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『婚約破棄するもあまり気にしてもらえなかった彼はやがて嫉妬に駆られ悪事に手を染め……それによって自滅することとなりました。』
「お前さぁ、ぼさーっとしててくだらねぇから。婚約、破棄するな」
良家の令嬢アイリフィーナは婚約者ルーカスから突然そんなことを言われてしまった。
「婚約破棄、ですか?」
「ああそうだ」
「そうですか~。分かりました。では私はこれで、失礼しますね~」
しかし元よりおっとりしているアイリフィーナはあまり気にしてはおらず。
「それでは私はこれにて、失礼いたします~」
告げられたそれをさらりと受け入れ、そそくさと帰っていっただけだった。
残されたルーカスは不満げであった。
本当はアイリフィーナが嘆き悲しむところをもっと見たかったのだろう。
◆
「それでね~、だから、これからまた定期的にお茶会できそうなの~」
「そう!」
アイリフィーナはお茶会の日々へと戻った。
彼女は幼い頃からお茶をすることが好きだった。それで、ある程度の年齢になってからは、自宅に知り合いを呼んでお茶会を開くようになった。季節ごとのお茶とお菓子を楽しみつつ会話をも楽しむ、それは彼女にとって最高に幸せな時間だったのだ。
「でも……辛くないの? 婚約破棄でしょう?」
「大丈夫よ~」
「本当に?」
「ええ。だって、またこうして皆と会えるんだもの、そっちの方がずっと幸せよ~」
アイリフィーナは今日もお茶会を楽しむ。
参加者はあまり多くない方が好みだ。
「また誘ってもいいかいら~?」
「もちろん!」
「忙しかったらそう言ってくれていいからね~」
「ありがとう」
アイリフィーナはもうルーカスのことなど忘れている。
「でもさぁ、このお茶、アイリが淹れたんでしょ? ほんと美味しいわ。香りの良いし、味わいも深いし、最高」
「ありがとう~。そう言ってもらえると、とっても嬉しいわ~」
「一つのことを極められるって凄いと思う」
「そんなことないわよ~。私はただ好きなだけ。きっと、好きなことは上達するんだわ~」
ルーカスが想像していたほど、アイリフィーナはダメージを受けてはいなかった。
◆
「アイリフィーナ様、お誘いいただきありがとうございます」
「いえいえ~」
「男性ともお茶なさるのですね」
「あまりないですね。この前助けていただいたお礼です。今日は楽しんでいってくださいね~」
今日のお茶会参加者は珍しく男性。
先日町のポスト前にて探し物をしていたアイリフィーナに声をかけ探し物に協力した人、その彼が相手である。
「甘いものは苦手でしょうか~?」
「いえ、好きですよ」
「本当? なら良かった! では追加も持ってきますね~」
「そんな。お気遣いなく」
「いいんです~。色々置いているだけでも素敵かなと思いますので。あくまで自己満足です~」
そんな彼エリットと将来結婚することになることを、この時のアイリフィーナはまだ知らなかった。
◆
アイリフィーナとエリットが定期的会うようになって少し経った頃――夏の日であったが――ルーカスは二人が一緒にいるところをたまたま目撃してしまう。
仲良さげな二人を目にし、嫉妬に駆られたルーカス。
彼は突然アイリフィーナの家に火を放とうとした。
発想が過激すぎるが……不快なものはすべてを燃やしてしまおうと考えたのだ。
しかしたまたま近くにいたエリットに悪事を目撃されてしまって。ルーカスはエリットに押さえ込まれ、そのまま通報され、それによって放火未遂で逮捕されることとなった。
この件によってルーカスは牢屋送りに。
その後の彼の人生は惨めなものだった。
もはや人間としては扱ってもらえない。
彼は一生奴隷として生きる外なかった。
一方アイリフィーナとエリットはこの件によってより一層親しくなり、結婚に至った。
結婚から数年が経っても二人の絆に揺らぎはない。
