上 下
53 / 103

わがままで高圧的、非常に感じの悪い姉がいましたが……私が何かするまでもなく勝手に滅んでゆきました。

しおりを挟む
 私には、わがままで高圧的、非常に感じの悪い姉がいた。

 姉は資産家の息子である青年と婚約してからその感じの悪さを一気にエスカレートさせ、まだ特に誰とも婚約していない私をとてつもない勢いで見下すようになった。

 会うたびに馬鹿にしたような目で見られたし、黒い笑みをこぼしながら「あんたは可哀想ねぇ、若さしか取り柄がないのに誰からも相手にされなくて」とか「あたしはあんたとは違うの。本当に良い女っていうのはね、良い男に見つけてもらえるものなのよ。分かった?」とか嫌み交じりに色々言われたりもした。

 しかし婚約から二ヶ月も経たず、姉は婚約者より婚約の破棄を告げられることとなる。

 婚約破棄の原因を作ったのは姉だった。
 彼女が婚約者のお金を許可なく勝手に使って贅沢していたことが発覚したためであった。

 人のお金を勝手に使うってどうなの……。

 妹として恥ずかしかった。
 そんなことを平気でする人と同じ血を引いているなんて思いたくない、そんな気持ちだった。

 だが、姉はというと、反省するどころか婚約破棄した彼に対して怒っていて。

「何よあいつ! ちょっと遊んだだけじゃないの! 金持ちのくせにちょっと使った激怒するって、一体何!? いいじゃない婚約者なんだから! 少しくらい使わせて普通でしょ!? 心狭すぎよ! あり得ないあり得ないあり得ない……クソじゃないの!!」

 しかしそこから姉は段々おかしくなっていった。

 最初は理不尽ではあるがまだしもまともな言葉を発して怒っていたのだが、次第に意味不明な言葉ばかりを発するようになり――やがて、おもちゃが壊れてゆくかのようになっていって、最後は何も発さないようになった。

 ――そう、沈黙したのである。

 姉は壊れてしまった。

 もっとも、悪いことをしたのは自分なので自業自得なのだが。

 だが私としてはそれは好都合なことであった。
 見下すようなことは言われなくなったので日常の不快な出来事が大幅に減ったのである。

 そういう意味では、姉を切り捨ててくれた彼に感謝している。


 ◆


 姉が壊れ果ててから半年、私は、同性の幼馴染みが紹介してくれたおでこも広いが心も広い男性と結婚した。

 彼は頭髪のことを大変気にしているようであった。何度も「もっと髪の多い男の方が良かったんじゃない?」みたいなことを言っていた。その時の彼はいつもどことなく不安げな顔をしている。

 でも私としてはそんなことはどうでもいい。
 毛量なんかよりも性格の良さや心の広さなどを重視しているから。


◆終わり◆
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

その聖女、娼婦につき ~何もかもが遅すぎた~

ノ木瀬 優
恋愛
 卒業パーティーにて、ライル王太子は、レイチェルに婚約破棄を突き付ける。それを受けたレイチェルは……。 「――あー、はい。もう、そういうのいいです。もうどうしようもないので」  あっけらかんとそう言い放った。実は、この国の聖女システムには、ある秘密が隠されていたのだ。  思い付きで書いてみました。全2話、本日中に完結予定です。  設定ガバガバなところもありますが、気楽に楽しんで頂けたら幸いです。    R15は保険ですので、安心してお楽しみ下さい。

わがまま妹、自爆する

四季
恋愛
資産を有する家に長女として生まれたニナは、五つ年下の妹レーナが生まれてからというもの、ずっと明らかな差別を受けてきた。父親はレーナにばかり手をかけ可愛がり、ニナにはほとんど見向きもしない。それでも、いつかは元に戻るかもしれないと信じて、ニナは慎ましく生き続けてきた。 そんなある日のこと、レーナに婚約の話が舞い込んできたのだが……?

美しい貴族の令嬢である婚約者を捨てた愚かな王子の末路は……。

四季
恋愛
美しい貴族の令嬢である婚約者を捨てた愚かな王子の末路は……とんでもないものでした。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

婚約破棄されたうえ何者かに誘拐されたのですが、人違いだったようです。しかも、その先では意外な展開が待っていて……!?

四季
恋愛
王子オーウェン・ディル・ブリッジから婚約破棄を告げられたアイリーン・コレストは、城から出て帰宅していたところ何者かに連れ去られた。 次に目覚めた時、彼女は牢にいたのだが、誘拐されたのはオーウェンの妹と間違われたからだったようで……?

ヒューストン家の惨劇とその後の顛末

よもぎ
恋愛
照れ隠しで婚約者を罵倒しまくるクソ野郎が実際結婚までいった、その後のお話。

奪い取るより奪った後のほうが大変だけど、大丈夫なのかしら

キョウキョウ
恋愛
公爵子息のアルフレッドは、侯爵令嬢である私(エヴリーヌ)を呼び出して婚約破棄を言い渡した。 しかも、すぐに私の妹であるドゥニーズを新たな婚約者として迎え入れる。 妹は、私から婚約相手を奪い取った。 いつものように、妹のドゥニーズは姉である私の持っているものを欲しがってのことだろう。 流石に、婚約者まで奪い取ってくるとは予想外たったけれど。 そういう事情があることを、アルフレッドにちゃんと説明したい。 それなのに私の忠告を疑って、聞き流した。 彼は、後悔することになるだろう。 そして妹も、私から婚約者を奪い取った後始末に追われることになる。 2人は、大丈夫なのかしら。

処理中です...