婚約破棄から始まる破滅

四季

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1話

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 フェミーアの王女である私——ミルネア・フェミーアには、まだ小さい頃に決められた婚約者がいる。

 その婚約者とは、隣国の王子の一人である。

 名はカルビ。
 少々個性的な名前ではあるけれど、正真正銘その国の王の子だ。

 私と彼は齢十にも満たない頃から将来結婚することになっていた。そして、そのことがあるからと、何度か顔を合わせる機会があった。

 カルビは若干頼りない雰囲気だが、性格には特に問題はない。まったりした笑顔が印象的な、穏やかで害のない人物であった。

 私たちは友だちのように交流を重ねてきた。

 彼と過ごす時間はそれなりに楽しい。不快感はない。互いの情報を交換したり、ゆっくりお茶を飲んだり、そこそこ良い関係を築けている——つもりでいた。

 でも、それは私の勝手な思い込みだったのかもしれない。


 ◆


「ミルネア、婚約を解消してほしいんだ」

 ある日突然彼からそう告げられた。

 最初は何が何だか分からなくて、ただ愕然とすることしかできなかった。
 だって、直前まで、彼の様子はおかしくなかったのだ。これまでと何ら変わりなかったのだ。それなのにいきなりこんなことを言われるなんて。そんなものは、到底理解できる話ではない。

「そんな……どうしていきなり……?」

 仲良しだった。
 心を通い合わせることができていると、迷いなく信じていた。

「実は、その、僕には恋人がいるんだ」
「恋人……?」
「そうなんだ。彼女はとても優しくて美しい。僕は彼女が好きなんだ」

 あぁ、そうか。

 彼は私のことなんて見てはいなかったのか。
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