2 / 2
後編
しおりを挟む◆
あれから半年、私は最近編み物で作った品を売る仕事を始めている。
「これくださ~い」
「はい! お買い上げありがとうございます!」
「すみませんこれってー」
「はい、対応しますので少しだけお待ち下さい!」
もともと編み物が趣味だったので、それを仕事にしてみた形だ。
本当は仕事せずとも生きてはゆけるのだけれど。
何もしないでぼんやりしているというのもおかしな感じがして、それで、こういう仕事を初めてみたのだ。
あくまで趣味の延長線上にある程度のものだけれど。
それでも、何もしていないよりかは、毎日に張りも生まれるというものである。
「――すみません、これ」
「あ、はいっ……って、え!? 貴方は!!」
そんな中で出会ったのが――。
「申し訳ありません、事前連絡もなく来店してしまい」
「え……あ、いや、いいんです、けど……」
――白銀の髪を持つ美男子系王子フィティプであった。
「こちらの商品が気に入りました、とても美しいです。なので購入させていただきたいのですが、可能でしょうか?」
「……あ、はい、可能です」
「ありがとう。ではこちらをお願いします」
「少々お待ちください! すぐに対応いたします!」
王子との出会い、なんて、欠片ほども想像していなくて。でもその時は実際にやって来た。そしてそれは、私の人生を大きく変えてゆくこととなる。
「ありがとうございました、とても素敵な作品でした」
「ご来店ありがとうございました」
「またタイミングがあればこっそり来ますね。次来る時にはなるべく前もって連絡するようにします」
◆
何がどうなったのか、私はフィティプ王子の妻の座に収まった。
彼がアプローチしてくれて。
それで何となく流れで。
気づけば私は王時の妻となっていたのだった。
人生、不思議なこともあるものだ。
けれども私はこの道を選んだことを悔やんではいない。否、むしろ良かったと思っている。彼の妻となれたおかげで今は好きなように編み物に取り組めている、将来の不安もなくなった。そういう意味では、彼には大変世話になっているし助けられてもいるのだ。
ちなみにアンドレーはというと、あの後大恋愛をするも両家から反対を受け別れざるを得なくなってしまいそれによって心が壊れてしまったらしく、今は実家で親と一緒に暮らしているが一日中よく分からない踊りを踊っているような状態だそうだ。
かつてのアンドレーはもうこの世にはいない。
◆終わり◆
0
お気に入りに追加
6
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
魔法を使える私はかつて婚約者に嫌われ婚約破棄されてしまいましたが、このたびめでたく国を護る聖女に認定されました。
四季
恋愛
「穢れた魔女を妻とする気はない! 婚約は破棄だ!!」
今日、私は、婚約者ケインから大きな声でそう宣言されてしまった。
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
わがまま妹、自爆する
四季
恋愛
資産を有する家に長女として生まれたニナは、五つ年下の妹レーナが生まれてからというもの、ずっと明らかな差別を受けてきた。父親はレーナにばかり手をかけ可愛がり、ニナにはほとんど見向きもしない。それでも、いつかは元に戻るかもしれないと信じて、ニナは慎ましく生き続けてきた。
そんなある日のこと、レーナに婚約の話が舞い込んできたのだが……?
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
力を失くした無能聖女だと王に捨てられましたが…その後、彼は破滅の道を辿りました。
coco
恋愛
失敗続きの私は、王に無能聖女と罵られ、城から追放された。
でもその結果、彼は破滅の道を辿る事となった─。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる