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episode.70 関わりの形
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そうだ、私たちは人間ではない。
人間と同じような姿をしているけれど、普通の人間とは違う。彼らと同じ心を持ち、しかしながら、彼らにはない特別な力を持っている。その力は敵をはね除けるのにはちょうど良いのだけれど、それを普通の人間が見たとしたら。
そこまで考えていなかったけれど、彼らからすれば私たちは異端であり、同じ生き物ではない……。
「……ン、クイーン?」
声をかけられて、思考の渦から救われる。
「プリンスさん……」
簡易椅子に座っていた私の顔を覗き込むようにして声をかけてきていたのは盾のプリンスだった。
今や、その灰色の髪を見るだけで少しほっとできる。
「すみません、何か用事でしたか」
「いやそうではなく」
「え? では……」
「体調が優れないように見えた」
彼は私の正面に立っていたのだが、言葉を発しながら片膝を床につけて座る。
「顔色が良くない」
よく見ているな……と思うがそこには触れない。
「何を考えている?」
「いえ、話すほどのことではありません」
面を持ち上げると、先ほど喧嘩していたあの男が見えた。しかし彼は今は怒ってはいないようだ。何が起きたのか分からない、というような顔をしたまま、一人寂しくその場に立っていた。一応停止し続けてはいないみたいだ、男は動けるようになっている。
時のプリンスとアオはもう室内にはいない。
「少しは仲良くなれたかと思ったが、どうやらまだ仲良くなれていないようだ」
それ、心の中で思うこと。
「言いたくなければ言わなくていい。無理はさせたくない」
「すみません」
「いや、謝ることはない」
見渡せば、皆、何事もなかったかのように思い思いのことをしている。
先ほどの騒ぎなんてまるで夢だったかのよう。
「そういえば、時のプリンスさんとアオさんは?」
盾のプリンスは一旦立ち上がると隣の席に座った。線の細い簡易椅子がぎしりと音を立てたので壊れないかとひやひやしたが今のところ大丈夫そうだ。
「出ていってまだ戻っていない」
「そうですか……」
あれから私は少し避難所内を見て回った。
この場所、思っていたより技術が進んでいる。
いろんなものがきちんと整備されていて、複数の人たちがある程度しっかりと暮らせるように作られていた。
森のプリンセスは係員の手伝いをしていた。その手伝いというのが、物資を運ぶことや施設内の掃除をすることで。自ら前向きに動いて馴染もうとする彼女の姿勢には尊敬しかなかった。
「これで全部です! ありがとうございました!」
「いえいえー」
ちなみに今はというと、森のプリンセスは係員の女性と話をしているところだ。
私は少し離れた壁の陰からその様子を覗き見ている。
「本当に助かりました、貴女が来てくれなかったら……私一人で運ばなくちゃならないところでしたから……」
「力になれたなら嬉しいわー。また何でも頼んでくださいね」
ベージュの髪を一本の三つ編みにしている係員の女性は柔らかな表情で森のプリンセスに接している。
まるで昔からの友人であったかのように、二人は良い関わり方をしていた。
プリンセスでも人間と仲良くなれる。
希望の灯火は消えないでほしい。
そんなことを思っていると……。
「ま! フレイヤちゃんじゃない!」
森のプリンセスに発見されてしまった。
「どうしてそんなところにいるのかしらー? 何か用?」
ちょっと恥ずかしい。
「あ、いえ……そういう意味では。二人の邪魔になったらあれだなと……」
「お気遣いありがとう! でももういいのよ? 今ね、ちょうど用事が終わったところなの」
ベージュ三つ編みの女性と別れた森のプリンセスはずんずん近づいてきた。
「お疲れ様です」
「うふふ、嬉しいわー」
「私も何かすること……あります?」
「フレイヤちゃんはごろごろしていて良いのよー?」
いやいや、それはまずいだろう。
「そういえば、他の皆さんは?」
「海は外で見張り、ウィリーは荷物運び、フローラは子どもたちのおもちゃよー」
子どもたちのおもちゃ、て……。
最初は意味が分からなかったのだが、森のプリンセスから聞いていくうちに段々分かってきた――ここには子どもの世話をするために部屋もあるらしくて、フローラはそこで子どもらの遊び相手をしているらしい。
妖精は怖がられないのか……?
