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episode.122 強い女
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お気に入りの時のプリンスを後少しのところで逃してしまったヨクは落ち込み気味。いや、厳密には、がっかりという感じ。抱えたそれを晴らそうとしているようで、男性にしては甲高い笑い声のような声を敢えて発しながら森のプリンセスに襲いかかる。他の衣服と比べて動きが制限される傾向のある黒い女性用和服を身にまといながらも、男性ゆえのがっしりした四肢を武器として次から次へと攻撃を繰り出していた。しかし森のプリンセスの対応は早く確実であり、ヨクの体術をもってしてもなかなか勝ちをもぎ取れない。
「やるワネ!」
「褒められても嬉しくないわねー」
ヨクは肉弾戦を仕掛けていくが、森のプリンセスは体術では応じない。
身による攻撃と植物を利用した術がぶつかり合う。
「まだまだ行くワよ!」
「いい加減諦めたらどうかしらー?」
ぐんぐん伸びる植物を掻い潜り、森のプリンセスの懐に潜り込むようにして拳を突き出すヨク。
「もやもやをさっぱりさセルのよ!」
だが、突き出された拳を、森のプリンセスは肘を当てて弾いた。が、森のプリンセスはそこで止まらない。即座に先が鋭くなった木の枝を出現させ、その先端をヨクの喉もとに突きつけた。ヨクと森のプリンセス、二人の冷ややかな視線が交差する。
「……やるジャない」
そうでなくては、とでも言いたげに、口角を片側だけ持ち上げ笑みを浮かべるヨク。
「わたし、男には手加減しないのよー」
森のプリンセスは恐ろしさのある微笑みで返す。
直後。
ヨクは煙のようになって消えた。
「……ふぅ」
敵が消えたことを確認してから振り返る森のプリンセス。
彼女の視線の先には――横になる時のプリンス、彼を見守るアオと盾のプリンス――三人がいた。
「大丈夫? アオちゃん」
「あ、あ……あぅう……」
森のプリンセスに接近され優しく抱かれたアオは情けない声を漏らした。
「よしよし」
「森のプリンセスさん……」
泣き出しそうな声を漏らすアオの頭を撫でる森のプリンセス。
女性だけしか入れないような空気が自然に発生する。
「もう大丈夫よアオちゃん、安心して。頑張って偉かったわねー。ふふ」
その後、胴に穴を空けられた時のプリンスは、手当てのために森のキャッスルへ送られることとなった。
本来であれば杖のプリンセスに頼んで傷を治癒させてもらいたいところだ。傷が大きいため、ちまちまやるより術で一気に治す方が早いから。しかし杖のプリンセスはキャッスル防衛のため動いている。そのため、そこにさらにやるべきことを追加するというのは難しい。
そこで、代わりに、ウィリーにやらせることになった。
その道を極めている杖のプリンセスほどではないが彼も杖が使える。そして回復のための杖さえあれば傷の手当てもできる。慣れてはいないが不可能ではない。
で、アオは、時のプリンスに同行。
盾のプリンスは自身のキャッスルへ帰り、森のプリンセスは一時的に時のキャッスル防衛のためそこに留まりながら通信でウィリーに指示を出すことを選んだ。
皆、居場所はばらばら。しかし協力する心がないというわけではなく。平常時でないから、であるとはいえ、味方という関係性は一応成り立っていた。
こうして、ひとまず助かった時のプリンスであった。
◆
クイーンズキャッスル内に一人でいた私は、森のプリンセスからの通信にて、時のプリンスが負傷しながらも皆の協力によって助かったということを知った。
「そのようなことになっていたなんて……。でも、助かりそうで良かったです」
ミクニが急遽盾のキャッスルへ行くこととなったこともあって、何かが起きているのだろうということは想像できていた。
しかし時のプリンスがやられていたとは。
そこまでは想像できていなかった。
『詳しく説明するのが遅くなってごめんなさいねー』
「いえ、問題ありません。ところで、森のプリンセスさんは今はどこに?」
『時のキャッスルよー。無人になるのはまずいもの、一応わたしが見張っているのー』
状況は確実に変わりつつある。
物語は進んでいる。
クイーンズキャッスルに被害はなくとも、何もかもが止まっているわけではない。
その後私は時のプリンスに連絡して様子を確認しつつアオと話したり一人寂しく戦闘の練習を重ねたりして何もない時間を過ごした。そうしているうちに盾のプリンスから「もういい」と言われたらしいミクニが戻ってきて。それからはまたミクニに力を貸してもらって、模擬戦闘のようなものを行った。
「突き飛ばし、なかなか良い感じじゃない?」
「そうでしょうか」
しばらく本気で動くと息が乱れる。それは今も変わらない。けれどもそれにももう慣れてきていて。最初の頃は息が乱れると思考も乱れて疲労を過剰に感じてしまうこともあったが、今ではそんなものと流せるようになっている。
今なら少しは役に立てるのでは?
