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平和に暮らしていたのです、なのに隣国が攻め込んできたせいで……。~復讐を果たす日は必ず訪れるのです~
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私たちは平和に暮らしていた。
なのにその穏やかな日々は突如破壊されてしまうこととなった。
隣国が攻め込んできたのだ。
彼らは我が国を蹂躙し、王女である私を誘拐――隣国の王子フィレットは「お前の反抗的なところが面白い」と言って私を強制的に愛人のような立場に置いた。
だが、それが物議を醸すこととなる。
「蹂躙してきた他国より持ち帰った女なんぞを愛人にするなんて! フィレット様、どうかしていますわ!」
「いいだろ何だって」
「このミレッタ、納得できませんっ」
不満を持った者の代表はフィレットの婚約者である女性ミレッタ。
美しい金髪と整った顔立ちを持つ、おとぎばなしに出てくるような女性である。
「あのような野蛮な女を……私、絶対に嫌です!」
「べつにいいだろ、何も彼女を妻とすると言っているわけじゃあない」
「ですが! 傍に置いておくだけだとしても、それでも、殿下の格が下がってしまう気がするのです!」
ミレッタは私を嫌っていた。
初めて顔を合わせた日に「くさ~い」と言われたほどだった。
彼女は明らかに、弱き国の王女であった私を見下していた。
それからもミレッタはやたらと私に接触して嫌がらせを重ねてくる。会うたび嫌がらせされる、なんて生温いものではない。その嫌がらせにはかなり熱がこもっていた。自ら私のところへやって来て嫌な思いをさせようとしてくるくらいであった。
――そんな日々の果てに。
「殿下、私はもう、貴方とは行けません。あのような野蛮人を傍に置いている殿下を理解できないのです」
「はぁ」
「よって! 婚約は破棄といたします!」
「ああ、そうか」
こうして思わぬ形でフィレットとミレッタの関係は壊れてしまった。
それによって、私への風当たりはより一層強まってしまう。
「あの野蛮人を殺すのだ!」
「弱小国の王女なんぞこの国には要らーん!!」
「消せ!」
「野蛮な王女は死すべし」
「そうでござる、この世から去るべきでござる」
私は多くの民などから死を望まれるようになってしまった――そんな中で、私は心を決めた。
私はもう誰にも必要とされていない。
私のことを欲してくれる者もいない。
でも、帰る場所なんてないのだ。
生まれ育ったあの国は、もう……とうになくなってしまった。
ならばせめて、私は、憎きこの国に罰を下そう。
この手で。
たとえ死刑になるとしても。
そう心を決めた日から一年ほどが経ったある晩、フィレットから呼びされて彼の自室へ行った際、私は作戦を決行することを決めた。
「――な」
隠し持っていた包丁でフィレットの首を斬る。
「ど、どう、して……」
フィレットは呆気なく死んだ。
抵抗することはなかった。
きっとこのようなことになると呼んではいなかったのだろう。
「復讐よ。……我が国を蹂躙した者を私は許さないわ」
フィレットだけのせいではない。
でもフィレットは王子だ、それゆえ、まったく罪がないかといえばそうとは言えない。
彼にも罪はある。
それは確かなこと。
「さようなら、殿下」
その日、私は、王城から飛び出した。
あそこにいたら殺される。
だから一応逃げ出したのだ。
ちなみに、逃げしなにたまたま出会ったので、ミレッタも刃で切り裂いて捨ててきた――彼女もきっともう助からないだろう――ただ死ぬだけ、そして、ただ地獄に堕ちるだけ。
私とてもう無罪ではない。それゆえ、いつかは捕まるかもしれない。でもそれでも構わない。覚悟はしている、だからこそ、私は罪を背負ってでも突き進める。
今はただ、残された日々を楽しもう。
もし捕まって処刑されたらそれはそれでいいと諦める。
けれどももし運良く逃げられたのなら、運命から与えられた時間だけでも自由に生を謳歌しよう。
