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わがままで高圧的、非常に感じの悪い姉がいましたが……私が何かするまでもなく勝手に滅んでゆきました。
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私には、わがままで高圧的、非常に感じの悪い姉がいた。
姉は資産家の息子である青年と婚約してからその感じの悪さを一気にエスカレートさせ、まだ特に誰とも婚約していない私をとてつもない勢いで見下すようになった。
会うたびに馬鹿にしたような目で見られたし、黒い笑みをこぼしながら「あんたは可哀想ねぇ、若さしか取り柄がないのに誰からも相手にされなくて」とか「あたしはあんたとは違うの。本当に良い女っていうのはね、良い男に見つけてもらえるものなのよ。分かった?」とか嫌み交じりに色々言われたりもした。
しかし婚約から二ヶ月も経たず、姉は婚約者より婚約の破棄を告げられることとなる。
婚約破棄の原因を作ったのは姉だった。
彼女が婚約者のお金を許可なく勝手に使って贅沢していたことが発覚したためであった。
人のお金を勝手に使うってどうなの……。
妹として恥ずかしかった。
そんなことを平気でする人と同じ血を引いているなんて思いたくない、そんな気持ちだった。
だが、姉はというと、反省するどころか婚約破棄した彼に対して怒っていて。
「何よあいつ! ちょっと遊んだだけじゃないの! 金持ちのくせにちょっと使った激怒するって、一体何!? いいじゃない婚約者なんだから! 少しくらい使わせて普通でしょ!? 心狭すぎよ! あり得ないあり得ないあり得ない……クソじゃないの!!」
しかしそこから姉は段々おかしくなっていった。
最初は理不尽ではあるがまだしもまともな言葉を発して怒っていたのだが、次第に意味不明な言葉ばかりを発するようになり――やがて、おもちゃが壊れてゆくかのようになっていって、最後は何も発さないようになった。
――そう、沈黙したのである。
姉は壊れてしまった。
もっとも、悪いことをしたのは自分なので自業自得なのだが。
だが私としてはそれは好都合なことであった。
見下すようなことは言われなくなったので日常の不快な出来事が大幅に減ったのである。
そういう意味では、姉を切り捨ててくれた彼に感謝している。
◆
姉が壊れ果ててから半年、私は、同性の幼馴染みが紹介してくれたおでこも広いが心も広い男性と結婚した。
彼は頭髪のことを大変気にしているようであった。何度も「もっと髪の多い男の方が良かったんじゃない?」みたいなことを言っていた。その時の彼はいつもどことなく不安げな顔をしている。
でも私としてはそんなことはどうでもいい。
毛量なんかよりも性格の良さや心の広さなどを重視しているから。
◆終わり◆
姉は資産家の息子である青年と婚約してからその感じの悪さを一気にエスカレートさせ、まだ特に誰とも婚約していない私をとてつもない勢いで見下すようになった。
会うたびに馬鹿にしたような目で見られたし、黒い笑みをこぼしながら「あんたは可哀想ねぇ、若さしか取り柄がないのに誰からも相手にされなくて」とか「あたしはあんたとは違うの。本当に良い女っていうのはね、良い男に見つけてもらえるものなのよ。分かった?」とか嫌み交じりに色々言われたりもした。
しかし婚約から二ヶ月も経たず、姉は婚約者より婚約の破棄を告げられることとなる。
婚約破棄の原因を作ったのは姉だった。
彼女が婚約者のお金を許可なく勝手に使って贅沢していたことが発覚したためであった。
人のお金を勝手に使うってどうなの……。
妹として恥ずかしかった。
そんなことを平気でする人と同じ血を引いているなんて思いたくない、そんな気持ちだった。
だが、姉はというと、反省するどころか婚約破棄した彼に対して怒っていて。
「何よあいつ! ちょっと遊んだだけじゃないの! 金持ちのくせにちょっと使った激怒するって、一体何!? いいじゃない婚約者なんだから! 少しくらい使わせて普通でしょ!? 心狭すぎよ! あり得ないあり得ないあり得ない……クソじゃないの!!」
しかしそこから姉は段々おかしくなっていった。
最初は理不尽ではあるがまだしもまともな言葉を発して怒っていたのだが、次第に意味不明な言葉ばかりを発するようになり――やがて、おもちゃが壊れてゆくかのようになっていって、最後は何も発さないようになった。
――そう、沈黙したのである。
姉は壊れてしまった。
もっとも、悪いことをしたのは自分なので自業自得なのだが。
だが私としてはそれは好都合なことであった。
見下すようなことは言われなくなったので日常の不快な出来事が大幅に減ったのである。
そういう意味では、姉を切り捨ててくれた彼に感謝している。
◆
姉が壊れ果ててから半年、私は、同性の幼馴染みが紹介してくれたおでこも広いが心も広い男性と結婚した。
彼は頭髪のことを大変気にしているようであった。何度も「もっと髪の多い男の方が良かったんじゃない?」みたいなことを言っていた。その時の彼はいつもどことなく不安げな顔をしている。
でも私としてはそんなことはどうでもいい。
毛量なんかよりも性格の良さや心の広さなどを重視しているから。
◆終わり◆
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