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後編

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 ◆


 あれから数年が経った。

 私は今、愛する人と結婚し、穏やかな幸せを手に入れられている。

「持ってきたよ、前に言っていたやつ」
「あ! もしかして書類?」
「そうそう」

 あの日、襲いかかってきた女から私を護ってくれた、通りすがりの人だった彼。

 その人こそが今の私の夫である。

 意外だろうか? いや、実際、私も意外に思っている。確かに衝撃的な出会いではあった、が、まさかその彼と進展するなんて。そんなことは思わないだろう? ……普通は。たとえ出会いに運命を感じたとしても、通常であれば、それ以上のことになる展開なんて想像しないだろう?

 でも私たち二人は太い縁で結ばれていた。

 だからこそ、自然な流れで結ばれたのだ。

 これは運命だったのだろう。
 あそこで出会うことも、そこから一気に仲良くなり進展していくことも、何もかもすべて。
 きっと決まっていたのだろう。
 生まれる前から決まっていたか、あるいは、どこかの時点で神の意思によってそう決められたのだろう。

「見つかったのね!」
「うん見つかったんだ。ちょっと探したらすぐ発見できたよ」
「あらそうだったの。なら良かった! ああ、見つかって良かったわ……じゃあそこに置いておいてもらっていい?」
「オッケー」
「お願いね」
「はーい」

 ちなみに元婚約者の男とあの日私を殺そうとした女はというと、地獄へ堕ちたようだ。

 あの後二人でこっそり密室で過ごしている時に、そこへ山賊が入ってきて襲われ、捕まってしまったそう。
 そして二人同時に山奥の小屋に監禁されたそうで。
 二人は自由に殴る蹴るの暴行を加えることができる玩具としてそこにしばらく置かれ続け、山賊らに好き放題散々酷いことをされたうえ、最後は殺されてしまったそうだ。


◆終わり◆
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