アイリフィーナとエリットは町で有名なほどの仲良し夫婦となっている。
◆終わり◆
『大事に思っていた婚約者から婚約破棄され無気力になってしまいましたが、人生はまだ終わりません!』
大事に思っていた婚約者ディルクから極端な批判を言葉を並べられたうえ婚約破棄宣言までされてしまい、無気力になってしまった。
どうしてこんなことになってしまったのだろう? なんて、最初はあれこれ考えていた。けれど段々もう何もかもどうでもいいと思うようになっていって。そうして気づけばありとあらゆることに対するやる気を失っていた。
「大丈夫? アイリー。体調、どう?」
「うん大丈夫」
「ゆっくりしていていいのよ」
「ありがとう母さん」
「はい、これ。淹れておいたからね。ここに置いておくわ」
「お茶ありがとう」
意思疎通はできる。
精神が崩壊してしまったわけではないから。
けれども、以前であれば嬉しかっただろうなというようなことでも今はそれほど嬉しくは思えないのだ。どうでもいい、そんな色が濃くて。何となくぼーっとしてしまうし、何か言ってもらってもああとしか思えないという状態に近い。
感情が消えてしまったかのようだ。
「何か用事があったら呼んでちょうだいね」
「あ、うん。ありがとう」
しばらくこうして休んでいればいつかは元に戻るだろうか。
今はまだどうなるか分からない。
でも未来へ行って確かめるなんてことは人間にはできないことだから、今はただじっとしている外ない。
取り敢えず、美味しいお茶を飲んで休もう。
それがいい。
それが今の私にできる唯一のことだ。
◆
婚約破棄から一週間。
私はまだ多くの時間を自室で過ごしていた。
だが、そんな私の耳にも、その情報は届いた。
「ディルクが、死んだ――?」
母が教えてくれたのだ。
彼がこの世を去ったという重大な情報を。
「そうみたい。何かね、親しくしていた女性がいたそうなのだけれど、喧嘩の時に乱暴な言葉をかけたらしくって。女性が親にそれを伝えたそうなの。そうしたらその女性のお父さんがディルクくんのところへやって来てボコボコにしたそうなのよ」
女性の父親……何者?
ボコボコに、とか……怖すぎる……。
「それで、その時に負った怪我が原因になって、ディルクくんは死んでしまったみたい」
「えええー……」
信じられなかった、あまりにも唐突で。
でも、死んでいないのに死んだなんていう誤情報が流れるとは考え難いので、恐らくその情報は真実なのだろう。
でも悲しくはない。
だって彼は私を切り捨てた人だから。
彼のために悲しむなんて、無駄なことだ。
◆
あれから二年と百日、私は今日結婚式を挙げる。
当たり前だが、相手はディルクではない。
「アイリー、君に出会えて本当に良かったよ。僕と出会ってくれてありがとう」
「いいえ、それは私の言葉よ」
「いやいや! 僕が言うべきことだよ! だって僕、ずっと、好きになれる人がいなくて困ってたんだ。君に出会って初めて好きという想いを知ることができたんだ。だから何度でも言うよ、ありがとうって!」
でも、正直、ディルクと結婚するより良かったと思う。
今こうして目の前にいてくれている彼は、いつも私に愛を囁いてくれる――否、囁くなんて声を大きさではないが――とにかく彼は常に愛を抱きそれを言葉としてくれるのだ。
だから彼といると明るく優しい気持ちになれるのである。
そんな彼のことが大好き。
いつまでもずっと一緒にいたい、強くそう思う。
私はもう無気力ではない。
心は取り戻した。
そして感情も。
だからこれからは大丈夫、真っ直ぐに生きてゆけるはず。
愛する彼と共に、嬉しかった記憶や楽しかった思い出をたくさん作ってゆきたい。
◆終わり◆
『婚約者は理解がない人ですが、私は私の道を行くだけです。~努力していれば少しずつでも理解者が現れてくるものですね~』
母が東国の血を引く人だったこともあって、私は、幼い頃からおにぎりという食べ物に馴染んでいた。
