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episode.65 それを狙って何になる?
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あれからも盾のプリンスは時折ここへやって来る。
やたらと気にかけてくれるが……そのたびにミクニが溜め息をつくので若干気まずい。
「急にすまない」
「プリンスさん……今日は何のご用ですか?」
こうして向き合うことにもさすがにもう慣れた。
緊張感はそれほどない。
しかし今日の彼は鞄を持っている――何だろう?
「来ない方が良かっただろうか」
「いえ、べつに、そういうわけではありません」
「実はこれを持ってきた」
彼は鞄の中から一冊の本のようなものとケース入りの数本のペンを取り出した。
「それは?」
「塗り絵というものらしい」
「えっと……塗り絵?」
「あぁそうだ。ここに絵が描かれているのだが、そこに色を塗る娯楽らしい」
「へぇ……」
そんな娯楽があるのは知らなかった。人間の世の中で育った私だけれど、塗り絵なるものを楽しんだことはなかったように思う。だが世界というのは広い。私が知らないところにそういう娯楽があったとしてもおかしな話ではない。ただ私が知らないだけ、ということも、十分考えられる。
「よければ試してみてほしい」
「掘り出し物ですか?」
「そういうことだ。こんなものでも少しは暇潰しにはなるだろう、と思って」
「ありがとうございます」
なぜ今この緊迫した状況の時にそんなものを持ってくるのか……とは思うけれど、まぁ、彼なりの優しさなのなら拒否するのも失礼だろう。
そう思って、一応、その場で挑戦してみることにした。
本のようなものを開くとそこには繊細な線で絵が描かれている。ぱらぱらと一通り眺めてみると、いろんなモチーフの絵があることが分かった。木々と小動物の絵、海の中を連想させるような絵、花の絵、と、ページごとに色々である。ただし、そのすべてが、色はついていないままだ。
取り敢えず木々と小動物の絵に色を塗ってみよう。
それにしても、いちいちインクをつけずとも色を塗ることのできるペン――これは非常に便利だ。
塗り放題である。
私が絵に色を塗っている間、盾のプリンスは近くにいて、ずっとこちらを眺めていた。
「あの」
視線を彼へ向け。
「さっきからこちらばかり見てません? 気のせいだったら……すみませんけど」
言ってから気づく。
これは気のせいだったら恥ずかしいやつでは!? と。
しかし彼はさらりと返してくる。
「見ている」
気のせいではなかったようで安堵。
「愛のプリンセスの件で弱っているのではないかと思っていたが、大丈夫そうで安心した」
「え?」
「君は前から愛のプリンセスのことを気にしていただろう。何だかんだで彼女のことを大切に思っていることは知っていた。だからこそ、君が弱ってはいないかと、気になって」
盾のプリンスは当たり前のことを言っているかのように淡々と言葉を紡ぐ。
「もしかして、それで塗り絵を?」
「悲しい時は何かで気を散らすのが一番かと思って」
「……そういうことだったんですね」
さて、そろそろ塗り絵も完成だ。
「はい! できました!」
慣れないペンの使い方には苦労した。いや、もちろん、常にインクが出るという点はとてもありがたいし便利なのだけれど。ただ、実際に塗る時になると、常にインクが出るがゆえの扱いの難しさもあったのだ。
少々雑な塗り方になってしまった。
そんな塗り絵を見た盾のプリンスは、さらりと「かなりはみ出ている」と言ってくる。私は若干恥ずかしい思いをしつつ「言わないでください……」と返しておいた。
まぁ、確かに、はみ出ているのは事実なのだが……。
何にせよ今回はまだ初回。塗り慣れていないから上手く塗れないのも仕方のないこと。慣れてくれば徐々に上手く塗れるようになるだろう。
――などと自分を励ましていた、その時。
「相変わっらず呑気なやつらだなぁ」
いつか聞いた声。
そして出現するあの時の男。
「はは。また来てやったぜ」
剣のプリンセスに若干似たような格好のその男性を、私は知っている。いや、私だけではない。盾のプリンスも、ミクニも、彼のことは知っているはずだ。だってあの時も二人はその場にいたから。
「……またか」