段々そんなことまで思えてくる。
◆
「んはぁーっ! やられチャウなんて」
基地へ戻ったヨクはくるくる回る椅子に座ったまま豪快に背伸び。
「想定外、だわ」
「はい」
彼のすぐ傍には青髪女性が一人。
無機質な彼女は、紺色のメイドを連想させる服を身にまとい、両手を腹の前で重ねて真っ直ぐに立っている。
「森のプリンセス……あの女、厄介ね」
「はい。現プリンセス・プリンスの中では最も実力者と思われます」
「嫌ね」
「最大の障害となる可能性が高いです」
「あんなやつがいたらお気に入りを捕まえられないじゃない!」
ヨクは安そうな肘置きをばんと叩く。
「お気に入りを捕まえる、ですか?」
「時のプリンスよ!」
「……時のプリンス? なぜお気に入りなのでしょう? 敵では」
「個人的にツボなのよっ!!」
鋭く放ち、少しして、ヨクはふぅーと息を吐き出す。
「ま、でも、駄目よね。王たる者ゆえアタチ第一ってわけにもいかないもの。……はぁー」
「やるワネ!」
「褒められても嬉しくないわねー」
ヨクは肉弾戦を仕掛けていくが、森のプリンセスは体術では応じない。
身による攻撃と植物を利用した術がぶつかり合う。
「まだまだ行くワよ!」
「いい加減諦めたらどうかしらー?」
ぐんぐん伸びる植物を掻い潜り、森のプリンセスの懐に潜り込むようにして拳を突き出すヨク。
「もやもやをさっぱりさセルのよ!」
だが、突き出された拳を、森のプリンセスは肘を当てて弾いた。が、森のプリンセスはそこで止まらない。即座に先が鋭くなった木の枝を出現させ、その先端をヨクの喉もとに突きつけた。ヨクと森のプリンセス、二人の冷ややかな視線が交差する。
「……やるジャない」
そうでなくては、とでも言いたげに、口角を片側だけ持ち上げ笑みを浮かべるヨク。
「わたし、男には手加減しないのよー」
森のプリンセスは恐ろしさのある微笑みで返す。
直後。
ヨクは煙のようになって消えた。
「……ふぅ」
敵が消えたことを確認してから振り返る森のプリンセス。
彼女の視線の先には――横になる時のプリンス、彼を見守るアオと盾のプリンス――三人がいた。
「大丈夫? アオちゃん」
「あ、あ……あぅう……」
森のプリンセスに接近され優しく抱かれたアオは情けない声を漏らした。
「よしよし」
「森のプリンセスさん……」
泣き出しそうな声を漏らすアオの頭を撫でる森のプリンセス。
女性だけしか入れないような空気が自然に発生する。
「もう大丈夫よアオちゃん、安心して。頑張って偉かったわねー。ふふ」
その後、胴に穴を空けられた時のプリンスは、手当てのために森のキャッスルへ送られることとなった。
本来であれば杖のプリンセスに頼んで傷を治癒させてもらいたいところだ。傷が大きいため、ちまちまやるより術で一気に治す方が早いから。しかし杖のプリンセスはキャッスル防衛のため動いている。そのため、そこにさらにやるべきことを追加するというのは難しい。
そこで、代わりに、ウィリーにやらせることになった。
その道を極めている杖のプリンセスほどではないが彼も杖が使える。そして回復のための杖さえあれば傷の手当てもできる。慣れてはいないが不可能ではない。
で、アオは、時のプリンスに同行。
盾のプリンスは自身のキャッスルへ帰り、森のプリンセスは一時的に時のキャッスル防衛のためそこに留まりながら通信でウィリーに指示を出すことを選んだ。
皆、居場所はばらばら。しかし協力する心がないというわけではなく。平常時でないから、であるとはいえ、味方という関係性は一応成り立っていた。
こうして、ひとまず助かった時のプリンスであった。
◆
クイーンズキャッスル内に一人でいた私は、森のプリンセスからの通信にて、時のプリンスが負傷しながらも皆の協力によって助かったということを知った。
「そのようなことになっていたなんて……。でも、助かりそうで良かったです」
ミクニが急遽盾のキャッスルへ行くこととなったこともあって、何かが起きているのだろうということは想像できていた。
しかし時のプリンスがやられていたとは。
そこまでは想像できていなかった。
『詳しく説明するのが遅くなってごめんなさいねー』
「いえ、問題ありません。ところで、森のプリンセスさんは今はどこに?」
『時のキャッスルよー。無人になるのはまずいもの、一応わたしが見張っているのー』
状況は確実に変わりつつある。
物語は進んでいる。
クイーンズキャッスルに被害はなくとも、何もかもが止まっているわけではない。
その後私は時のプリンスに連絡して様子を確認しつつアオと話したり一人寂しく戦闘の練習を重ねたりして何もない時間を過ごした。そうしているうちに盾のプリンスから「もういい」と言われたらしいミクニが戻ってきて。それからはまたミクニに力を貸してもらって、模擬戦闘のようなものを行った。
「突き飛ばし、なかなか良い感じじゃない?」
「そうでしょうか」
しばらく本気で動くと息が乱れる。それは今も変わらない。けれどもそれにももう慣れてきていて。最初の頃は息が乱れると思考も乱れて疲労を過剰に感じてしまうこともあったが、今ではそんなものと流せるようになっている。
今なら少しは役に立てるのでは?
段々そんなことまで思えてくる。
◆
「んはぁーっ! やられチャウなんて」
基地へ戻ったヨクはくるくる回る椅子に座ったまま豪快に背伸び。
「想定外、だわ」
「はい」
彼のすぐ傍には青髪女性が一人。
無機質な彼女は、紺色のメイドを連想させる服を身にまとい、両手を腹の前で重ねて真っ直ぐに立っている。
「森のプリンセス……あの女、厄介ね」
「はい。現プリンセス・プリンスの中では最も実力者と思われます」
「嫌ね」
「最大の障害となる可能性が高いです」
「あんなやつがいたらお気に入りを捕まえられないじゃない!」
ヨクは安そうな肘置きをばんと叩く。
「お気に入りを捕まえる、ですか?」
「時のプリンスよ!」
「……時のプリンス? なぜお気に入りなのでしょう? 敵では」
「個人的にツボなのよっ!!」
鋭く放ち、少しして、ヨクはふぅーと息を吐き出す。
「ま、でも、駄目よね。王たる者ゆえアタチ第一ってわけにもいかないもの。……はぁー」
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