31 / 103
生まれつき特殊な能力を持っていましたがそれのせいで誰からも愛されずにいたのですが……。
しおりを挟む
私は生まれつき特殊な能力を持っていた。
それは強大な力。
時に世界をも終わらせかねないような。
私は私なりに慎ましく生きているつもりだった、でも。
「あの子、ちょっと怖いのよねぇ……」
「何か世界を滅ぼす女神が宿ってるとか? 聞いたわよ。嫌ねぇ、そんな危ない近所に子がいるなんて」
「引っ越してほしいわ」
「嫌ね嫌ね~、危険すぎるわ、災厄そのものよね~」
出会う人たちは皆私を受け入れてはくれなかった。
むしろあれこれ悪口を言っているほどであった。
「ちょっと! あの子と一緒に遊んじゃ駄目よ! 災厄が降りかかってからじゃ遅いんだからね」
「離れておきなさい」
「近寄らないように。そっとしておくのですよ。危険ですから」
愛してくれなんて贅沢は言わない。そっとしておいてほしい、ただそれだけなのに。それすらも叶わなくて。いつだって私は迫害される側の人間だ。こちらからは何もしていないのに、危害を加えたことだってないのに。
「あんたとは遊んじゃ駄目って言われてるから!」
「寄るな!」
「こっち来ないで悪魔っ」
「近寄らないでくれる!? 危険だから! あっち行ってよ!!」
大人も、子どもも、誰もが私を拒んだ。
そして親の頑張りによってようやくできた婚約者アフブドルフも。
「危険な女と一生を共にする気はない。よって、婚約は本日をもって破棄とする。……二度と俺に近づくな」
婚約して半年も経たないうちに強制的に関係を終わらせてきた。
悲しかった。
辛かった。
でも婚約破棄だけならまだ良かった、それなのに――。
「あんな悪魔みたいなやつを生んだ母親とかやべーよな」
「罪だろ」
「社会に迷惑かけてるもんなぁ、明らかに。まず母親が償えよ、って感じだよな」
偶然見てしまった。
彼が友人らと共に私の母についての悪口を言っているところを。
「あいつの母親捕まえてふるぼっこにする?」
しかも暴言まで。
「サンセー!」
「そうしよーぜ、罰を与えねーとな」
「俺らでやろ!」
「徹底的に痛めつけよーぜ」
「それなー!」
「ありあり!」
「サンセーだわ、それ! サイコー!」
――その会話を聞いた時、私の中の何かが壊れた。
「え……?」
能力が自動的に発動。
自我とは無関係に爆発的なエネルギーが放出される。
(母さんを悪く言わないで)
その思いが悲劇を生んだ。
――我が能力によって、国は滅んだのだった。
◆
「おはよう! 母さん」
「あら今日も早いわね、おはよう」
世界は書き換わった。
我が能力によって破壊された果てに誕生したのは『絶望のない世界』であった。
「今朝は元気そうだなぁ」
「父さんもおはよう」
「今日の朝食は美味しい美味しいサンドイッチだぞぉ」
「やったー!」
母がいて、父がいて、幸せな日々。
世界は希望に満ちたものへと変わった。
「おっはよー!」
「あ、ミル」
「今からお茶会行かない?」
「急ね!?」
「うん! ちょっと席が空いてさ~。どうだろ? 無理かな?」
「いいえ、行くわ」
今は以前と違って友人だっている。
仲良くしてくれる人や寄り添っていてくれる人もいる。
「やったぁー!」
「朝食の後でいい?」
「うんいいよ!」
「じゃあ少しだけ待っていてちょうだいね」
「はーい!」
これからはきっと幸せに生きてゆける。
それは確かなことだ。
ちなみにアフブドルフは明るくなったこの世界には生を受けなかった。
彼はあの時世界から完全に消滅したのである。
◆終わり◆
それは強大な力。
時に世界をも終わらせかねないような。
私は私なりに慎ましく生きているつもりだった、でも。
「あの子、ちょっと怖いのよねぇ……」
「何か世界を滅ぼす女神が宿ってるとか? 聞いたわよ。嫌ねぇ、そんな危ない近所に子がいるなんて」
「引っ越してほしいわ」
「嫌ね嫌ね~、危険すぎるわ、災厄そのものよね~」
出会う人たちは皆私を受け入れてはくれなかった。
むしろあれこれ悪口を言っているほどであった。
