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後編

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「ラベスさんも持っていらっしゃったなんて……驚きです……!」

 ネイベリルはらしくなくはしゃぎそうになっている。目をぱちぱちさせているし、表情も無意識のうちに明るいうちになっている。また、発する声もいつもより大きめだ。しかも声の質も活き活きしている。

「も、とは……」

 ラベスはきょとんとすることしかできない。

「実は、その……愛読しているのです……!」

 ややアダルト路線のイラスト本、それは、どちらかというと男性読者を対象として制作されたものだ。そのため、ネイベリルがその本を知っているなんて、ラベスは夢にも思わなかった。だから、ラベスは今、とても驚いている。そして、驚くと共に、戸惑ってもいる。

「ネイベリルさんが、ですか」

 ラベスは半ば無意識のうちに顔の筋肉をぴくぴくさせてしまっていた。

「はい……はい、そうです。……あの、何か?」

 ラベスの顔面がぴくぴくしていることに気づいたネイベリルは、おかしなものを見てしまったような不思議そうな顔をする。心なしか気を遣っているような表情ではあるが、それが中心となっている表情というよりかは純粋に不思議に思っているというような表情に近い。

「い、いえ! そんな、変な意味では! 変な意味ではないです!」

 ラベスはらしくなく冷静さを欠いてしまう。
 口から出る言葉は滑るばかり。
 発する言葉はすべておかしな滑り方をする。が、だからといって黙ることもできない。気まずさゆえに。沈黙を恐れ、次から次へと何かを発するように努力してしまうのだが、それが余計に悲劇を引き起こしている。

「……すみません、正直に申しますと少し驚いてしまったのです」

 ようやく少し落ち着いたラベスを見て、ネイベリルは少しばかり笑みを滲ませた。
 くすくす、と、小さな笑い声を漏らす。

「ラベスさん、意外と可愛らしい方なのですね」

 思わぬ展開で狼狽え情けないところを晒してしまったラベスだが、結果的にはそれがイメージ向上に繋がったのだった。


◆終わり◆
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