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後編

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「これは……一体何?」

 私が入ってきたことに狼狽えるプラリネ。
 どうやら彼は本当にバレていないと思っていたようだ。

「ち、ちちち、違うんだ! これは!」

 彼は青ざめている。

「……そちらの方は?」
「か、かか、彼女は学園時代の後輩でっ……!」
「後輩?」
「あぁそうなんだ! ただの後輩! ただの!」

 私は一度ゆっくりと頷く。

「慌てなくていいのよ、前から知っていたから。じゃ、婚約は破棄させてもらうわ」
「そ、そんな! 待って! こ、これは、無理矢理誘われて……!」
「嘘つかなくていいわ。毎日彼女を自室に呼び寄せていることとか、夜な夜な変な声を出していることとか、もう色々知っているから。それに、証拠もあるから。さようなら」

 こうして私たちの婚約は破棄となった。

 その後プラリネには慰謝料支払いの命令が出された。しかし彼の貯金だけでは足りず、親にも助けを求めることとなったそうだ。そうして慰謝料は何とか無事払われた。しかし、プラリネは、清らかでない行為に激怒した父親から勘当を言い渡されたそうだ。

 また、彼は、「ただの後輩」などと言ってしまったことによって、愛していた彼女も怒らせてしまったらしくて。

 結局あの後すぐに彼女とも会えなくなったそうだ。
 向こうがプラリネの前から去ったのである。

 プラリネは一人寂しく生き、両親が亡くなった二年後の五十八歳でこの世を去ったらしい。


◆終わり◆
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