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4話「反応は様々です」
しおりを挟むなぜかやたらと王子ウォルシュに寄ってこられている私を見たパーティー参加女性らの反応は様々なものであった。
「ウォルシュ様に話しかけてもらえるなんて……! 凄い……! どんな良家の方なのかしら……!?」
「あの女性、きっと高貴な方なのでしょうね」
「ああ、わたしもいつか、あんな風になりたぁい」
「あのウォルシュ様に構ってもらえるなんて羨ましいわぁ。あちちもいつかあんな風に可愛がってもらいたぁい」
比較的好意的な者もいることはいるのだが。
「何あれ! どこの誰なのよ、パーティーでも見かけたことないような女のくせにウォルシュ様に構ってもらえるなんてずるい!」
「うらやまー。そして女くそー」
「ウォルシュ様はああいうだっさいやつが好きなのかしら? だとしたらちょっと趣味を疑うわ。どうかしているわね」
敵意を抱いていることを隠そうとしない者もいて。
「あの女プライド高そう」
「ああいうやつってホント嫌い。絶対性格悪いよね。で、男の前でだけ媚び売ってんの!」
「それな。絶対それだわ」
「ださい空気が調子に乗んな」
「あいつ絶対いきってるだろ、王子に構ってもらったから。あーうざうざ。最低だわ、ああいう女」
中には何の根拠もない妄想を言い合っている者までいた。
そんなに羨ましいだろうか、この立ち位置は……。
「……リアさん?」
「え。あ、も、申し訳ありません」
「大丈夫ですか?」
いやいや「大丈夫ですか?」じゃないよ!
貴方のせいで皆から冷ややかな視線を向けられているんだよ!
「はい」
「なら良かった。いえ、ただ少し、何となく――お悩みでもあるのかと、そんな風に感じまして」
「私、変な顔をしていましたか?」
「無礼承知で申し上げますと、重苦しげな顔をなさっていましたので」
数秒沈黙があって。
「気まずいのです、少し」
私は本当のことを言った。
想定外の言葉だったのかきょとんとするウォルシュ。
「気まずい、とは……?」
「周囲からの視線が少々痛いのです」
「視線?」
「私がウォルシュ様と喋っているからだと思います、凄く見られているんです」
しかし彼はまだ理解できていない様子。
「喋っているから? いえ、喋るくらい普通にしますよ? 王子といってもただの人間ですので」
天然なのかなぁ……。
「ですからウォルシュ様、他の女性のところへと行って差し上げてください」
「なぜゆえ?」
純真な子どものように首を傾げられると説明する気を失ってしまう。
「それより、呼び方なのですが」
しかもウォルシュは話題を変えてきた。
「様など付けなくて良いのですよ」
「えっ」
「もっとくだけた呼び方で構いません」
「え、で、では……ええと……そうですね、ウォルシュ――いやそれはさすがに――ウォルシュさん、とか?」
提案してみれば、彼は整った面に花を咲かせる。
「良いですね!」
何だかとても嬉しそうだ。
今日出会ったばかりなのに心を開き過ぎではないか? なんて、余計な心配をしてしまう。
でも実際そうだろう。
彼は王子という位のある人だ。中にはやましい心で近づいている者もいるはず。そういう相手に対してもこういう接し方をするのだとすれば、おかしな輩に乗せられたり気づかぬうちに操作されたりしないか少々不安である。
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