どのみちもう何も持っていない私だ、怖さなど少しもない。
こうして、長い旅が始まったのだった――。
◆終わり◆
なのにその穏やかな日々は突如破壊されてしまうこととなった。
隣国が攻め込んできたのだ。
彼らは我が国を蹂躙し、王女である私を誘拐――隣国の王子フィレットは「お前の反抗的なところが面白い」と言って私を強制的に愛人のような立場に置いた。
だが、それが物議を醸すこととなる。
「蹂躙してきた他国より持ち帰った女なんぞを愛人にするなんて! フィレット様、どうかしていますわ!」
「いいだろ何だって」
「このミレッタ、納得できませんっ」
不満を持った者の代表はフィレットの婚約者である女性ミレッタ。
美しい金髪と整った顔立ちを持つ、おとぎばなしに出てくるような女性である。
「あのような野蛮な女を……私、絶対に嫌です!」
「べつにいいだろ、何も彼女を妻とすると言っているわけじゃあない」
「ですが! 傍に置いておくだけだとしても、それでも、殿下の格が下がってしまう気がするのです!」
ミレッタは私を嫌っていた。
初めて顔を合わせた日に「くさ~い」と言われたほどだった。
彼女は明らかに、弱き国の王女であった私を見下していた。
それからもミレッタはやたらと私に接触して嫌がらせを重ねてくる。会うたび嫌がらせされる、なんて生温いものではない。その嫌がらせにはかなり熱がこもっていた。自ら私のところへやって来て嫌な思いをさせようとしてくるくらいであった。
――そんな日々の果てに。
「殿下、私はもう、貴方とは行けません。あのような野蛮人を傍に置いている殿下を理解できないのです」
「はぁ」
「よって! 婚約は破棄といたします!」
「ああ、そうか」
こうして思わぬ形でフィレットとミレッタの関係は壊れてしまった。
それによって、私への風当たりはより一層強まってしまう。
「あの野蛮人を殺すのだ!」
「弱小国の王女なんぞこの国には要らーん!!」
「消せ!」
「野蛮な王女は死すべし」
「そうでござる、この世から去るべきでござる」
私は多くの民などから死を望まれるようになってしまった――そんな中で、私は心を決めた。
私はもう誰にも必要とされていない。
私のことを欲してくれる者もいない。
でも、帰る場所なんてないのだ。
生まれ育ったあの国は、もう……とうになくなってしまった。
ならばせめて、私は、憎きこの国に罰を下そう。
この手で。
たとえ死刑になるとしても。
そう心を決めた日から一年ほどが経ったある晩、フィレットから呼びされて彼の自室へ行った際、私は作戦を決行することを決めた。
「――な」
隠し持っていた包丁でフィレットの首を斬る。
「ど、どう、して……」
フィレットは呆気なく死んだ。
抵抗することはなかった。
きっとこのようなことになると呼んではいなかったのだろう。
「復讐よ。……我が国を蹂躙した者を私は許さないわ」
フィレットだけのせいではない。
でもフィレットは王子だ、それゆえ、まったく罪がないかといえばそうとは言えない。
彼にも罪はある。
それは確かなこと。
「さようなら、殿下」
その日、私は、王城から飛び出した。
あそこにいたら殺される。
だから一応逃げ出したのだ。
ちなみに、逃げしなにたまたま出会ったので、ミレッタも刃で切り裂いて捨ててきた――彼女もきっともう助からないだろう――ただ死ぬだけ、そして、ただ地獄に堕ちるだけ。
私とてもう無罪ではない。それゆえ、いつかは捕まるかもしれない。でもそれでも構わない。覚悟はしている、だからこそ、私は罪を背負ってでも突き進める。
今はただ、残された日々を楽しもう。
もし捕まって処刑されたらそれはそれでいいと諦める。
けれどももし運良く逃げられたのなら、運命から与えられた時間だけでも自由に生を謳歌しよう。
どのみちもう何も持っていない私だ、怖さなど少しもない。
こうして、長い旅が始まったのだった――。
◆終わり◆
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