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小さな言葉だけで良かったのに……

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婚約破棄を告げられた日のこと
今も忘れてはいないわ
確かに覚えている
確かに記憶している
悲しみと絶望のうねりに呑まれて
海原まで押し流されてしまいそうだった

行く先が海ならまだいいわ
知らない場所でも
知らない世界でも
美しい景色はあるでしょう
生き抜くための方法など持ってはいなくても
昇る太陽を見つめることは容易い

けれどもわたしの行く末は
果てなき海原ではなく
絶望に塗り潰された闇の海
そこには光はない
そこには未来もない
何も見えないから何もできやしないの
腕を伸ばすことも
瞼を開くことも
ただ恐ろしくて

小さな言葉だけで良かったのに……

あなたが一言でも
慰めとなる何かを発してくれていたなら

小さな言葉だけで良かったのに……

わたしも少しは
雲の隙間に希望を見られただろうに
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