あたしとノアと

四季

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前編

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 小さい頃、あたしはずっと一人だった。

 その日を生きるためにどんなことだってした。どんなにじっとしていてもお腹は空くから、毎日市場の店からパンを盗って逃げた。
 みんなからは「泥棒」って、「最低」って言われたけど、そんなことは全然気にしてない。

 でもね、叶うことならもう一度家族が欲しい。本当はそう思っていたんだ。


 あれは凄まじい雷雨の日。その日もあたしは市場でパンを盗んで逃げていたの。
 大人たちに追われて逃げ込んだ森の中で倒れている小さな少年の天使を見つけた。綺麗な薄紫の髪だった。酷い怪我をしてたから、あたしは彼を自分の寝床へ連れて帰ったの。


 それが、ノアとの出会い。


「僕は死んだのかなー……」

 目覚めた第一声がそれだから、あたしは笑っちゃった。だって普通名前を聞いたりしない?ノアって変わってるよね。

「起きた? 怪我、一応軽く処置しといたから」
「ありがとうー」

 それからノアはフリーズしてた。何を考えているか分からなくて、正直戸惑ったな。

「あたしはジェシカ。アンタは名前、何ていうの?」
「僕はノア、商品番号2101ー」
「は? アンタ何言ってんの」
「僕はノア、商品番号——」
「いや! だから! ちょっと待ってってば!」

 ノアのやつ、キョトンとして首を傾げるのよ。
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