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失ったものより得たものの方が大きかったので、どうやら私は幸運だったようです。~結果的にはかなり得しました~

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 私はくきわかめが好きだ。
 あのしゃくしゃく感、独特の歯ごたえがもうたまらない。

 でもそれが理由で――。

「お前との婚約だが、破棄とすることとした」

 婚約者オーニガックに捨てられることとなってしまった。

「え、どうして!?」
「くきわかめ好き過ぎだからだよ」
「……迷惑かけてた?」
「鬱陶しいんだよ、しゃくしゃくいう音が」
「そんな……」
「それになぁ、俺よりくきわかめの方を愛してそうな感じもうぜぇんだ」

 まぁ確かにそれはそうかも。
 もしかしたらオーニガックよりくきわかめの方が好きかもしれない。

 オーニガックとは離れていても平気だけれど、くきわかめのない生活にはきっと耐えられない。

「そう……分かったわ」
「じゃ、そういうことで、婚約は破棄な」

 くきわかめだけでそこまでする? と不思議に思いはしたけれど、だからといって彼にすり寄る気もなかったので、私はそのまま流れに乗っておく道を選んだ。


 ◆


 数年後、私は、東の島国からやって来た王子に見初められ結婚した。

 東の島国は海が多いこともあって海産物よく採れる。そのためその国にはくきわかめももちろんたくさん存在している。たくさんあるので高価なものでもない、とのこと。

 そういうアピールによって心が揺れ動いて、私は彼についていくことを決めた。

 それから私は好きなだけくきわかめを食べられるようになった。

 生まれ育った国を離れることには勇気が必要だった。見知らぬ地へ行く、それは簡単なことではない。物理的にもそうだが、特に心理的な部分で。知らない場所へ足を踏み入れるというのはどうしても勇気が要るものなのである。

 でも、それでも、ここへ来たことを後悔はしていない。

 歓迎されて、愛されて、くきわかめ食べ放題――こんな幸せな日常はない。

「そういえば、君が前に言っていた、オーニガックという男性がいただろう?」

 なんてことのないある春の日、夫である王子が話を振ってきた。

「ええ」
「あの男、処刑されたそうだよ」
「えっ……」
「何でも王子の恋人に手を出したそうで、拒否されたら無理矢理関係を進めようとしたらしくって、それで……捕らえられて処刑になったんだとか」

 オーニガックの最期は呆気ないものだったようだ。


◆終わり◆
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