上 下
1 / 2

前編

しおりを挟む
 ある晴れた日の茶会にて。

「お前みたいな真面目女、一緒にいても楽しくねーんだよ! 失せろ! ってことで、婚約は破棄な!!」

 婚約者アンドレアスからそんなことを告げられた。

 しかも彼の隣には巨乳の女性。
 アンドレアスにぴたりと身体をくっつけて勝ち誇ったような視線をこちらへ向けている。
 奪い取ってやったぜ、と言わんばかりの目つき。

「待ってください、良いのですか? 私との婚約を破棄するとなれば、私の家からの支援はなくなるのですよ。それも婚約あっての話ですから。それでも良いのですか?」

 私としてはべつに婚約破棄でも構わない。が、彼の家には、私との関係を解消すれば損がある。私の家と彼の家は、子同士の婚約を前提に、こちらが支援するという話を進めているから。ただ、こうして向こうが一方的に破棄したとなれば、うちからの支援は間違いなく断たれるだろう。

 しかしアンドレアスは。

「いいさ」

 堂々と言ってきた。

「俺はフルレリネアと一緒にいられればそれだけでいいんだ」
「いやぁ~ん! アンドレアス様、かっこいい~!」

 どうやら彼は婚約破棄のデメリットをよく理解できていないようだ。

 ただ、彼がそれを望むなら、私としてはそれでも構わない。

「ごめんなさいねっ、でも、アンドレアス様はあたしを愛していますのよ~」

 巨乳の女性フルレリネアはそんなことを言ってきた。

 いちいち鬱陶しい……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義母によって塔に閉じ込められた私は復讐の時を待っていたのですが……。

四季
恋愛
私、リリー・オルテトッテは、領地持ちの家に生まれた。 しかし私がまだ幼いうちに母親は病気にかかり、放置されたため亡くなってしまい、その数年後父親は女性と再婚した。

私は必ず復讐します、我が心を傷つけた者たちを絶対に許しはしません。

四季
恋愛
私は必ず復讐します。 我が心を傷つけた者たちを絶対に許しはしません。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

婚約者の行動が何やら不自然なので……。

四季
恋愛
最近、同居している婚約者フェルーデの行動がおかしい。 なので調査してみることにした。

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

暁のカトレア

四季
恋愛
レヴィアス帝国に謎の生物 "化け物" が出現するようになり約十年。 平凡な毎日を送っていた齢十八の少女 マレイ・チャーム・カトレアは、一人の青年と出会う。 そして、それきっかけに、彼女の人生は大きく動き出すのだった。 ※ファンタジー・バトル要素がやや多めです。 ※2018.4.7~2018.9.5 執筆

執着はありません。婚約者の座、譲りますよ

四季
恋愛
ニーナには婚約者がいる。 カインという青年である。 彼は周囲の人たちにはとても親切だが、実は裏の顔があって……。

山猿の皇妃

夏菜しの
恋愛
 ライヘンベルガー王国の第三王女レティーツィアは、成人する十六歳の誕生日と共に、隣国イスターツ帝国へ和平条約の品として贈られた。  祖国に聞こえてくるイスターツ帝国の噂は、〝山猿〟と言った悪いモノばかり。それでもレティーツィアは自らに課せられた役目だからと山を越えて隣国へ向かった。  嫁いできたレティーツィアを見た皇帝にして夫のヘクトールは、子供に興味は無いと一蹴する。これはライヘンベルガー王国とイスターツ帝国の成人とみなす年の違いの問題だから、レティーツィアにはどうすることも出来ない。  子供だと言われてヘクトールに相手にされないレティーツィアは、妻の責務を果たしていないと言われて次第に冷遇されていく。  一方、レティーツィアには祖国から、将来的に帝国を傀儡とする策が授けられていた。そのためには皇帝ヘクトールの子を産む必要があるのだが……  それが出来たらこんな待遇になってないわ! と彼女は憤慨する。  帝国で居場所をなくし、祖国にも帰ることも出来ない。  行き場を失ったレティーツィアの孤独な戦いが静かに始まる。 ※恋愛成分は低め、内容はややダークです

処理中です...