皆からは「何それ?」とか「キモ」とか「東のアレの食い物?」とか心ないことを言われてしまったこともあったけれど、私はおにぎりが好きだった――なぜって、とにかく美味しいからである。
周囲からの視線なんて気にならない。
それほどに美味しいおにぎり。
私はそれを心の底から愛していた。
そんな私は二十歳の春おにぎり屋をオープンした。
しかしそれが原因となって婚約者アルティムメットに切り捨てられることとなってしまう。
「おにぎり屋? あり得ね。そんなことしてる女とかぜってー無理だわ。女はもっと男に、夫に、ただ尽くすべきだろ? 店やってるってだけでもやばいのにさ」
アルティムメットは婚約破棄を告げた後、長々と続ける。
「それがおにぎり屋! あっりえねぇ~。冗談でもきついって、無理だって。そんなやつを嫁に迎えるなんて一族から笑われまくるに決まってる。無理無理無理ぃ~! まずおにぎりとか人間の食いもんじゃねーしな!」
こちらは何も言い返していないというのに、一時間以上ボロクソに言われてしまった。
――しかしそれから一年以内に店は大人気になった。
物凄い儲かりぶり。
あっという間に億万長者に。
するとアルティムメットは私の前に現れてへらへらしながら「ホントはお前凄いやつだって思ってたんだよ。よかったらまた一緒にならねぇか? もう一度婚約してやるよ。今のお前となら上手くやっていける気がするし、今のお前なら俺につり合ってる」などと言ってきた。
……もちろんお断りしたけれど。
あんなに酷いことを言っておいて今さら持ち上げたって無駄、誰もそれを本心とは受け取らない。
その後間もなくアルティムメットは亡くなった――散歩中たまたま路上でやんちゃグループに絡まれ、反抗的な態度を取ったために殴る蹴るの暴行を加えられたうえ奴隷として売り飛ばそうとされたが、暴行によって負った傷が原因となって死に至ったそうである。
ま、でも、もうどうでもいいことだ。
アルティムメットのことなんてかなりどうでもいい。
彼がどうなろうが今の私には何の関係もない。
私はこれからもおにぎり屋を営んでゆく。
そしてたくさんの笑顔を生むのだ。
◆終わり◆
「お前さぁ、ぼさーっとしててくだらねぇから。婚約、破棄するな」
良家の令嬢アイリフィーナは婚約者ルーカスから突然そんなことを言われてしまった。
「婚約破棄、ですか?」
「ああそうだ」
「そうですか~。分かりました。では私はこれで、失礼しますね~」
しかし元よりおっとりしているアイリフィーナはあまり気にしてはおらず。
「それでは私はこれにて、失礼いたします~」
告げられたそれをさらりと受け入れ、そそくさと帰っていっただけだった。
残されたルーカスは不満げであった。
本当はアイリフィーナが嘆き悲しむところをもっと見たかったのだろう。
◆
「それでね~、だから、これからまた定期的にお茶会できそうなの~」
「そう!」
アイリフィーナはお茶会の日々へと戻った。
彼女は幼い頃からお茶をすることが好きだった。それで、ある程度の年齢になってからは、自宅に知り合いを呼んでお茶会を開くようになった。季節ごとのお茶とお菓子を楽しみつつ会話をも楽しむ、それは彼女にとって最高に幸せな時間だったのだ。
「でも……辛くないの? 婚約破棄でしょう?」
「大丈夫よ~」
「本当に?」
「ええ。だって、またこうして皆と会えるんだもの、そっちの方がずっと幸せよ~」
アイリフィーナは今日もお茶会を楽しむ。
参加者はあまり多くない方が好みだ。
「また誘ってもいいかいら~?」
「もちろん!」
「忙しかったらそう言ってくれていいからね~」
「ありがとう」
アイリフィーナはもうルーカスのことなど忘れている。
「でもさぁ、このお茶、アイリが淹れたんでしょ? ほんと美味しいわ。香りの良いし、味わいも深いし、最高」
「ありがとう~。そう言ってもらえると、とっても嬉しいわ~」
「一つのことを極められるって凄いと思う」
「そんなことないわよ~。私はただ好きなだけ。きっと、好きなことは上達するんだわ~」
