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生命力を美しさと引き換えにしたかのような令嬢は病弱であることを理由に婚約破棄されましたが、その先で愛を知ることとなりました。
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まるで銀細工であるかのような長い髪、色の白い肌、そして静けさとある種の儚さを絵に描いたかのような美しくも切なげな目鼻立ち――令嬢ミフィーリア、彼女は生命力を美しさと引き換えにしたかのような女性であった。
見た者の心を奪う。
その才能は人の域を超えている。
ただ、身体があまり強くなかったために、外の世界へ飛び出して光を掴むような生き方はしてこなかった。
そんなミフィーリアには婚約者がいる。その青年の名はタタ。特別目立つことのない素朴かつ平凡な見た目の青年であり、周囲からは「つり合っていない」と言われることもあったが、ミフィーリアはそんなタタを純粋に心の底から愛していた。その愛は深く、たびたびタタを「この世で一番大切な存在」と話していたほどであった。
しかしタタはミフィーリアを真っ直ぐに愛しきることはできず。
やがて果てへと至ってしまう――。
「ミフィーリア、悪いけど、君との婚約は破棄することにしたよ」
ある秋の日、タタはそう宣言した。
「どうして……?」
「君は病弱だろ。これから先上手くやっていける気がしないんだ。それに、一生君を介護して生きるなんて嫌なんだよ。だから、さ。もうおしまいにするんだ」
「で、でも……私は貴方を愛しています……」
「そんなことどうでもいい。君の心なんて聞いていないよ。これは僕の心だけの話だから、君の想いなんてどうだっていいんだ」
ミフィーリアは切なげに目を伏せた。
「……そう、ですか」
では、と発して、言葉を少し止めて。
「マックスマッチョスペシャリティーファイターエターナルポポポノポマックスマッチョアイランドパワー!!」
やがて彼女はそう叫んだ。
「え? え? ……え、いや、なにこれ?」
するとミフィーリアはみるみるうちにマッチョへと姿を変えてゆく。
まさかの展開に混乱するタタ。
「ファイタァーッ、マッチョパァーッンチ!!」
そんなタタのみぞおちに叩き込まれる強烈な一撃。
それはマッチョとなったミフィーリアの拳であった。
「ぐぎゃああああああああ!!」
タタは上向きに飛ばされ、そのまま空へ飛び込むように消えた。
……そう、彼は星になったのだ。
「さようなら、タタさん」
空を見上げて、ミフィーリアは悲しそうに呟いた。
こうしてタタはこの世から去ることとなったのだった。
――そう、ミフィーリアには、生まれつき特殊能力が宿っていた。
それは呪文を唱えることで最強のマッチョとなる能力。ただそれは凶暴性を感じさせるもののため極力使用しないようにして生きてきていた。なるべく周りを不安にさせたくない、それがミフィーリアの考えだったからだ。
だがミフィーリアはタタの裏切りに耐えられなかった。
それで彼女はその能力を使ってしまったのであった。
◆
「ミフィーリア、今日も美しいね」
「ありがとう」
あれから一年半。
病弱であるという特徴さえも受け入れてくれる生涯のパートナーをミフィーリアは手に入れた。
「……どうしたんだい? 何だか切なそうな顔をして」
「少し、思い出していたの」
「思い出して?」
「ええ。過去のこと。でも……貴方には関係のないことだし、それに、話したらきっと迷惑だわ」
ミフィーリアは真実の愛に出会った。
そして、与える愛とは異なる、与えられる愛というものを知った。
「そっか。じゃあこれ以上は聞かないよ」
「ごめんなさいね」
「ううん、気にしないで。じゃ、お茶でも飲もうか」
「そうね」
「淹れてくるよ」
「ありがとう……愛しているわ」
ミフィーリアは今、毎日のように微笑んでいる。
彼女はまさに幸福の中に在るのだ。
◆終わり◆
見た者の心を奪う。
その才能は人の域を超えている。
ただ、身体があまり強くなかったために、外の世界へ飛び出して光を掴むような生き方はしてこなかった。
そんなミフィーリアには婚約者がいる。その青年の名はタタ。特別目立つことのない素朴かつ平凡な見た目の青年であり、周囲からは「つり合っていない」と言われることもあったが、ミフィーリアはそんなタタを純粋に心の底から愛していた。その愛は深く、たびたびタタを「この世で一番大切な存在」と話していたほどであった。
しかしタタはミフィーリアを真っ直ぐに愛しきることはできず。
やがて果てへと至ってしまう――。
「ミフィーリア、悪いけど、君との婚約は破棄することにしたよ」
ある秋の日、タタはそう宣言した。
「どうして……?」
「君は病弱だろ。これから先上手くやっていける気がしないんだ。それに、一生君を介護して生きるなんて嫌なんだよ。だから、さ。もうおしまいにするんだ」
「で、でも……私は貴方を愛しています……」
「そんなことどうでもいい。君の心なんて聞いていないよ。これは僕の心だけの話だから、君の想いなんてどうだっていいんだ」
ミフィーリアは切なげに目を伏せた。
「……そう、ですか」
では、と発して、言葉を少し止めて。
「マックスマッチョスペシャリティーファイターエターナルポポポノポマックスマッチョアイランドパワー!!」
やがて彼女はそう叫んだ。
「え? え? ……え、いや、なにこれ?」
するとミフィーリアはみるみるうちにマッチョへと姿を変えてゆく。
まさかの展開に混乱するタタ。
「ファイタァーッ、マッチョパァーッンチ!!」
そんなタタのみぞおちに叩き込まれる強烈な一撃。
それはマッチョとなったミフィーリアの拳であった。
「ぐぎゃああああああああ!!」
タタは上向きに飛ばされ、そのまま空へ飛び込むように消えた。
……そう、彼は星になったのだ。
「さようなら、タタさん」
空を見上げて、ミフィーリアは悲しそうに呟いた。
こうしてタタはこの世から去ることとなったのだった。
――そう、ミフィーリアには、生まれつき特殊能力が宿っていた。
それは呪文を唱えることで最強のマッチョとなる能力。ただそれは凶暴性を感じさせるもののため極力使用しないようにして生きてきていた。なるべく周りを不安にさせたくない、それがミフィーリアの考えだったからだ。
だがミフィーリアはタタの裏切りに耐えられなかった。
それで彼女はその能力を使ってしまったのであった。
◆
「ミフィーリア、今日も美しいね」
「ありがとう」
あれから一年半。
病弱であるという特徴さえも受け入れてくれる生涯のパートナーをミフィーリアは手に入れた。
「……どうしたんだい? 何だか切なそうな顔をして」
「少し、思い出していたの」
「思い出して?」
「ええ。過去のこと。でも……貴方には関係のないことだし、それに、話したらきっと迷惑だわ」
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そして、与える愛とは異なる、与えられる愛というものを知った。
「そっか。じゃあこれ以上は聞かないよ」
「ごめんなさいね」
「ううん、気にしないで。じゃ、お茶でも飲もうか」
「そうね」
「淹れてくるよ」
「ありがとう……愛しているわ」
ミフィーリアは今、毎日のように微笑んでいる。
彼女はまさに幸福の中に在るのだ。
◆終わり◆
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