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少しお金持ちな家の出の青年と婚約したからと姉である私を見下し威張り始めた妹がいましたが、精神崩壊に追い込まれたようです。
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少しお金持ちな家の出の青年アルクと婚約したことで自分が偉くなったと錯覚したのか最近急激に性格が悪くなった妹は。
「お姉さまって、ほーんと、ダッサイですわよね~。そんなだから殿方にちっとも愛されないんですのよ? もう少し綺麗になさればいいのに……うふ、ま、そんなダサさじゃ綺麗になんて無理でしょうけれど。んふふ、ま、いいじゃないですの? 最終的にはお姉さまにお似合いな、ダッサイ売れ残りの殿方とくっつけば~」
以前からは想像できないくらいの嫌みをたびたび吐いてくる。
「ちょっと……それは言い過ぎじゃない? ちょっと酷いわよ?」
耐え切れず、そう言えば。
「酷い、ですって? あーっはっはははは!」
高らかに笑われてしまう。
「それは馬鹿げた指摘ですわ。んふふ、おかしな話ですわよ? だってわたし、本当のことしか言っていないではないですの!」
「だとしても、よ。言われた側の気持ちを少しは考えるべきよ」
「あら? 事実でしてよ? 本当のことを言って何が悪いんですの? お姉さまがダッサイことは事実ではないですの」
私は他人にも心があるのだということを知ってほしかった。
でも私が言うことなんて彼女からすればきっと負け犬の遠吠えくらいのものでしかないのだろう。
「でも……」
「図星だからショックを受けていらっしゃるのね? ああ、お可哀想に。でもお姉さま、真実は誰かが告げなくてはならないというものですのよ。そうでなくては気づけないでしょう? んふ、お分かりいただけたかしら」
どうやら今の妹には人を思いやる心なんてものは存在しないようだ。
「……分かった、もういいわ」
「良かった、分かっていただけましたのね! うふふ! では、姉妹でも女としての階級が違いますので、さようなら」
――見返してやる。
私の心には決意が芽生えていた。
それから私は綺麗にした。とことん。これまでそういうことにはあまり興味がなかった、着飾ることには。でも見返すためであれば本気で取り組む。何かに本気で取り組むということは得意な部類だからきっとできる。
「よし、こんなものね」
その日、私は本気で着飾り、パーティーに参加した。
――そしてその結果領主の男性の心を射止めることに成功した。
「惚れました、貴女はとても美しい。それに――ただ飾って美しくしているだけではない、中からにじみ出るような美しさがあります。恐らくそれは貴女の生きざまが表れているのでしょう。とても素晴らしいと思います」
私を見る彼の瞳は、あの夜空に浮かぶ星のようだった。
深く、強く、煌めいている。
「褒めていただけ光栄です、ありがとうございます」
「どうか、僕と共に歩んではくださらないでしょうか」
異性からこんな目で見られたのは初めてだ。
「え……」
だからこそ戸惑いもあって。
「貴女と共に生きてみたい、そう思ったのです」
「生きて……って、本気ですか!? それは、えっと、いきなり過ぎませんか!?」
でも、私にでもできた、そう思う心もあって。
「そうですよね、すみません。……はは。馬鹿だな、貴女みたいな美しい方に僕なんかが相手にしてもらえるわけがないのに」
「い、いえ! そうではなくて、ですね! 貴方を否定しているわけではなくて」
私の心は今何とも言えない複数の感情に満たされている。
「こういったことは初めてで、戸惑っているのです」
「あ、ああ、そうでしたか。では、ええと……僕を嫌っていらっしゃるというわけではない、ということですね?」
妹を見返すためにした行動。
でもそれが我が人生を動かしてくれた。
「ええそうです」
「ああ、良かった……!」
私と彼を出会わせてくれたのは、ある意味、妹とも言える。
◆
あの後間もなく私は彼と結婚した。
一目惚れから始まった関係。
でも二人にはそれほど長い時間は必要なかった。
これからは夫婦としてきっと長い時間を共にするだろう。そこには苦労だってあると思う。人生を共にするなら、良いことばかりではないかもしれない。悪いことも良いことも含めて、そのすべてが人生だから。
でも彼が相手ならきっと大丈夫。
いつまでも思いやりを持って接し合って生きてゆける、今は確信がある。
手を取り合って一歩ずつ前へ進んでゆこう。
その決意、覚悟が、きっと私たちを明るい未来へと連れていってくれる。
ちなみに妹はというと、アルクに「わがまま過ぎるし生意気でウザい」と言われて婚約破棄された。また、見下していた姉が愛され居場所を得たことも重なり、彼女の精神は崩壊した。
妹は壊れ、今では、夜に奇声を発することしかできない。
まるで壊れてしまった人形のよう。
特に夜間の彼女の振る舞いは離れたところから見ているだけでも深い狂気を感じるほどだ。