ルーカスが想像していたほど、アイリフィーナはダメージを受けてはいなかった。
◆
「アイリフィーナ様、お誘いいただきありがとうございます」
「いえいえ~」
「男性ともお茶なさるのですね」
「あまりないですね。この前助けていただいたお礼です。今日は楽しんでいってくださいね~」
今日のお茶会参加者は珍しく男性。
先日町のポスト前にて探し物をしていたアイリフィーナに声をかけ探し物に協力した人、その彼が相手である。
「甘いものは苦手でしょうか~?」
「いえ、好きですよ」
「本当? なら良かった! では追加も持ってきますね~」
「そんな。お気遣いなく」
「いいんです~。色々置いているだけでも素敵かなと思いますので。あくまで自己満足です~」
そんな彼エリットと将来結婚することになることを、この時のアイリフィーナはまだ知らなかった。
◆
アイリフィーナとエリットが定期的会うようになって少し経った頃――夏の日であったが――ルーカスは二人が一緒にいるところをたまたま目撃してしまう。
仲良さげな二人を目にし、嫉妬に駆られたルーカス。
彼は突然アイリフィーナの家に火を放とうとした。
発想が過激すぎるが……不快なものはすべてを燃やしてしまおうと考えたのだ。
しかしたまたま近くにいたエリットに悪事を目撃されてしまって。ルーカスはエリットに押さえ込まれ、そのまま通報され、それによって放火未遂で逮捕されることとなった。
この件によってルーカスは牢屋送りに。
その後の彼の人生は惨めなものだった。
もはや人間としては扱ってもらえない。
彼は一生奴隷として生きる外なかった。
一方アイリフィーナとエリットはこの件によってより一層親しくなり、結婚に至った。
結婚から数年が経っても二人の絆に揺らぎはない。
アイリフィーナとエリットは町で有名なほどの仲良し夫婦となっている。
◆終わり◆
『大事に思っていた婚約者から婚約破棄され無気力になってしまいましたが、人生はまだ終わりません!』
大事に思っていた婚約者ディルクから極端な批判を言葉を並べられたうえ婚約破棄宣言までされてしまい、無気力になってしまった。
どうしてこんなことになってしまったのだろう? なんて、最初はあれこれ考えていた。けれど段々もう何もかもどうでもいいと思うようになっていって。そうして気づけばありとあらゆることに対するやる気を失っていた。
「大丈夫? アイリー。体調、どう?」
「うん大丈夫」
「ゆっくりしていていいのよ」
「ありがとう母さん」
「はい、これ。淹れておいたからね。ここに置いておくわ」
「お茶ありがとう」
意思疎通はできる。
精神が崩壊してしまったわけではないから。
けれども、以前であれば嬉しかっただろうなというようなことでも今はそれほど嬉しくは思えないのだ。どうでもいい、そんな色が濃くて。何となくぼーっとしてしまうし、何か言ってもらってもああとしか思えないという状態に近い。
感情が消えてしまったかのようだ。
「何か用事があったら呼んでちょうだいね」
「あ、うん。ありがとう」
しばらくこうして休んでいればいつかは元に戻るだろうか。
今はまだどうなるか分からない。
でも未来へ行って確かめるなんてことは人間にはできないことだから、今はただじっとしている外ない。
取り敢えず、美味しいお茶を飲んで休もう。
それがいい。
それが今の私にできる唯一のことだ。
◆
婚約破棄から一週間。
私はまだ多くの時間を自室で過ごしていた。
だが、そんな私の耳にも、その情報は届いた。
「ディルクが、死んだ――?」
母が教えてくれたのだ。
彼がこの世を去ったという重大な情報を。
「そうみたい。何かね、親しくしていた女性がいたそうなのだけれど、喧嘩の時に乱暴な言葉をかけたらしくって。女性が親にそれを伝えたそうなの。そうしたらその女性のお父さんがディルクくんのところへやって来てボコボコにしたそうなのよ」
女性の父親……何者?
