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episode.78 合流
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手足の自由を取り戻した盾のプリンスは通路の様子を窺いつつ部屋を出る。
現在通路に人の気配はない。彼にとっては幸運だった。無理矢理扉をこじ開けた彼は何事もなかったかのように歩き出す。もちろん、見つからないように気をつけて慎重には行動しているが。途中女性とすれ違いそうになった時には掃除用具箱の中に隠れて凌いだ。
進むにつれ、ぶええ、という声が大きくなってくる。
周囲への警戒を怠らないようにしつつも速やかに声がする方へと向かう。
泣き声か叫び声か分からないような大声の主が愛のプリンセスであるということは彼にも容易く想像できた。それゆえ彼は声の方へと向かったのだ。
声が溢れてくる部屋の銀の扉は半分ほど開いている。
盾のプリンスがその前まで来た時、室内には青い髪の女性が一人だけがいた。が、反応はなく、光る板のようなものを操作して凝視している。女性の意識は明らかに視線の先へ偏っており、背後に立つプリンスの気配にさえ気づいていない。
罠である可能性はある、そう思いながらも、プリンスは突っ込むことを決める。
女性に背後から迫り片手で首を掴む。女性は首を握られながらも指を伸ばし反撃した。青く塗られた爪がプリンスの頬をかすめる、が、プリンスは手の力を緩めない。細い首を躊躇なく握り潰した。
女性は崩れ落ちる。
手にしていた光る板は床に当たって数回跳ね少し離れたところへ転がった。
室内に敵はいない状態。とはいえそれが長時間続くとは考えづらい。盾のプリンスは壁に貼り付けられている愛のプリンセスの方へ足を進める。愛のプリンセスは彼の存在には気づいておらず、今もぶええと激しい鳴き声を漏らしながら苦しそうに目もとをぴくぴくさせていた。
「プリンセス」
プリンスはそう声をかける。
しかし返答はない。
会話することを諦めたプリンスは、愛のプリンセスの身体を締め付けている鎖に右手をかけ――指先から肩まで駆け抜ける黒い衝撃に驚きつつも、それを引きちぎった。
一度目でやり方を掴んだ彼は次から次へと鎖をちぎる。
数回繰り返しているとついに愛のプリンセスの身体が自由になる。
「……ふみゃ」
意識がまだ怪しい愛のプリンセスは重力に従うように前向きに倒れ――その身体を受け止めるプリンス。
「起きろ」
「ふ……ふえ……?」
プリンスの右腕には受けた衝撃がまだ残っている、が、もう一方の腕が使えるので大きな問題は発生していない。
「早く」
「え……ふえええええ!?」
数十秒ほどで意識を取り戻せた愛のプリンセス。
しかし目の前に男性がいることに派手に驚く。
「ど、どどど、どなたですか……!?」
「盾のプリンス」
「あ……た、確かに……服装が、似て、ます……」
愛のプリンセスは目の前の盾のプリンスの姿をじっくり見てから彼が彼であることを認めた。
「髪、おろしたりして……どうしたのですか……?」
「それは今重要なことではない」
「ふええ……怖い……」
怯えた様子のプリンセスに、プリンスは淡々とした調子で声をかける。
「生きて帰るため、協力してほしい」
それに対しプリンセスは戸惑いつつも数回頷く。
「もちろん、です!」
プリンセスの目もとにはまだ涙の跡が残っている。顔色もあまり良くない。が、彼女の心は完全に折れきってはいない様子であった。
二人は視線を合わせて協力を確認する。
「それで……どうします? キャッスルへ帰って……?」
「キャッスルは無理と思われる」
「ふえ……? どうして、ですー……?」
「クイーンズキャッスルの球が斬られ、全員人の世へ落ちた」
それを聞いたプリンセスは何度も目をぱちぱちさせて首を傾げていた。
「ひとまずここを出よう」
「……ふぁい」
通路に誰もいないかを確認してから部屋を出る。