「ちょっと! あの子と一緒に遊んじゃ駄目よ! 災厄が降りかかってからじゃ遅いんだからね」
「離れておきなさい」
「近寄らないように。そっとしておくのですよ。危険ですから」
愛してくれなんて贅沢は言わない。そっとしておいてほしい、ただそれだけなのに。それすらも叶わなくて。いつだって私は迫害される側の人間だ。こちらからは何もしていないのに、危害を加えたことだってないのに。
「あんたとは遊んじゃ駄目って言われてるから!」
「寄るな!」
「こっち来ないで悪魔っ」
「近寄らないでくれる!? 危険だから! あっち行ってよ!!」
大人も、子どもも、誰もが私を拒んだ。
そして親の頑張りによってようやくできた婚約者アフブドルフも。
「危険な女と一生を共にする気はない。よって、婚約は本日をもって破棄とする。……二度と俺に近づくな」
婚約して半年も経たないうちに強制的に関係を終わらせてきた。
悲しかった。
辛かった。
でも婚約破棄だけならまだ良かった、それなのに――。
「あんな悪魔みたいなやつを生んだ母親とかやべーよな」
「罪だろ」
「社会に迷惑かけてるもんなぁ、明らかに。まず母親が償えよ、って感じだよな」
偶然見てしまった。
彼が友人らと共に私の母についての悪口を言っているところを。
「あいつの母親捕まえてふるぼっこにする?」
しかも暴言まで。
「サンセー!」
「そうしよーぜ、罰を与えねーとな」
「俺らでやろ!」
「徹底的に痛めつけよーぜ」
「それなー!」
「ありあり!」
「サンセーだわ、それ! サイコー!」
――その会話を聞いた時、私の中の何かが壊れた。
「え……?」
能力が自動的に発動。
自我とは無関係に爆発的なエネルギーが放出される。
(母さんを悪く言わないで)
その思いが悲劇を生んだ。
――我が能力によって、国は滅んだのだった。
◆
「おはよう! 母さん」
「あら今日も早いわね、おはよう」
世界は書き換わった。
我が能力によって破壊された果てに誕生したのは『絶望のない世界』であった。
「今朝は元気そうだなぁ」
「父さんもおはよう」
「今日の朝食は美味しい美味しいサンドイッチだぞぉ」
「やったー!」
母がいて、父がいて、幸せな日々。
世界は希望に満ちたものへと変わった。
「おっはよー!」
「あ、ミル」
「今からお茶会行かない?」
「急ね!?」
「うん! ちょっと席が空いてさ~。どうだろ? 無理かな?」
「いいえ、行くわ」
今は以前と違って友人だっている。
仲良くしてくれる人や寄り添っていてくれる人もいる。
「やったぁー!」
「朝食の後でいい?」
「うんいいよ!」
「じゃあ少しだけ待っていてちょうだいね」
「はーい!」
これからはきっと幸せに生きてゆける。
それは確かなことだ。
ちなみにアフブドルフは明るくなったこの世界には生を受けなかった。
彼はあの時世界から完全に消滅したのである。
◆終わり◆
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

義母の秘密、ばらしてしまいます!
四季
恋愛
私の母は、私がまだ小さい頃に、病気によって亡くなってしまった。
それによって落ち込んでいた父の前に現れた一人の女性は、父を励まし、いつしか親しくなっていて。気づけば彼女は、私の義母になっていた。
けれど、彼女には、秘密があって……?

出て行けと言われても
もふっとしたクリームパン
恋愛
よくあるざまぁ話です。設定はゆるゆるで、何番煎じといった感じです。*主人公は女性。書きたいとこだけ書きましたので、軽くざまぁな話を読みたい方向け、だとおもいます。*前編と後編+登場人物紹介で完結。*カクヨム様でも公開しています。


この国において非常に珍しいとされている銀髪を持って生まれた私はあまり大切にされず育ってきたのですが……?
四季
恋愛
この国において非常に珍しいとされている銀髪を持って生まれた私、これまであまり大切にされず育ってきたのですが……?
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる