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前編
しおりを挟む「君は本当に地味だね、ぱっとしない。……もう耐えられないよ。ということで、今日こそは告げさせてもらうよ」
婚約者アンドレーが何やら言いたいことがあるようだ。
「何を、ですか?」
「じゃあ言うね」
「え、あ、はい。どうぞ」
許可を出せば。
「君との婚約、破棄とする!!」
彼は勢いのある声でそんなことを告げてきた。
「えええーっ」
思わず出てしまう驚きの声。
こればかりはどうしようもない。
とめられるものではないから。
「ふふ、驚いているみたいだね。でも本気なんだよ。君は僕に相応しい女性ではない、そう思うんだ。だから……もうおしまいにしよう」
アンドレーは薄い唇に何やら楽しげな黒い笑みを滲ませる。
どうやら私の反応を楽しんでいるようだ。
「本気なのですか……信じられません……」
「だとしても、本気であることは変わらないよ」
「ま、まぁ、そうですよね……」
「ああもちろん。分かってはいるみたいだね? ふふ、賢いじゃないか」
「分かりました、では私はこれで」
「泣いて謝るかい? もしそれができるなら少しは――」
「いえいえ、結構ですよ」
驚いているところを見てにやにや笑われるのは悔しい。
だからこそ彼に縋りつくようなことはしたくない。
そんなことをしたらきっとさらににやにやされてしまうだろう、そんなのは想像するだけでも不快だし嫌だ。
「さようなら、アンドレーさん」
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