幸運か否かは定かでないが、周囲にはまだ誰もいない。そして、二人が勝手に拘束から逃れていることも、現時点では騒ぎにはなっていない。
「盾プリさん……あの……どうして、ここに?」
日頃は大騒ぎしている愛のプリンセスだがさすがに今は小さな声を出している。
「捕まって。元・剣のプリンスに恨まれている」
「恨まれ……どうしてですか……? 盾プリさんは代が違いますよね……」
「しかし母とは関係が良くなかったようだ」
「……そう、ですか」
事情を軽く聞いただけだがプリンセスは落ち込んだように肩を縮めた。
そして続ける。
「アイアイたち、殺されますかね」
困惑したような顔をするプリンス。
「せめて……みんなで、死にたかったな……」
プリンセスは声を震わせるが、プリンスはそっぽを向いた。
「生きて帰るために協力する。先ほどもそう言った。何度も言わせないでほしい、時間がもったいない」
「ふえ……」
「それと、すぐに泣くのはやめてくれ、不愉快だ」
「すみません……」
「時が来れば騒ぎを起こす。そうすれば恐らくだが元・剣のプリンスも出てくるだろう。できればあの男を倒したいが、それよりも、人の世へ戻ることを優先する」
「……ふぁい」
その時、青い髪の女性二人組みが角を曲がってきた。
横に並んで何やら相談しつつ歩いている彼女たちだが、通路に堂々と立っているプリンセスとプリンスを見逃すはずもなく。
一人は手を突き出して攻撃を仕掛け、もう一人は反対方向へ走る。
「ひゅわっ!」
愛のプリンセスはハートを飛ばして女性の攻撃を防ぐ。
「盾プリさん、攻撃しても良いですか?」
「あぁ」
「アイアイ頑張りますよーっ!」
青髪の女性は指を伸ばす攻撃で躊躇なく攻めてかかる。しかしプリンセスは怯まずハートをたくさん飛ばして攻撃を防いだ。
だがそうしているうちに青髪の女性たちが群れで現れる。
女性たちは皆「拘束します」「確保します」などと発しつつプリンセスプリンスたちに迫る。
「盾プリさん! たくさん来ますよ!」
「あぁ」
プリンスは盾を出し、プリンセスはハートとリボンを出し、集まってくる女性を近寄れないようにする。
現在通路に人の気配はない。彼にとっては幸運だった。無理矢理扉をこじ開けた彼は何事もなかったかのように歩き出す。もちろん、見つからないように気をつけて慎重には行動しているが。途中女性とすれ違いそうになった時には掃除用具箱の中に隠れて凌いだ。
進むにつれ、ぶええ、という声が大きくなってくる。
周囲への警戒を怠らないようにしつつも速やかに声がする方へと向かう。
泣き声か叫び声か分からないような大声の主が愛のプリンセスであるということは彼にも容易く想像できた。それゆえ彼は声の方へと向かったのだ。
声が溢れてくる部屋の銀の扉は半分ほど開いている。
盾のプリンスがその前まで来た時、室内には青い髪の女性が一人だけがいた。が、反応はなく、光る板のようなものを操作して凝視している。女性の意識は明らかに視線の先へ偏っており、背後に立つプリンスの気配にさえ気づいていない。
罠である可能性はある、そう思いながらも、プリンスは突っ込むことを決める。
女性に背後から迫り片手で首を掴む。女性は首を握られながらも指を伸ばし反撃した。青く塗られた爪がプリンスの頬をかすめる、が、プリンスは手の力を緩めない。細い首を躊躇なく握り潰した。
女性は崩れ落ちる。
手にしていた光る板は床に当たって数回跳ね少し離れたところへ転がった。
室内に敵はいない状態。とはいえそれが長時間続くとは考えづらい。盾のプリンスは壁に貼り付けられている愛のプリンセスの方へ足を進める。愛のプリンセスは彼の存在には気づいておらず、今もぶええと激しい鳴き声を漏らしながら苦しそうに目もとをぴくぴくさせていた。
「プリンセス」
プリンスはそう声をかける。
しかし返答はない。
会話することを諦めたプリンスは、愛のプリンセスの身体を締め付けている鎖に右手をかけ――指先から肩まで駆け抜ける黒い衝撃に驚きつつも、それを引きちぎった。
一度目でやり方を掴んだ彼は次から次へと鎖をちぎる。
数回繰り返しているとついに愛のプリンセスの身体が自由になる。
「……ふみゃ」
意識がまだ怪しい愛のプリンセスは重力に従うように前向きに倒れ――その身体を受け止めるプリンス。
「起きろ」
「ふ……ふえ……?」
プリンスの右腕には受けた衝撃がまだ残っている、が、もう一方の腕が使えるので大きな問題は発生していない。
「早く」
「え……ふえええええ!?」
数十秒ほどで意識を取り戻せた愛のプリンセス。
しかし目の前に男性がいることに派手に驚く。
「ど、どどど、どなたですか……!?」
「盾のプリンス」
「あ……た、確かに……服装が、似て、ます……」
愛のプリンセスは目の前の盾のプリンスの姿をじっくり見てから彼が彼であることを認めた。
「髪、おろしたりして……どうしたのですか……?」
「それは今重要なことではない」
「ふええ……怖い……」
怯えた様子のプリンセスに、プリンスは淡々とした調子で声をかける。
「生きて帰るため、協力してほしい」
それに対しプリンセスは戸惑いつつも数回頷く。
「もちろん、です!」
プリンセスの目もとにはまだ涙の跡が残っている。顔色もあまり良くない。が、彼女の心は完全に折れきってはいない様子であった。
二人は視線を合わせて協力を確認する。
「それで……どうします? キャッスルへ帰って……?」
「キャッスルは無理と思われる」
「ふえ……? どうして、ですー……?」
「クイーンズキャッスルの球が斬られ、全員人の世へ落ちた」
それを聞いたプリンセスは何度も目をぱちぱちさせて首を傾げていた。
「ひとまずここを出よう」
「……ふぁい」
通路に誰もいないかを確認してから部屋を出る。
幸運か否かは定かでないが、周囲にはまだ誰もいない。そして、二人が勝手に拘束から逃れていることも、現時点では騒ぎにはなっていない。
「盾プリさん……あの……どうして、ここに?」
日頃は大騒ぎしている愛のプリンセスだがさすがに今は小さな声を出している。
「捕まって。元・剣のプリンスに恨まれている」
「恨まれ……どうしてですか……? 盾プリさんは代が違いますよね……」
「しかし母とは関係が良くなかったようだ」
「……そう、ですか」
事情を軽く聞いただけだがプリンセスは落ち込んだように肩を縮めた。
そして続ける。
「アイアイたち、殺されますかね」
困惑したような顔をするプリンス。
「せめて……みんなで、死にたかったな……」
プリンセスは声を震わせるが、プリンスはそっぽを向いた。
「生きて帰るために協力する。先ほどもそう言った。何度も言わせないでほしい、時間がもったいない」
「ふえ……」
「それと、すぐに泣くのはやめてくれ、不愉快だ」
「すみません……」
「時が来れば騒ぎを起こす。そうすれば恐らくだが元・剣のプリンスも出てくるだろう。できればあの男を倒したいが、それよりも、人の世へ戻ることを優先する」
「……ふぁい」
その時、青い髪の女性二人組みが角を曲がってきた。
横に並んで何やら相談しつつ歩いている彼女たちだが、通路に堂々と立っているプリンセスとプリンスを見逃すはずもなく。
一人は手を突き出して攻撃を仕掛け、もう一人は反対方向へ走る。
「ひゅわっ!」
愛のプリンセスはハートを飛ばして女性の攻撃を防ぐ。
「盾プリさん、攻撃しても良いですか?」
「あぁ」
「アイアイ頑張りますよーっ!」
青髪の女性は指を伸ばす攻撃で躊躇なく攻めてかかる。しかしプリンセスは怯まずハートをたくさん飛ばして攻撃を防いだ。
だがそうしているうちに青髪の女性たちが群れで現れる。
女性たちは皆「拘束します」「確保します」などと発しつつプリンセスプリンスたちに迫る。
「盾プリさん! たくさん来ますよ!」
「あぁ」
プリンスは盾を出し、プリンセスはハートとリボンを出し、集まってくる女性を近寄れないようにする。
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