子どもが相手だから大丈夫なのか……?
「フレイヤちゃんも子どもたちのところへ行く?」
「あ……その、荷物運びの方が」
実は子どもはあまり得意でない。
「そう! 分かったわー。でも、そういうことだと、今は用事がないわー。だからやっぱりごろごろしていてちょうだい?」
森のプリンセスはそう言って優しく微笑んだ。
どうやら私にできることはなさそうだ。
取り敢えず元いた部屋まで帰ろうと思って歩いていると、通路の一番奥辺りに置かれている横長の椅子に腰を下ろす人影が見えた。
ついそちらへ目をやってしまって。
ふと顔をこちらへ向けた座っている二人のうちの一人と目が合う。
「フレイヤちゃんさん……」
「アオさん!」
ここにいたのか、アオたちは。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい。私は何も」
通路の奥だからか辺りは薄暗い。
一応無灯ではないのだけれど。
「ただ、時のプリンスが誰もいないところにいたいと言うので、ここにいます」
アオはそう説明してくれた。
確かに時のプリンスもいる――が、彼は俯いて憂鬱そうな顔をしている。
「そうですか。……災難でしたね、変な人に絡まれて」
「すみません、あんなことになってしまって」
アオは少し彼の方へ腰を寄せ、椅子の端を空けてくれた。アオは華奢な手で空いた座面をとんとんと叩いて「どうぞ、よければ座ってください」と言ってくる。二人の時間を邪魔するようで申し訳ないような気もしたが、アオがそう言ってくれるなら、と、私はそこへ腰を下ろした。かなり狭いが座れないことはない。
「私がしっかりしていれば良かったのですが。ちょっとした騒ぎを起こしてしまいました。フレイヤちゃんさんも驚かれたのでは? すみませんでした」
「そんな! 謝らないでください。アオさんは何も悪くないです」
可愛いから別室で楽しく遊びたいなぁ~、なんて言われたら、誰だって対処に困るだろう。
人間と同じような姿をしているけれど、普通の人間とは違う。彼らと同じ心を持ち、しかしながら、彼らにはない特別な力を持っている。その力は敵をはね除けるのにはちょうど良いのだけれど、それを普通の人間が見たとしたら。
そこまで考えていなかったけれど、彼らからすれば私たちは異端であり、同じ生き物ではない……。
「……ン、クイーン?」
声をかけられて、思考の渦から救われる。
「プリンスさん……」
簡易椅子に座っていた私の顔を覗き込むようにして声をかけてきていたのは盾のプリンスだった。
今や、その灰色の髪を見るだけで少しほっとできる。
「すみません、何か用事でしたか」
「いやそうではなく」
「え? では……」
「体調が優れないように見えた」
彼は私の正面に立っていたのだが、言葉を発しながら片膝を床につけて座る。
「顔色が良くない」
よく見ているな……と思うがそこには触れない。
「何を考えている?」
「いえ、話すほどのことではありません」
面を持ち上げると、先ほど喧嘩していたあの男が見えた。しかし彼は今は怒ってはいないようだ。何が起きたのか分からない、というような顔をしたまま、一人寂しくその場に立っていた。一応停止し続けてはいないみたいだ、男は動けるようになっている。
時のプリンスとアオはもう室内にはいない。
「少しは仲良くなれたかと思ったが、どうやらまだ仲良くなれていないようだ」
それ、心の中で思うこと。
「言いたくなければ言わなくていい。無理はさせたくない」
「すみません」
「いや、謝ることはない」
見渡せば、皆、何事もなかったかのように思い思いのことをしている。
先ほどの騒ぎなんてまるで夢だったかのよう。
「そういえば、時のプリンスさんとアオさんは?」
盾のプリンスは一旦立ち上がると隣の席に座った。線の細い簡易椅子がぎしりと音を立てたので壊れないかとひやひやしたが今のところ大丈夫そうだ。
「出ていってまだ戻っていない」
「そうですか……」
あれから私は少し避難所内を見て回った。
この場所、思っていたより技術が進んでいる。
いろんなものがきちんと整備されていて、複数の人たちがある程度しっかりと暮らせるように作られていた。
森のプリンセスは係員の手伝いをしていた。その手伝いというのが、物資を運ぶことや施設内の掃除をすることで。自ら前向きに動いて馴染もうとする彼女の姿勢には尊敬しかなかった。
「これで全部です! ありがとうございました!」
「いえいえー」
ちなみに今はというと、森のプリンセスは係員の女性と話をしているところだ。
私は少し離れた壁の陰からその様子を覗き見ている。
「本当に助かりました、貴女が来てくれなかったら……私一人で運ばなくちゃならないところでしたから……」
「力になれたなら嬉しいわー。また何でも頼んでくださいね」
ベージュの髪を一本の三つ編みにしている係員の女性は柔らかな表情で森のプリンセスに接している。
まるで昔からの友人であったかのように、二人は良い関わり方をしていた。
プリンセスでも人間と仲良くなれる。
希望の灯火は消えないでほしい。
そんなことを思っていると……。
「ま! フレイヤちゃんじゃない!」
森のプリンセスに発見されてしまった。
「どうしてそんなところにいるのかしらー? 何か用?」
ちょっと恥ずかしい。
「あ、いえ……そういう意味では。二人の邪魔になったらあれだなと……」
「お気遣いありがとう! でももういいのよ? 今ね、ちょうど用事が終わったところなの」
ベージュ三つ編みの女性と別れた森のプリンセスはずんずん近づいてきた。
「お疲れ様です」
「うふふ、嬉しいわー」
「私も何かすること……あります?」
「フレイヤちゃんはごろごろしていて良いのよー?」
いやいや、それはまずいだろう。
「そういえば、他の皆さんは?」
「海は外で見張り、ウィリーは荷物運び、フローラは子どもたちのおもちゃよー」
子どもたちのおもちゃ、て……。
最初は意味が分からなかったのだが、森のプリンセスから聞いていくうちに段々分かってきた――ここには子どもの世話をするために部屋もあるらしくて、フローラはそこで子どもらの遊び相手をしているらしい。
妖精は怖がられないのか……?
子どもが相手だから大丈夫なのか……?
「フレイヤちゃんも子どもたちのところへ行く?」
「あ……その、荷物運びの方が」
実は子どもはあまり得意でない。
「そう! 分かったわー。でも、そういうことだと、今は用事がないわー。だからやっぱりごろごろしていてちょうだい?」
森のプリンセスはそう言って優しく微笑んだ。
どうやら私にできることはなさそうだ。
取り敢えず元いた部屋まで帰ろうと思って歩いていると、通路の一番奥辺りに置かれている横長の椅子に腰を下ろす人影が見えた。
ついそちらへ目をやってしまって。
ふと顔をこちらへ向けた座っている二人のうちの一人と目が合う。
「フレイヤちゃんさん……」
「アオさん!」
ここにいたのか、アオたちは。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい。私は何も」
通路の奥だからか辺りは薄暗い。
一応無灯ではないのだけれど。
「ただ、時のプリンスが誰もいないところにいたいと言うので、ここにいます」
アオはそう説明してくれた。
確かに時のプリンスもいる――が、彼は俯いて憂鬱そうな顔をしている。
「そうですか。……災難でしたね、変な人に絡まれて」
「すみません、あんなことになってしまって」
アオは少し彼の方へ腰を寄せ、椅子の端を空けてくれた。アオは華奢な手で空いた座面をとんとんと叩いて「どうぞ、よければ座ってください」と言ってくる。二人の時間を邪魔するようで申し訳ないような気もしたが、アオがそう言ってくれるなら、と、私はそこへ腰を下ろした。かなり狭いが座れないことはない。
「私がしっかりしていれば良かったのですが。ちょっとした騒ぎを起こしてしまいました。フレイヤちゃんさんも驚かれたのでは? すみませんでした」
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