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49話 暑過ぎる、は、もはや呪い?
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その日、真っ直ぐ帰宅すると、家の前にリリィが立っていた。
「リリィ! また待っててくれたの?」
「風景を見てただけ」
「えーほんとー? でも大丈夫? 暑くなかった?」
初日は下校時間が早い。そのため今は真っ昼間。日差しが強く、かなり暑い。歩いているだけでしっかり汗をかくくらい。私の身体には汗で制服が張り付いていて、非常に気持ち悪い状態になっている。これも強い日差しと暑さのせいだ。
「平気」
「リリィって案外強いね」
どちらかというと色白だし運動好きな雰囲気でもない。それゆえ、何となく、リリィは日差しに弱そうなイメージを抱いてしまっている。しかし案外そうでもないようだ。暑さへの耐性はあるみたいだ。もしかしたら私より暑さに強いかもしれない。
「このくらい普通だと思うケド」
「私はもう死にかけてるよー」
「ふーん。日和が弱いんじゃない」
「えーっ、それはないよーっ! いーいーかーたー!」
そんな風に言葉を交わしつつ、私とリリィは家の中へ移動した。
自室に着いた瞬間制服を脱ぎ捨てる。
幸い冷房はかかっていた。そのため、制服を脱いだ瞬間、肌に冷風が触れる。その心地よさといったら、言葉にはできないような心地よさ。薄着になって冷風を浴びていると、たまらなく幸せな気分になる。
「氷貰ってくる」
「ありがとー! 助かるー!」
リリィは一旦私と一緒に自室まで来てくれたのだが、また部屋を出ていった。
氷を貰ってきてくれるということなので、非常にありがたい。今一番欲しいものは身体を冷やせるものだ、よく分かってくれている。
冷風を浴びながら、リリィの背を見送った。
しかし暑い。それにしても暑い。全身汗だらけ、今すぐシャワーを浴びたいくらい。気温自体は一年の中で最高というわけではないのだけれど、それでも、外を歩いているとかなり暑く感じる。汗でびっしょり、凄く疲れた。
取り敢えず床に座り込む。
「あー、あっつー」
誰も聞いていないと知りながらも言葉を発する。
当然、これは誰かに対する発言ではない。
「あっつー、あっつー、あっつすぎぃーあっつぅー」
もはや『暑い』ということしか言えない。馬鹿みたいに繰り返す。今の私を見ている人がいたら、きっと、どうにかなってしまったと誤解するだろう。でも仕方ないのだ。そうなってしまうくらい暑かったから。
刹那、扉が開いた。
心臓が大きく跳ねる。
「騒ぎ過ぎ」
「あっ」
扉を開けたのはリリィだった。
「あっつーの連呼何? 呪いか何か?」
お盆を持ったリリィは冷たい視線をこちらへ向けてきていた。
まずい……独り言を聞かれていたようだ……嫌われていないといいのだが……。
「ううん、暑すぎて」
「そ。変な呪いにでもかかったかと思った。ま、それならいいケド」
「ごめーん。つい」
「はい、飲み物とか氷とか持ってきた」
「ありがとう!」
「これジュース」
「やったー! ありがとー!」
白濁したジュースと氷がいくつか入ったグラスを受け取ると、まずはグラスそのもので手を冷やす。そして、手が冷える快感を堪能してから、唇をグラスの端に当てる。グラスを僅かに傾ければ、甘く爽やかな液体が口腔内に流れ込んでくる。
「リリィ! また待っててくれたの?」
「風景を見てただけ」
「えーほんとー? でも大丈夫? 暑くなかった?」
初日は下校時間が早い。そのため今は真っ昼間。日差しが強く、かなり暑い。歩いているだけでしっかり汗をかくくらい。私の身体には汗で制服が張り付いていて、非常に気持ち悪い状態になっている。これも強い日差しと暑さのせいだ。
「平気」
「リリィって案外強いね」
どちらかというと色白だし運動好きな雰囲気でもない。それゆえ、何となく、リリィは日差しに弱そうなイメージを抱いてしまっている。しかし案外そうでもないようだ。暑さへの耐性はあるみたいだ。もしかしたら私より暑さに強いかもしれない。
「このくらい普通だと思うケド」
「私はもう死にかけてるよー」
「ふーん。日和が弱いんじゃない」
「えーっ、それはないよーっ! いーいーかーたー!」
そんな風に言葉を交わしつつ、私とリリィは家の中へ移動した。
自室に着いた瞬間制服を脱ぎ捨てる。
幸い冷房はかかっていた。そのため、制服を脱いだ瞬間、肌に冷風が触れる。その心地よさといったら、言葉にはできないような心地よさ。薄着になって冷風を浴びていると、たまらなく幸せな気分になる。
「氷貰ってくる」
「ありがとー! 助かるー!」
リリィは一旦私と一緒に自室まで来てくれたのだが、また部屋を出ていった。
氷を貰ってきてくれるということなので、非常にありがたい。今一番欲しいものは身体を冷やせるものだ、よく分かってくれている。
冷風を浴びながら、リリィの背を見送った。
しかし暑い。それにしても暑い。全身汗だらけ、今すぐシャワーを浴びたいくらい。気温自体は一年の中で最高というわけではないのだけれど、それでも、外を歩いているとかなり暑く感じる。汗でびっしょり、凄く疲れた。
取り敢えず床に座り込む。
「あー、あっつー」
誰も聞いていないと知りながらも言葉を発する。
当然、これは誰かに対する発言ではない。
「あっつー、あっつー、あっつすぎぃーあっつぅー」
もはや『暑い』ということしか言えない。馬鹿みたいに繰り返す。今の私を見ている人がいたら、きっと、どうにかなってしまったと誤解するだろう。でも仕方ないのだ。そうなってしまうくらい暑かったから。
刹那、扉が開いた。
心臓が大きく跳ねる。
「騒ぎ過ぎ」
「あっ」
扉を開けたのはリリィだった。
「あっつーの連呼何? 呪いか何か?」
お盆を持ったリリィは冷たい視線をこちらへ向けてきていた。
まずい……独り言を聞かれていたようだ……嫌われていないといいのだが……。
「ううん、暑すぎて」
「そ。変な呪いにでもかかったかと思った。ま、それならいいケド」
「ごめーん。つい」
「はい、飲み物とか氷とか持ってきた」
「ありがとう!」
「これジュース」
「やったー! ありがとー!」
白濁したジュースと氷がいくつか入ったグラスを受け取ると、まずはグラスそのもので手を冷やす。そして、手が冷える快感を堪能してから、唇をグラスの端に当てる。グラスを僅かに傾ければ、甘く爽やかな液体が口腔内に流れ込んでくる。
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