ボコボコに、とか……怖すぎる……。
「それで、その時に負った怪我が原因になって、ディルクくんは死んでしまったみたい」
「えええー……」
信じられなかった、あまりにも唐突で。
でも、死んでいないのに死んだなんていう誤情報が流れるとは考え難いので、恐らくその情報は真実なのだろう。
でも悲しくはない。
だって彼は私を切り捨てた人だから。
彼のために悲しむなんて、無駄なことだ。
◆
あれから二年と百日、私は今日結婚式を挙げる。
当たり前だが、相手はディルクではない。
「アイリー、君に出会えて本当に良かったよ。僕と出会ってくれてありがとう」
「いいえ、それは私の言葉よ」
「いやいや! 僕が言うべきことだよ! だって僕、ずっと、好きになれる人がいなくて困ってたんだ。君に出会って初めて好きという想いを知ることができたんだ。だから何度でも言うよ、ありがとうって!」
でも、正直、ディルクと結婚するより良かったと思う。
今こうして目の前にいてくれている彼は、いつも私に愛を囁いてくれる――否、囁くなんて声を大きさではないが――とにかく彼は常に愛を抱きそれを言葉としてくれるのだ。
だから彼といると明るく優しい気持ちになれるのである。
そんな彼のことが大好き。
いつまでもずっと一緒にいたい、強くそう思う。
私はもう無気力ではない。
心は取り戻した。
そして感情も。
だからこれからは大丈夫、真っ直ぐに生きてゆけるはず。
愛する彼と共に、嬉しかった記憶や楽しかった思い出をたくさん作ってゆきたい。
◆終わり◆
『婚約者は理解がない人ですが、私は私の道を行くだけです。~努力していれば少しずつでも理解者が現れてくるものですね~』
母が東国の血を引く人だったこともあって、私は、幼い頃からおにぎりという食べ物に馴染んでいた。
皆からは「何それ?」とか「キモ」とか「東のアレの食い物?」とか心ないことを言われてしまったこともあったけれど、私はおにぎりが好きだった――なぜって、とにかく美味しいからである。
周囲からの視線なんて気にならない。
それほどに美味しいおにぎり。
私はそれを心の底から愛していた。
そんな私は二十歳の春おにぎり屋をオープンした。
しかしそれが原因となって婚約者アルティムメットに切り捨てられることとなってしまう。
「おにぎり屋? あり得ね。そんなことしてる女とかぜってー無理だわ。女はもっと男に、夫に、ただ尽くすべきだろ? 店やってるってだけでもやばいのにさ」
アルティムメットは婚約破棄を告げた後、長々と続ける。
「それがおにぎり屋! あっりえねぇ~。冗談でもきついって、無理だって。そんなやつを嫁に迎えるなんて一族から笑われまくるに決まってる。無理無理無理ぃ~! まずおにぎりとか人間の食いもんじゃねーしな!」
こちらは何も言い返していないというのに、一時間以上ボロクソに言われてしまった。
――しかしそれから一年以内に店は大人気になった。
物凄い儲かりぶり。
あっという間に億万長者に。
するとアルティムメットは私の前に現れてへらへらしながら「ホントはお前凄いやつだって思ってたんだよ。よかったらまた一緒にならねぇか? もう一度婚約してやるよ。今のお前となら上手くやっていける気がするし、今のお前なら俺につり合ってる」などと言ってきた。
……もちろんお断りしたけれど。
あんなに酷いことを言っておいて今さら持ち上げたって無駄、誰もそれを本心とは受け取らない。
その後間もなくアルティムメットは亡くなった――散歩中たまたま路上でやんちゃグループに絡まれ、反抗的な態度を取ったために殴る蹴るの暴行を加えられたうえ奴隷として売り飛ばそうとされたが、暴行によって負った傷が原因となって死に至ったそうである。
ま、でも、もうどうでもいいことだ。
アルティムメットのことなんてかなりどうでもいい。
彼がどうなろうが今の私には何の関係もない。
私はこれからもおにぎり屋を営んでゆく。
そしてたくさんの笑顔を生むのだ。
◆終わり◆
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