不愉快極まりない、という顔をするのは、盾のプリンス。
「俺気づいたんだ! プリンセスがいればいつでもここへ入れるーってことに! はっははは。いやーまさかこんな穴があったとはなぁ」
男性の背後には剣と杖のプリンセスが控えていた。
できれば二人とは戦いたくなかった……だって不利ではないか、こちらには高い攻撃力を誇る者はいないというのに。
「しっかしよぉ、盾の野郎は相変わらずクイーンが大好きだなぁ」
「放っておいてほしい」
「親譲りだなぁ、そのクイーンかぶれ」
「……知ったような口を利くな」
盾のプリンスは目もとに少々力を加え低めの声を出した。
「知ったような? 笑わせるなよ。知ってんだよ、俺は」
「何を……」
「なんたって俺は元・剣のプリンスだからな! つまり先代だよ先代!」
正体を明かすと同時に元・剣のプリンスを名乗る男性は斬りかかる。盾のプリンスは一枚の盾で斬撃を防ぐ、が、威力を殺しきれず身体の向きが僅かに傾いた。そこへ、男性は真横から足を出して。蹴られたくらいで大きく体勢を崩しはしないだろうと思ったのも束の間、盾のプリンスは右に向かって飛ばされる。
盾のプリンスはそのまま宙を飛び、壁に激突。
凄まじい威力だ、と、心の底から思った。
前に戦った時とは違っている。いや、前が本気でなかっただけという可能性はあるが。ただ、あの時とは戦闘能力が大きく違う。それだけは確かだ。だって、そうでなければ、そこそこ大きく重さもある盾のプリンスの身体を蹴りだけであれほど飛ばすことなどできるわけがない。
幸い、盾のプリンスはそれほどダメージを負っている様子ではない――その証拠に、既に立ち上がっている。
「今回は手加減はしない。情けないクイーンはここから消えろ」
「……お断りします」
「ふざけんな、断るも何もないんだよ。選べると思うなよ」
攻撃されるかと思ったが、元・剣のプリンスの視線は私には向いていなくて。意図が掴めず混乱する。だが数秒経たないうちに気づく。彼が見ているのは座のすぐ傍にある台に乗った球体だと。
狙いはそれなのか?
でも、それを狙って何になる?
元・剣のプリンスは愛剣を掲げ、球体に向かって振り下ろす。
「クイーン!」
そう呼ぶ声がして。
でも返事はできないまま辺りは白い光に包まれ――そこで意識は途絶えた。
やたらと気にかけてくれるが……そのたびにミクニが溜め息をつくので若干気まずい。
「急にすまない」
「プリンスさん……今日は何のご用ですか?」
こうして向き合うことにもさすがにもう慣れた。
緊張感はそれほどない。
しかし今日の彼は鞄を持っている――何だろう?
「来ない方が良かっただろうか」
「いえ、べつに、そういうわけではありません」
「実はこれを持ってきた」
彼は鞄の中から一冊の本のようなものとケース入りの数本のペンを取り出した。
「それは?」
「塗り絵というものらしい」
「えっと……塗り絵?」
「あぁそうだ。ここに絵が描かれているのだが、そこに色を塗る娯楽らしい」
「へぇ……」
そんな娯楽があるのは知らなかった。人間の世の中で育った私だけれど、塗り絵なるものを楽しんだことはなかったように思う。だが世界というのは広い。私が知らないところにそういう娯楽があったとしてもおかしな話ではない。ただ私が知らないだけ、ということも、十分考えられる。
「よければ試してみてほしい」
「掘り出し物ですか?」
「そういうことだ。こんなものでも少しは暇潰しにはなるだろう、と思って」
「ありがとうございます」
なぜ今この緊迫した状況の時にそんなものを持ってくるのか……とは思うけれど、まぁ、彼なりの優しさなのなら拒否するのも失礼だろう。
そう思って、一応、その場で挑戦してみることにした。
本のようなものを開くとそこには繊細な線で絵が描かれている。ぱらぱらと一通り眺めてみると、いろんなモチーフの絵があることが分かった。木々と小動物の絵、海の中を連想させるような絵、花の絵、と、ページごとに色々である。ただし、そのすべてが、色はついていないままだ。
取り敢えず木々と小動物の絵に色を塗ってみよう。
それにしても、いちいちインクをつけずとも色を塗ることのできるペン――これは非常に便利だ。
塗り放題である。
私が絵に色を塗っている間、盾のプリンスは近くにいて、ずっとこちらを眺めていた。
「あの」
視線を彼へ向け。
