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前編
しおりを挟む三つ年上の姉はたびたび唾をかけてくる。
なんて汚い人……。
きっと誰もがそう思うだろう。
彼女の悪しき行為を目にしたなら。
でも彼女は人前ではやらず、私と二人の時を狙ってそういうことをしてくるのだ。
分かるか? その酷さ、気持ち悪さ。
そんな姉には婚約者がいて、その婚約者の男性はそこそこ良い家の出の人。それゆえ姉は私をかなり下に見ている。私は彼に選ばれたけど貴女は誰からも選ばれていない、みたいなことばかり彼女は言っていて。彼女の中では私は奴隷みたいな存在でしかないようなのだ。
だが、そんなある日、姉は急に婚約破棄された。
で、その理由が、驚きの者であった。
というのも婚約者の彼は姉が私に唾をかけているところを数回目撃していたようなのだ。
それで「汚い行為を平気でできる人とはやっていけない」とのことで。
そういった驚きの理由を提示しての婚約破棄であった。
「あんたのせいよ! 全部! あんたがこの世に存在したからあたしまで不幸になるの……許せない許せない、許せない……許せないッ!!」
姉はそんなことを発しながら鬼のような形相で殴りかかろうとしてくる――が、刹那、駆けつけた父が棒で姉を背後から殴って気絶させた。
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