌だったらやめるよう気をつけるわ」
「いやいや、べつにそんなことを言うつもりじゃなかったんだ。やめなくていいよ、むしろ嬉しいし。それに、そういうところも含めてローザリアだって思ってるからさ」
私は彼と共に生きてゆく。
強い覚悟をもって日々を歩んでいる。
◆終わり◆
婚約者で王子でもある彼ルックオースは城内の広間にて高らかに宣言する。
「婚約、破棄……?」
突然のことに声が震えてしまう。
情けないな、なんて思って自分を嫌いになりそうになったけれど、こんな急なんだもの仕方ないわ、と自分に言い聞かせて心を支える。
「ああそうだ。お前とはもうやっていけん。ローザリア、お前は、とことんつまらん女だからな。俺はもっと俺に相応しい女性を妻として生きてゆきたいのだ。そもそも俺たちつり合っていないだろう? 俺は素晴らしい王子、お前はただの貴族令嬢」
ルックオースは容赦なく言葉を並べた。
「陛下には相談なさったのですか?」
「知るか! あんなおっさんどうでもいい!」
「えええ……」
「俺の人生は俺が決めるんだ!」
一般人であればそれで問題ないかもしれないが、王子という特別な位にある人がそんな感じで良いものなのだろうか。
「それに、もう次の相手も決めてるんだよ」
「そうなのですか?」
「ああ! この際紹介しようじゃないか。――ほらネーナ! おいで!」
すると扉が開いて一人のこじんまりとした女性が入ってくる。
「見たか、ローザリア。とっても可愛らしい子だろう? 彼女はネーナといって、侍女だったのだが、俺は彼女に惚れてしまったのだ」
「侍女……?」
「おいこら見下しただろ今!!」
「いえ、少し、驚いてしまっただけです」
「こら! 可愛いネーナを見下すな! どうしてどいつもこいつもそんななんだ! ネーナはなぁ! 侍女だけどなぁ! お前なんかよりずーっと可愛くて、謙虚で奉仕の心を持ってて、魅力的なんだよ!」
いやいやそういう話ではない。
何も見下しているのではないのだ。
ただ、侍女と王子の結婚というのはあまり聞かない話。
だから驚いた。
ただそれだけのことである。
「ローザリア、見たか! 俺はモテモテなんだよ! お前とは違う――こんな可愛い子からでも愛されるんだ!」
こうして私は切り捨てられたのであった。
◆
あの後ルックオースはネーナと勝手に婚約しそれを発表。しかしその件が父親の耳に入ったことで父親を激怒させてしまい、一時的に地下牢送りにされたそうだ。ただそれでもルックオースは反省の色を見せなかったそうで。その後彼は王子という位をはく奪され、城からも追い出されることとなったらしい。
それでも、と、ルックオースは考えていたようだが。
ネーナは王子でなくなったルックオースに興味などなくて。ふらりとどこかへ行って、彼の前から消えてしまったそうだ。そう、つまり、ルックオースが彼女に愛されていたのは王子だったからだったのである。
その現実に気づいたルックオースは絶望し、自らこの世を去った。
◆
「おはよう、良い朝だね」
「ええ。とっても素敵な朝。……貴方がいるからかしら」
あれから早いもので数年が経った。
私には夫がいる。
誰よりも愛している人、パートナーが。
「ローザリアってちょっと、たまに、口説くようなこと言い出すよね」
「変かしら? 本心なのだけれど」
「じゃあそういう人なんだね、きっと」
「嫌だったらやめるよう気をつけるわ」
「いやいや、べつにそんなことを言うつもりじゃなかったんだ。やめなくていいよ、むしろ嬉しいし。それに、そういうところも含めてローザリアだって思ってるからさ」
私は彼と共に生きてゆく。
強い覚悟をもって日々を歩んでいる。
◆終わり◆
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