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晩餐会で婚約破棄宣言、そしてそこからの悪口大会!? ……あの、貴方、皆さんにちょっと引かれていますけど……気づいています?
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「エンフォーニカ・フォン・リース! 貴様との婚約は、本日をもって破棄とする!」
婚約者カインはある日の晩餐会にて突然そんなことを宣言してきた。
また、彼はそこから、私の悪いところを言葉にして大量に並べ始める。次から次へと出てくる心ない言葉。それはどこまでも続いてゆき、終わりなどない。
「何あれ、ひど……」
「可哀想に」
「あんなに言わなくてもいいのに……。ちょっとさぁ、暴言とか最低よね。しかも人前でよ? あり得ないわ」
聞こえてくる外野からの声、そこには同情も多く含まれていた。
それに救われはしたけれど。
同時に申し訳なさも感じた。
他者へのものであったとしても、暴言など誰も聞きたくはないものだろう。
「ちょっと……ねぇ。酷いわよねぇ、人前で。カインくんだっけ? 彼、こんな酷い人だとは思わなかったわぁ」
「ほんとそれ」
「あり得ませんわね、ご令嬢に対しあのような言葉を吐くなど」
「ほんと、ひど」
だがカインはもう止まらなかった。
暴走し始めた彼の口は心を壊すような言葉を発し並べ続ける。
そしてやがて、私は、気を失ってしまったのだった。
◆
次に目覚めた時、季節が移り変わっていた。
あの晩餐会は春だった。
しかし目覚めた時には既に夏が訪れていたのだ。
そして私は母から聞くこととなる。
カインがもうこの世にいないことを。
そして自ら死んだのだということを。
カインはあの時私に対して批判的な暴言を吐き続けたが、その後、好きだった女性から「あんな酷い人とは思わなかった、最低ね」と言われてしまい、結婚を申し込むもあっさり断られてしまったそうだ。
それで絶望し、死ぬことを選んだのだとか。
結局彼は彼自身の行いによって身を滅ぼすこととなったのである。
まぁでも他人を傷つけたのだからそのくらいの報いは受けるべきだろう。
あそこまで酷いことをしたカインが順調な人生を歩めるというのなら、この世界はあまりにも理不尽過ぎる。
◆
その年の冬、私は、心から愛せる人と婚約した。
「エンフォーニカ、今日も可愛いな。その青いワンピース、とっても似合ってるぞ」
「ありがと」
「ま、あんたは何着てても最高だけどよ」
「いつも褒めてくれるわね」
「まぁな。似合ってるってのも最高ってのも事実だからな、そりゃまぁ普通にばんばん褒めるわ」
一緒にいられる時間はとても心地よくて楽しい。
生きる幸福とはこういうものなのだと教えてもらえているかのよう。
「褒めたい時には褒める、それが俺の生き方なんだ。自分で言うのも何だが、俺はそれなりに正直者なんだよ」
彼は元々狩人であった。
でもとても心優しい人。
理不尽に他者を傷つけるようなことはしない。
だからこそ生涯のパートナーに相応しい。
◆終わり◆
婚約者カインはある日の晩餐会にて突然そんなことを宣言してきた。
また、彼はそこから、私の悪いところを言葉にして大量に並べ始める。次から次へと出てくる心ない言葉。それはどこまでも続いてゆき、終わりなどない。
「何あれ、ひど……」
「可哀想に」
「あんなに言わなくてもいいのに……。ちょっとさぁ、暴言とか最低よね。しかも人前でよ? あり得ないわ」
聞こえてくる外野からの声、そこには同情も多く含まれていた。
それに救われはしたけれど。
同時に申し訳なさも感じた。
他者へのものであったとしても、暴言など誰も聞きたくはないものだろう。
「ちょっと……ねぇ。酷いわよねぇ、人前で。カインくんだっけ? 彼、こんな酷い人だとは思わなかったわぁ」
「ほんとそれ」
「あり得ませんわね、ご令嬢に対しあのような言葉を吐くなど」
「ほんと、ひど」
だがカインはもう止まらなかった。
暴走し始めた彼の口は心を壊すような言葉を発し並べ続ける。
そしてやがて、私は、気を失ってしまったのだった。
◆
次に目覚めた時、季節が移り変わっていた。
あの晩餐会は春だった。
しかし目覚めた時には既に夏が訪れていたのだ。
そして私は母から聞くこととなる。
カインがもうこの世にいないことを。
そして自ら死んだのだということを。
カインはあの時私に対して批判的な暴言を吐き続けたが、その後、好きだった女性から「あんな酷い人とは思わなかった、最低ね」と言われてしまい、結婚を申し込むもあっさり断られてしまったそうだ。
それで絶望し、死ぬことを選んだのだとか。
結局彼は彼自身の行いによって身を滅ぼすこととなったのである。
まぁでも他人を傷つけたのだからそのくらいの報いは受けるべきだろう。
あそこまで酷いことをしたカインが順調な人生を歩めるというのなら、この世界はあまりにも理不尽過ぎる。
◆
その年の冬、私は、心から愛せる人と婚約した。
「エンフォーニカ、今日も可愛いな。その青いワンピース、とっても似合ってるぞ」
「ありがと」
「ま、あんたは何着てても最高だけどよ」
「いつも褒めてくれるわね」
「まぁな。似合ってるってのも最高ってのも事実だからな、そりゃまぁ普通にばんばん褒めるわ」
一緒にいられる時間はとても心地よくて楽しい。
生きる幸福とはこういうものなのだと教えてもらえているかのよう。
「褒めたい時には褒める、それが俺の生き方なんだ。自分で言うのも何だが、俺はそれなりに正直者なんだよ」
彼は元々狩人であった。
でもとても心優しい人。
理不尽に他者を傷つけるようなことはしない。
だからこそ生涯のパートナーに相応しい。
◆終わり◆
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