「さっきからこちらばかり見てません? 気のせいだったら……すみませんけど」
言ってから気づく。
これは気のせいだったら恥ずかしいやつでは!? と。
しかし彼はさらりと返してくる。
「見ている」
気のせいではなかったようで安堵。
「愛のプリンセスの件で弱っているのではないかと思っていたが、大丈夫そうで安心した」
「え?」
「君は前から愛のプリンセスのことを気にしていただろう。何だかんだで彼女のことを大切に思っていることは知っていた。だからこそ、君が弱ってはいないかと、気になって」
盾のプリンスは当たり前のことを言っているかのように淡々と言葉を紡ぐ。
「もしかして、それで塗り絵を?」
「悲しい時は何かで気を散らすのが一番かと思って」
「……そういうことだったんですね」
さて、そろそろ塗り絵も完成だ。
「はい! できました!」
慣れないペンの使い方には苦労した。いや、もちろん、常にインクが出るという点はとてもありがたいし便利なのだけれど。ただ、実際に塗る時になると、常にインクが出るがゆえの扱いの難しさもあったのだ。
少々雑な塗り方になってしまった。
そんな塗り絵を見た盾のプリンスは、さらりと「かなりはみ出ている」と言ってくる。私は若干恥ずかしい思いをしつつ「言わないでください……」と返しておいた。
まぁ、確かに、はみ出ているのは事実なのだが……。
何にせよ今回はまだ初回。塗り慣れていないから上手く塗れないのも仕方のないこと。慣れてくれば徐々に上手く塗れるようになるだろう。
――などと自分を励ましていた、その時。
「相変わっらず呑気なやつらだなぁ」
いつか聞いた声。
そして出現するあの時の男。
「はは。また来てやったぜ」
剣のプリンセスに若干似たような格好のその男性を、私は知っている。いや、私だけではない。盾のプリンスも、ミクニも、彼のことは知っているはずだ。だってあの時も二人はその場にいたから。
「……またか」
不愉快極まりない、という顔をするのは、盾のプリンス。
「俺気づいたんだ! プリンセスがいればいつでもここへ入れるーってことに! はっははは。いやーまさかこんな穴があったとはなぁ」
男性の背後には剣と杖のプリンセスが控えていた。
できれば二人とは戦いたくなかった……だって不利ではないか、こちらには高い攻撃力を誇る者はいないというのに。
「しっかしよぉ、盾の野郎は相変わらずクイーンが大好きだなぁ」
「放っておいてほしい」
「親譲りだなぁ、そのクイーンかぶれ」
「……知ったような口を利くな」
盾のプリンスは目もとに少々力を加え低めの声を出した。
「知ったような? 笑わせるなよ。知ってんだよ、俺は」
「何を……」
「なんたって俺は元・剣のプリンスだからな! つまり先代だよ先代!」
正体を明かすと同時に元・剣のプリンスを名乗る男性は斬りかかる。盾のプリンスは一枚の盾で斬撃を防ぐ、が、威力を殺しきれず身体の向きが僅かに傾いた。そこへ、男性は真横から足を出して。蹴られたくらいで大きく体勢を崩しはしないだろうと思ったのも束の間、盾のプリンスは右に向かって飛ばされる。
盾のプリンスはそのまま宙を飛び、壁に激突。
凄まじい威力だ、と、心の底から思った。
前に戦った時とは違っている。いや、前が本気でなかっただけという可能性はあるが。ただ、あの時とは戦闘能力が大きく違う。それだけは確かだ。だって、そうでなければ、そこそこ大きく重さもある盾のプリンスの身体を蹴りだけであれほど飛ばすことなどできるわけがない。
幸い、盾のプリンスはそれほどダメージを負っている様子ではない――その証拠に、既に立ち上がっている。
「今回は手加減はしない。情けないクイーンはここから消えろ」
「……お断りします」
「ふざけんな、断るも何もないんだよ。選べると思うなよ」
攻撃されるかと思ったが、元・剣のプリンスの視線は私には向いていなくて。意図が掴めず混乱する。だが数秒経たないうちに気づく。彼が見ているのは座のすぐ傍にある台に乗った球体だと。
狙いはそれなのか?
でも、それを狙って何になる?
元・剣のプリンスは愛剣を掲げ、球体に向かって振り下ろす。
「クイーン!」
そう呼ぶ声がして。
でも返事はできないまま辺りは白い光に包まれ――そこで意識は途絶えた。
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