だがそれが彼女への天罰なのだろう。
心ないことをしてきた。
人を傷つけてきた。
その報いを今まさに受けているのだと思う。
◆終わり◆
「お姉さまって、ほーんと、ダッサイですわよね~。そんなだから殿方にちっとも愛されないんですのよ? もう少し綺麗になさればいいのに……うふ、ま、そんなダサさじゃ綺麗になんて無理でしょうけれど。んふふ、ま、いいじゃないですの? 最終的にはお姉さまにお似合いな、ダッサイ売れ残りの殿方とくっつけば~」
以前からは想像できないくらいの嫌みをたびたび吐いてくる。
「ちょっと……それは言い過ぎじゃない? ちょっと酷いわよ?」
耐え切れず、そう言えば。
「酷い、ですって? あーっはっはははは!」
高らかに笑われてしまう。
「それは馬鹿げた指摘ですわ。んふふ、おかしな話ですわよ? だってわたし、本当のことしか言っていないではないですの!」
「だとしても、よ。言われた側の気持ちを少しは考えるべきよ」
「あら? 事実でしてよ? 本当のことを言って何が悪いんですの? お姉さまがダッサイことは事実ではないですの」
私は他人にも心があるのだということを知ってほしかった。
でも私が言うことなんて彼女からすればきっと負け犬の遠吠えくらいのものでしかないのだろう。
「でも……」
「図星だからショックを受けていらっしゃるのね? ああ、お可哀想に。でもお姉さま、真実は誰かが告げなくてはならないというものですのよ。そうでなくては気づけないでしょう? んふ、お分かりいただけたかしら」
どうやら今の妹には人を思いやる心なんてものは存在しないようだ。
「……分かった、もういいわ」
「良かった、分かっていただけましたのね! うふふ! では、姉妹でも女としての階級が違いますので、さようなら」
――見返してやる。
私の心には決意が芽生えていた。
それから私は綺麗にした。とことん。これまでそういうことにはあまり興味がなかった、着飾ることには。でも見返すためであれば本気で取り組む。何かに本気で取り組むということは得意な部類だからきっとできる。
「よし、こんなものね」
その日、私は本気で着飾り、パーティーに参加した。
――そしてその結果領主の男性の心を射止めることに成功した。
「惚れました、貴女はとても美しい。それに――ただ飾って美しくしているだけではない、中からにじみ出るような美しさがあります。恐らくそれは貴女の生きざまが表れているのでしょう。とても素晴らしいと思います」
私を見る彼の瞳は、あの夜空に浮かぶ星のようだった。
深く、強く、煌めいている。
「褒めていただけ光栄です、ありがとうございます」
「どうか、僕と共に歩んではくださらないでしょうか」
異性からこんな目で見られたのは初めてだ。
「え……」
だからこそ戸惑いもあって。
「貴女と共に生きてみたい、そう思ったのです」
「生きて……って、本気ですか!? それは、えっと、いきなり過ぎませんか!?」
でも、私にでもできた、そう思う心もあって。
「そうですよね、すみません。……はは。馬鹿だな、貴女みたいな美しい方に僕なんかが相手にしてもらえるわけがないのに」
「い、いえ! そうではなくて、ですね! 貴方を否定しているわけではなくて」
私の心は今何とも言えない複数の感情に満たされている。
「こういったことは初めてで、戸惑っているのです」
「あ、ああ、そうでしたか。では、ええと……僕を嫌っていらっしゃるというわけではない、ということですね?」
妹を見返すためにした行動。
でもそれが我が人生を動かしてくれた。
「ええそうです」
「ああ、良かった……!」
私と彼を出会わせてくれたのは、ある意味、妹とも言える。
◆
あの後間もなく私は彼と結婚した。
一目惚れから始まった関係。
でも二人にはそれほど長い時間は必要なかった。
これからは夫婦としてきっと長い時間を共にするだろう。そこには苦労だってあると思う。人生を共にするなら、良いことばかりではないかもしれない。悪いことも良いことも含めて、そのすべてが人生だから。
でも彼が相手ならきっと大丈夫。
いつまでも思いやりを持って接し合って生きてゆける、今は確信がある。
手を取り合って一歩ずつ前へ進んでゆこう。
その決意、覚悟が、きっと私たちを明るい未来へと連れていってくれる。
ちなみに妹はというと、アルクに「わがまま過ぎるし生意気でウザい」と言われて婚約破棄された。また、見下していた姉が愛され居場所を得たことも重なり、彼女の精神は崩壊した。
妹は壊れ、今では、夜に奇声を発することしかできない。
まるで壊れてしまった人形のよう。
特に夜間の彼女の振る舞いは離れたところから見ているだけでも深い狂気を感じるほどだ。
だがそれが彼女への天罰なのだろう。
心ないことをしてきた。
人を傷つけてきた。
その報いを今まさに受けているのだと思う。
◆終わり◆
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