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78話 訪れた年末
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四人での鍋パーティーは無事終了。
食後少し喋ったり寛いだりしてからローザは帰っていった。
「はー、楽しかったわねー」
ローザと色々話せたからか母親は満足しているようだ。日頃は私とリリィとくらいしか話すことのない母親だから、たまには他の人とも喋ったり関わったりしたいのかもしれない。
そういう意味では、ローザの存在も悪くはないのかも。
彼も母親のことを嫌ってはいないようだし、いつも快く喋り相手になってくれている。それに、喋っている時の様子も楽しそうだ。
「また誘ってもいいよ」
私はさらりと述べておく。
「そうねー、また何かあれば誘いたいわー」
「いつでも」
「ふふ、ありがとー」
母親が望むなら、それでも構わない。
彼と顔を合わせるのが発狂するほど嫌というわけでもないから。
◆
訪れた年末。
学校はもう冬休みに入っている。
窓から見える外はとても寒そう。しかし室内は暖房をかけているから寒くはない。と言っても、一日中完全に快適な状態を保てているのかといえばそうではないのだけれど。というのも、夜は足もとが冷えがちなのである。
「はーあ、もう年末かぁ」
終わりかけのカレンダーを眺めつつ独り言を呟く。
「年末?」
私の独り言にリリィは反応してきた。
こちらとしては彼女に話しかけたという認識ではなかった。思ったことをぽつりと発した、ただそれだけだ。しかし、室内にいた彼女は、話しかけられたと捉えたのかもしれない。もしそうだとしたら、それも分からないではない。前もって独り言だと宣言していたわけでもないし。
「あ、ううん、独り言」
「ふーん」
「でも年末なのは事実だよね」
「……だから、年末って?」
「え。年末は年末だよ。年の終わり、ってこと」
するとリリィは理解できたようで「そんな区切りがあるんだ」と呟くように返していた。
「そういえばさ、リリィと一緒の年末って初めてだよね」
「それが何?」
「何だか楽しいなーって」
リリィと出会う前は母親と過ごすのがほとんどだった。もちろんそれが嫌だったわけではないし、母親といられることの幸せさも感じていたけれど。ただ、リリィが傍にいてくれるなら、その幸福感はさらに高まるというものだ。
「リリィに会えて良かったなぁ」
「……っ」
なにげなく発した言葉に、リリィは詰まるような息を漏らした。
「ん? リリィ? どうしたの?」
「べ、べつに。何でもないし」
「何か変だよ? 大丈夫?」
「放っておいて! 日和には関係ないから!」
私は微笑んでそっと声をかける。
「うん、分かった。でも、もし私の手を借りたい時があったら、気軽に何でも言ってね」
必要以上にリリィの心を探ることはしたくない。
彼女にだって彼女だけの世界があるだろうから。
食後少し喋ったり寛いだりしてからローザは帰っていった。
「はー、楽しかったわねー」
ローザと色々話せたからか母親は満足しているようだ。日頃は私とリリィとくらいしか話すことのない母親だから、たまには他の人とも喋ったり関わったりしたいのかもしれない。
そういう意味では、ローザの存在も悪くはないのかも。
彼も母親のことを嫌ってはいないようだし、いつも快く喋り相手になってくれている。それに、喋っている時の様子も楽しそうだ。
「また誘ってもいいよ」
私はさらりと述べておく。
「そうねー、また何かあれば誘いたいわー」
「いつでも」
「ふふ、ありがとー」
母親が望むなら、それでも構わない。
彼と顔を合わせるのが発狂するほど嫌というわけでもないから。
◆
訪れた年末。
学校はもう冬休みに入っている。
窓から見える外はとても寒そう。しかし室内は暖房をかけているから寒くはない。と言っても、一日中完全に快適な状態を保てているのかといえばそうではないのだけれど。というのも、夜は足もとが冷えがちなのである。
「はーあ、もう年末かぁ」
終わりかけのカレンダーを眺めつつ独り言を呟く。
「年末?」
私の独り言にリリィは反応してきた。
こちらとしては彼女に話しかけたという認識ではなかった。思ったことをぽつりと発した、ただそれだけだ。しかし、室内にいた彼女は、話しかけられたと捉えたのかもしれない。もしそうだとしたら、それも分からないではない。前もって独り言だと宣言していたわけでもないし。
「あ、ううん、独り言」
「ふーん」
「でも年末なのは事実だよね」
「……だから、年末って?」
「え。年末は年末だよ。年の終わり、ってこと」
するとリリィは理解できたようで「そんな区切りがあるんだ」と呟くように返していた。
「そういえばさ、リリィと一緒の年末って初めてだよね」
「それが何?」
「何だか楽しいなーって」
リリィと出会う前は母親と過ごすのがほとんどだった。もちろんそれが嫌だったわけではないし、母親といられることの幸せさも感じていたけれど。ただ、リリィが傍にいてくれるなら、その幸福感はさらに高まるというものだ。
「リリィに会えて良かったなぁ」
「……っ」
なにげなく発した言葉に、リリィは詰まるような息を漏らした。
「ん? リリィ? どうしたの?」
「べ、べつに。何でもないし」
「何か変だよ? 大丈夫?」
「放っておいて! 日和には関係ないから!」
私は微笑んでそっと声をかける。
「うん、分かった。でも、もし私の手を借りたい時があったら、気軽に何でも言ってね」
必要以上にリリィの心を探ることはしたくない。
彼女にだって彼女だけの世界があるだろうから。
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