1 / 4
1話
しおりを挟む
フェミーアの王女である私——ミルネア・フェミーアには、まだ小さい頃に決められた婚約者がいる。
その婚約者とは、隣国の王子の一人である。
名はカルビ。
少々個性的な名前ではあるけれど、正真正銘その国の王の子だ。
私と彼は齢十にも満たない頃から将来結婚することになっていた。そして、そのことがあるからと、何度か顔を合わせる機会があった。
カルビは若干頼りない雰囲気だが、性格には特に問題はない。まったりした笑顔が印象的な、穏やかで害のない人物であった。
私たちは友だちのように交流を重ねてきた。
彼と過ごす時間はそれなりに楽しい。不快感はない。互いの情報を交換したり、ゆっくりお茶を飲んだり、そこそこ良い関係を築けている——つもりでいた。
でも、それは私の勝手な思い込みだったのかもしれない。
◆
「ミルネア、婚約を解消してほしいんだ」
ある日突然彼からそう告げられた。
最初は何が何だか分からなくて、ただ愕然とすることしかできなかった。
だって、直前まで、彼の様子はおかしくなかったのだ。これまでと何ら変わりなかったのだ。それなのにいきなりこんなことを言われるなんて。そんなものは、到底理解できる話ではない。
「そんな……どうしていきなり……?」
仲良しだった。
心を通い合わせることができていると、迷いなく信じていた。
「実は、その、僕には恋人がいるんだ」
「恋人……?」
「そうなんだ。彼女はとても優しくて美しい。僕は彼女が好きなんだ」
あぁ、そうか。
彼は私のことなんて見てはいなかったのか。
その婚約者とは、隣国の王子の一人である。
名はカルビ。
少々個性的な名前ではあるけれど、正真正銘その国の王の子だ。
私と彼は齢十にも満たない頃から将来結婚することになっていた。そして、そのことがあるからと、何度か顔を合わせる機会があった。
カルビは若干頼りない雰囲気だが、性格には特に問題はない。まったりした笑顔が印象的な、穏やかで害のない人物であった。
私たちは友だちのように交流を重ねてきた。
彼と過ごす時間はそれなりに楽しい。不快感はない。互いの情報を交換したり、ゆっくりお茶を飲んだり、そこそこ良い関係を築けている——つもりでいた。
でも、それは私の勝手な思い込みだったのかもしれない。
◆
「ミルネア、婚約を解消してほしいんだ」
ある日突然彼からそう告げられた。
最初は何が何だか分からなくて、ただ愕然とすることしかできなかった。
だって、直前まで、彼の様子はおかしくなかったのだ。これまでと何ら変わりなかったのだ。それなのにいきなりこんなことを言われるなんて。そんなものは、到底理解できる話ではない。
「そんな……どうしていきなり……?」
仲良しだった。
心を通い合わせることができていると、迷いなく信じていた。
「実は、その、僕には恋人がいるんだ」
「恋人……?」
「そうなんだ。彼女はとても優しくて美しい。僕は彼女が好きなんだ」
あぁ、そうか。
彼は私のことなんて見てはいなかったのか。
11
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
薬屋の一人娘、理不尽に婚約破棄されるも……
四季
恋愛
薬屋の一人娘エアリー・エメラルドは新興領地持ちの家の息子であるカイエル・トパーヅと婚約した。
しかし今、カイエルの心は、エアリーには向いておらず……。
話が違います! 女性慣れしていないと聞いていたのですが
四季
恋愛
領地持ちの家に長女として生まれた私。
幼い頃から趣味や好みが周囲の女性たちと違っていて、女性らしくないからか父親にもあまり大事にしてもらえなかった。
そんな私は、十八の誕生日、父親の知り合いの息子と婚約することになったのだが……。
【完結】デート商法にひっかかった王太子が婚約破棄とかしてきたので、現実見させてやりました
幌あきら
恋愛
私はアネット・オールセン公爵令嬢。
この国のオーブリー王太子の婚約者。
自分で言うのもなんだけど、名門公爵家の長女という身分もさることながら、これまで勉学も淑女教育もみごとにこなし、今や未来の王太子妃として一目置かれる存在になったと思うわ。
私の婚約者だって非の打ち所がないともっぱらの噂。とてもかっこよくて紳士的で優しい。聡明さだって兼ね備えちゃう。
でも、なんだか最近、婚約者がうっきうき。
女の勘で「何かあるな」とピンと来たら、彼の侍従長が持ってきた帳簿の支出を見て、浮気を確信!!!
どうしたものかと婚約者の身の回りを調べていたら、私と『婚約破棄』するつもりなんですって!!!
してご覧なさい、『婚約破棄』。私だって、ただで見ているつもりはありませんわよ。
他サイト様にも投稿しています。
全2話・予約投稿済み
冤罪により婚約破棄されて国外追放された王女は、隣国の王子に結婚を申し込まれました。
香取鞠里
恋愛
「マーガレット、お前は恥だ。この城から、いやこの王国から出ていけ!」
姉の吹き込んだ嘘により、婚約パーティーの日に婚約破棄と勘当、国外追放を受けたマーガレット。
「では、こうしましょう。マーガレット、きみを僕のものにしよう」
けれど、追放された先で隣国の王子に拾われて!?
王太子に婚約破棄されたら、王に嫁ぐことになった
七瀬ゆゆ
恋愛
王宮で開催されている今宵の夜会は、この国の王太子であるアンデルセン・ヘリカルムと公爵令嬢であるシュワリナ・ルーデンベルグの結婚式の日取りが発表されるはずだった。
「シュワリナ!貴様との婚約を破棄させてもらう!!!」
「ごきげんよう、アンデルセン様。挨拶もなく、急に何のお話でしょう?」
「言葉通りの意味だ。常に傲慢な態度な貴様にはわからぬか?」
どうやら、挨拶もせずに不躾で教養がなってないようですわね。という嫌味は伝わらなかったようだ。傲慢な態度と婚約破棄の意味を理解できないことに、なんの繋がりがあるのかもわからない。
---
シュワリナが王太子に婚約破棄をされ、王様と結婚することになるまでのおはなし。
小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる