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27話 授業終了後
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迎える前には若干溜め息も出る平日とはいえ、永遠ではない。いざその日を迎えてしまえば、案外、時間はあっさりと過ぎていくものだ。何か問題が発生した日などは別だけれど。平和であれば、基本、あっという間に帰りの時間を迎える。
「今日もあっという間だったね!」
帰りしな、一応、小雪に声をかけておく。
「それいっつも言ってない?」
「そうかも」
「でしょー。じゃ! また明日」
「うん! またね!」
荷物をまとめ友達に別れを告げてから教室を出る。
廊下にはまだ人混みができている。
この時間はいつもこうである。というのも、多くのクラスが同じ時間帯に解散になるのだ。多くのクラスの解散となる時間が重なっているため、廊下に生徒が一斉に出てきて、周辺が混雑してしまうのである。
私は掻き分けるようにして人混みを突き進む。
ぼんやりしていたらどこかへ押し流されてしまいそうだ。
密集しているところでは少しも気が抜けない。多くの人が集まっているこの場所で気を抜いていたら、誰かの鞄が当たってきたり、その結果痛い目に遭ったりしてしまいかねないから。鞄をしっかり抱え、しかし前を見て、どちらも欠かさずに歩くことが必要だ。
「はぁーっ」
ようやく人混みを抜けた。
自然に出る軽めの溜め息。
歩き続けるとやがて校門が見えてくる。この辺りまで来るともう人は少ない。といっても誰もいないわけではないのだけれど。ただ、比較的空いていて、苦なく歩くことができる。
そうして校門を通り過ぎようとした、刹那。
突然現れた全身黒タイツの人物に腕を掴まれ、黒い自動車の中へ放り込まれた。
「っ……!」
後部座席の尻に接する部分はクッション性がある。が、勢いよく腰から落ちると多少痛みはあった。激痛、というほどではないが。また、びぃんと響く感覚もあり、これがさりげなく不快だ。
それにしても、これは一体何が起こったのだろう。
これが俗にいう誘拐というやつなのだろうか。
全身黒タイツの者たちも謎だが、それ以前に謎が多い。なぜ私を狙ったのか、とか、誰でも良かったのかそうではないのか、とか。
しかし当然ながらそんな質問をできる空気ではない。
「ジットシテイロ」
「……はい」
下手に刺激してしまったら何をされるか分からない、ということで、ひとまずじっとしておくことにした。勝ち目があるなら暴れるという手もあるが、味方がいないこの状況だとさすがにそれはできない。ここで変に暴れれば、もっと酷い目に遭わされる可能性だってある。
自動車の扉が閉まった。
ほんの数秒の間の後、自動車は走り出す。
車窓から一瞬人影が見えたような気もしたが、その人影が助けてくれることもなく。私はただ後部座席でじっとしていることしかできなかった。
「どこへ行くのですか?」
走り出してしばらく経ってから、私は、すぐ横に座っている全身黒タイツの人物に尋ねてみた。
しかしその人は「コタエルヒツヨウハナイ」としか返してくれなかった。
後部座席に乗せているということは、今すぐ殺す気はないのだろう。だが、なぜ私を狙うのか、そこがよく分からない。私のような一般人を誘拐したって何もないだろうに。
私はこれからどうなってしまうのだろう?
この車の行く先は?
胸に疑問が大量に詰まったまま、時が経つのを待つ。
「今日もあっという間だったね!」
帰りしな、一応、小雪に声をかけておく。
「それいっつも言ってない?」
「そうかも」
「でしょー。じゃ! また明日」
「うん! またね!」
荷物をまとめ友達に別れを告げてから教室を出る。
廊下にはまだ人混みができている。
この時間はいつもこうである。というのも、多くのクラスが同じ時間帯に解散になるのだ。多くのクラスの解散となる時間が重なっているため、廊下に生徒が一斉に出てきて、周辺が混雑してしまうのである。
私は掻き分けるようにして人混みを突き進む。
ぼんやりしていたらどこかへ押し流されてしまいそうだ。
密集しているところでは少しも気が抜けない。多くの人が集まっているこの場所で気を抜いていたら、誰かの鞄が当たってきたり、その結果痛い目に遭ったりしてしまいかねないから。鞄をしっかり抱え、しかし前を見て、どちらも欠かさずに歩くことが必要だ。
「はぁーっ」
ようやく人混みを抜けた。
自然に出る軽めの溜め息。
歩き続けるとやがて校門が見えてくる。この辺りまで来るともう人は少ない。といっても誰もいないわけではないのだけれど。ただ、比較的空いていて、苦なく歩くことができる。
そうして校門を通り過ぎようとした、刹那。
突然現れた全身黒タイツの人物に腕を掴まれ、黒い自動車の中へ放り込まれた。
「っ……!」
後部座席の尻に接する部分はクッション性がある。が、勢いよく腰から落ちると多少痛みはあった。激痛、というほどではないが。また、びぃんと響く感覚もあり、これがさりげなく不快だ。
それにしても、これは一体何が起こったのだろう。
これが俗にいう誘拐というやつなのだろうか。
全身黒タイツの者たちも謎だが、それ以前に謎が多い。なぜ私を狙ったのか、とか、誰でも良かったのかそうではないのか、とか。
しかし当然ながらそんな質問をできる空気ではない。
「ジットシテイロ」
「……はい」
下手に刺激してしまったら何をされるか分からない、ということで、ひとまずじっとしておくことにした。勝ち目があるなら暴れるという手もあるが、味方がいないこの状況だとさすがにそれはできない。ここで変に暴れれば、もっと酷い目に遭わされる可能性だってある。
自動車の扉が閉まった。
ほんの数秒の間の後、自動車は走り出す。
車窓から一瞬人影が見えたような気もしたが、その人影が助けてくれることもなく。私はただ後部座席でじっとしていることしかできなかった。
「どこへ行くのですか?」
走り出してしばらく経ってから、私は、すぐ横に座っている全身黒タイツの人物に尋ねてみた。
しかしその人は「コタエルヒツヨウハナイ」としか返してくれなかった。
後部座席に乗せているということは、今すぐ殺す気はないのだろう。だが、なぜ私を狙うのか、そこがよく分からない。私のような一般人を誘拐したって何もないだろうに。
私はこれからどうなってしまうのだろう?
この車の行く先は?
胸に疑問が大量に詰まったまま、時が経つのを待つ。
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